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記事2001年5月23日 13号 (3面) 
インタビュー 東京都私立短期大学協会 会長佐藤弘毅氏
短大の多様性こそ力
協会事業見直しの一方で新時代に対応


 東京都私立短期大学協会の会長に佐藤弘毅・目白大学短期大学部理事長・学長が就任した。短期大学を取り巻く環境の厳しさは東京においても同様で、佐藤氏の手腕に期待が集まっている。佐藤新会長に今後の東京の短期大学の方向性、協会の在り方についてお話をうかがった。

― 先生は日本私立短期大学協会の役員もされ、全国の短期大学の事情に精通されておられますが、短期大学の現状をどう見ておられますか。
 「全国約五百の短期大学は、設置地域、経営規模、設置学科、いずれをとっても千差万別だが、それぞれが多様な社会のニーズに応えてきたからこそ発展し、栄光の一時代を築くことができた。この短期大学が持つ多様性こそが力なのであり、個々の短期大学はいま改めてその存在意義を明確に示すべきではないか。ある短期大学は職業教育に特化して、職業上のスキルアップを図ることを通して学生の生きる力をはぐくむ。前期学士教育に力を入れ、四年制大学への編入教育を重視する短期大学があってもいい。また、地域社会のリカレントの場を提供する、地域への貢献を主目的とした短期大学もあるだろう。右顧左眄することなく、個々の短期大学が生きる道を見いださなければならない」

― 東京の短期大学は従来、あらゆる面で恵まれた環境にありましたが、いま他の地域と同様、苦境に立たされています。
 「過去には全国から多くの学生を集めた時代もあったが、本来、短期大学は地域住民にとって身近な高等教育機関で、小規模で、密度の濃い教育を行うところに特色があった。しかし、結果としてこの五十年の短期大学の歩みは四年制大学並みを指向するものだった。四年制大学はナショナルかつインターナショナルな存在であるべきだが、これと、ローカルでありリージョナルな存在である短期大学の生き方とは相容れない。私が経営する目白学園ではいま『続2000年経営改革』と銘打った五年ごとの中期計画における重点項目の一つに短大の再生を掲げているが、文字通り、短期大学は生まれ変わらないといけない。女性への高等教育への普及など、これまで短期大学が成し遂げてきた貢献は多とし、誇りとしつつも、甘い過去とは決別し、時代の変化を認識して、それに対応していかなければならない。ありとあらゆる方策を講じて短期大学に活力を取り戻さなければならない。短期大学の多様性こそが力であると申し上げたが、しなやかで多様な短期大学の生き方をエンカレッジしていくのが協会の役割だと考えている」

― 協会の運営、事業計画の実施にそれをどう反映させていかれますか。
 「前会長の方針を引き継いで、短期大学法人の意見・希望を協会運営に多く採り入れたい。従来、併設大学を持つ比較的規模の大きな短期大学の考え方に傾斜しがちな点があった。事業面では、これまで継続して行ってきた、進学懇談会や、オーストラリア短期留学、学生スポーツ大会、学生スピーチコンテストなど、そのいずれもがそれぞれの短期大学の特色をよりよく発揮すべきための場として機能してきたが、会員校が減り、会費収入が減収となる中で従来のままでいいのか、事業の細目にわたって見直しを進めていく。進学懇談会を例に挙げれば、二年前から参加対象者を保護者・生徒にも広げているが、最近では個々の高校が自校の生徒たちのために説明会を独自に開催し、そこにわれわれが招かれて話をするといった機会なども増えている。見直しの一方で、新しい時代に対応し、ITを活用した会員校の連携の可能性について検討を進めていくことも必要だと考えている」

― 四月に開かれた総会では、協会の「在り方検討委員会」の発足が承認されましたね。
 「来月には委員会を発足させ、協会の在り方の見直し作業に着手する。会員校が求めるサービスの継続をどうするか、会員校をエンカレッジするにはどのような事業をすべきか、一部事業のアウトソーシング化、事務局体制の見直しも含め検討を進めていきたい」

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