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記事2001年1月23日 2号 (8面) 
ユニーク教育 (87) ―― 鶴見女子中学校・高等学校
本気で挑戦する強靭な精神力
コンピュータ会計能力検定試験
高校生3人が初の合格


 昨年十一月十一日、実施された第一回コンピュータ会計能力検定試験(全国経理学校協会主催)に横浜市鶴見区にある鶴見女子中学校・高等学校(菅原節生校長)の三人の高校生が全国で初めて合格した。
 この試験は商店や企業の実務と経営状態を理解し説明できる能力を判定する試験で、情報化社会に対応した経理実務の実践的な内容でしかも職場で活用できる「実務に役立つ人材の育成と能力に応じた資格付与」を目的に設けられた。第一回目は三級のみ行われた。
 従来の会計処理では取り引きが行われた場合、(1)仕訳帳に記入(2)現金勘定などの各科目ごとに総勘定元帳に記入し集計(3)現金出納帳などの補助元帳に記入(4)貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成しなければならない。
 しかし、これらの手作業をコンピュータで伝票作成すると、自動的に(1)から(4)が転記される。経済情報科で指導している大石洋一郎主任は「コンピュータ処理で行う場合の最大のメリットは、時間が短縮されるのでその分経営分析ができること」を挙げる。
 同校は禅の精神に基づく心豊かな人格をはぐくむ教育を実践しているが、生徒は“ものごとに本気で挑戦していく態度”を学ぶ。そのような態度が今回の合格につながった。
 コンピュータ会計能力検定試験には千百三十五人が申し込み、六百二十四人が合格した。同校から合格した三人は岸美沙江さん、川端美貴子さん、山口昌江さん。いずれも高校三年生。
 コンピュータ会計部に所属する岸さんは、実際行われた試験問題を使って会計処理をやってみせてくれた。問題は「コンピュータ会計の知識」(選択問題)、「会計処理」「会計情報」に分かれている。「会計処理」では某会社の会計データを入力し月末処理を行い、その結果を貸借対照表と月次損益計算書に記入する。「会計情報の活用」ではその入力結果を前提に、現金預金の残高、売掛金の増減、売上高・売上原価の比率などを分析させている。
 山口さんは受験勉強を毎日三時間程度行った。川端さんは「練習と同じような内容も出ました。基本的な仕訳については各会社のソフトは同じですが、少し違うものがあります。試験では時間が少し余りましたので、仕訳が抜けていないかどうかを丁寧に確かめました」と感想を語ってくれた。
 三人ともコンピュータ処理で行う方が転記が自動的にでき、手作業で行うより合計も自動的に集計できるので、非常に早く済むと言う。
 同校では昨年三月、神奈川県でコンピュータ会計能力検定試験について説明会が行われたのを契機に、簿記クラブを四月からコンピュータ会計部と改め、コンピュータ会計について訓練してきた。また授業では簿記・情報処理に関する知識や技能を身につけ、情報処理業務に従事することのできる人材育成を目指している。情報処理検定試験一級では全国で最年少の合格者を輩出している。
 コンピュータ会計処理などの本を多く書き、監修を手掛ける大石主任は「実社会で即戦力となる教育を行う必要がある点からすると、今の簿記教育は十年以上遅れています」と指摘する。遅れている原因として、コンピュータ会計についての指導方法が確立していないこと、そのための準備委員会を設置しなければならないことなどを挙げる。
 大石主任は「IT(情報技術)の今こそ、ますますパソコンで文書処理、情報処理、会計処理を行っていく時代が来ている」と強調する。


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