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記事2003年6月3日 1891号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
【大学分科会】

多様化に応えグランドデザイン
生涯学習社会におけるシステム構築重要


中央教育審議会の大学分科会(分科会長=佐々木毅・東京大学学長)は五月二十八日、文部科学省別館で第十八回分科会を開き、前回に引き続き、今後の高等教育のグランドデザインについて審議した。鳥居泰彦・中教審会長は「平成十年の大学審議会答申『21世紀の大学像と今後の改革方策について』では、社会の多様な期待に応えるためそれぞれの大学の特色を生かしつつ多様化・個性化を進め、質の高度化を図るなど新しいシステム構築の必要性を提言していたが、今出されている論点は、すべてこのとき抜け落ちていたもの。あまり総論にとらわれず、個々の問題について議論すべき」と指摘、高等教育制度の在り方などについて委員からは様々な意見が出され、「激変する現代社会に対応できるグランドデザインをつくっていくべき」との声が多く聞かれた。佐々木分科会長から前回提案のあった、論点を具体化するためのワーキンググループはこれまで設置に至っておらず、引き続き設置も視野に入れ討議を進めていく方針であるとの説明があった。
 討議では、大学院について「旧態依然として国際的基準に達しておらず、サポート体制もできていない」「大学院とは何か、という議論がなされないまま規制緩和だけでは、修復不可能なことにもなりかねない」などの意見が出された。
 また短期大学について「教育は市民社会のなかにある。生涯学習社会における大学のシステム構築が重要な課題であることは明白」「アメリカ社会の力強さは低額であらゆる人に学ぶ機会が与えられているからであり、短期大学を最初の学位として、その後様々な学習プランがとれるように構築すべきである」などの意見があった。
 高等教育の多様性については「種別化を図る必要がある。高度な学問、専門職、生涯学習などに分けて議論すべきで、ヨコの広がりだけでなく、タテの多様性について考えるべき」との、また政府の役割について「評価や財政投入の問題を政府関係部署でやるだけでよいのか」「多様なものを求めるなら、民間からの寄付がどのようになっているか、海外の例など資料に盛り込むべき」などの意見があった。

【留学生部会】

国際交流促進を支援
インターネット活用した留学情報提供


 中央教育審議会の留学生部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は五月二十六日、文部科学省分館で第七回部会を開き、新たな留学生政策のうち、「留学生と地域等との国際交流」「留学生一人一人を対象とした指導、支援機能の強化」「留学情報の収集、提供機能の強化」を中心に討議した。このうち地域との交流および、支援機能の強化について文部科学省は、(1)支援団体が存在しない地域を対象とし「留学生推進会議」等を通じて支援組織等の設立を働きかける(2)留学生と日本人学生や地域との国際交流を促進するための機会提供が重要、との考えを示した。これに対し委員からは、「留学生との交流は、留学生・日本人双方に重要であるとの認識を、設置責任者こそが持つべき」「草の根の運動および支援が必要」「どうすれば活発な活動ができるか議論すべき」などの意見が出された。また宿舎については「都市部の空洞化したビルを住居化し、留学生と日本人の一般市民を共生させるのは、地域住民との交流にもつながる」「規制緩和および地域住民の理解が必要だが、実験的に不可能ではないはず」とする意見が複数の委員からあった。
 留学情報の提供強化について文科省は、インターネットを活用した情報提供の一層の充実が必要との考えを示す一方、アジアについてはインターネットによる情報堤供が困難な地域もまだ多く、現地での留学促進事業の拠点づくりが課題であると説明した。これに付随し、白石隆専門委員(京都大学東南アジア研究センター教授)から「現地の事情に精通し、現地と日本のインターフェイスとして機動的に活動できる存在が必要で、民間組織の活用、委託を積極的に行う」とする提案が示された。これについて木村部会長は、ブリティッシュカウンシルのような機関が社会的に必要とのことを盛り込んでいきたいとの考えを示した。
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