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記事2003年2月23日 1881号 (1面) 
論壇―私学助成運動の成果と今後の課題
保護者の納付金軽減の実現必要
日本私立中学高等学校連合会副会長  九里 茂三
  長い間の懸案だった高校以下への国の補助の一千億円が、今年ようやく実現した。思えば何と長い月日であったことか。私学振興助成法の成立した一九七五年には僅か八十億円であったから、今となっては大変な伸びなわけだが、紆余曲折があって、ここまで来るのに二十八年を要したのである。誠に感無量というほかはない。この実現にむけて終始奔走して下さった私学父母の会の幹部たちや、私学に心を寄せて下さっている多くの国会議員の御苦労には、心から感謝の誠を捧げたい。
 ここに二つの課題がある。一つには、この成果をふまえて、地方での私学助成をどこまで発展させることができるかである。高校以下の私学助成は各都道府県の施策である。国の予算はいわばその呼び水なのである。助成法にも明記されている通り、本番は正に地方自治体の施策如何にかかっており、果してこの結果がどう出るかが待たれてならない。第二には、この成果はいわゆる学校法人への機関助成であって、われわれは、もう一つの根本的な課題生徒とその保護者のための納付金軽減という成果の実現に、更なる運動をおし進めなければならず、これこそが私学教育を進める上での根本的な課題だと思いつめている。前述の助成法ではこのことについては、結果的に父母負担の軽減につながるはずと期待しているが、我々の問題にしているのは、国公立学校との納付金格差の常識を越える大きさについてなのである。この由来ははっきり申して行政の思想の貧困と怠慢によるもので、国公立という明治以来の優位な制度に疑いをさしはさまず、同年齢の他の子たちのことに思い及ばなかったことに起因すると言わなければならない。青少年の教育のために国や地方自治体が軽微な費用負担で教育を受けさせたいというのであれば、同じ年齢層の私学の生徒への配慮がなければならないのは当然ではないか。しかも多くの国民は今や、もし経費が同じであれば私学を選ぶとさえ言っているではないか。
 中教審の教育振興基本計画の策定に当たって、私学側からの要請は、明治以降の官公立万能の教育体制を改め、民主主義社会における教育の本流は私学教育であるとの認識の上に立って、少なくとも公私対等の教育費の配分を実現すべきというものであった。
 幸いに、教育基本法と、その具体化のための教育振興計画の中に、従来省みられることのなかった私学教育への認識と、その振興の文字が組み入れられるやに聞いた。このことは、前述したように、新しい日本の教育の在り様として正当な理念であって、私学がようやくその当然の地歩を得るわけなのである。更に不退転の志を以て、その実績を積み重ねるべきものである。
(九里学園理事長)
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