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記事2003年7月23日 1899号 (3面) 
短期大学パイオニア (1) ―― 産能短期大学の課題実践演習
ビジネス実務系短大の特性生かして
卒業生ホームカミング業務など8分野
地元商店会とも協力、地域支援
  産能短期大学(森脇道子学長、東京都世田谷区)は課題実践演習という授業の中で、ビジネス実務系短大の専門的機能を、自由が丘商店会や世田谷区の地元などの需要を解決する実践に役立てて信頼関係を築き、交流を深めている。
 産能短大は一学年にビジネス専攻(定員百六十五人)と経営情報専攻(定員百六十五人)の二つがあり、各専攻は二十五人編成のクラス八つから成る。二年次に進級するとこの「課題実践演習」をグループで実施することが必修となるが、このテーマは教員が一方的に決めるのではない。地元の商店街や地域NPOなど外部、あるいは学内の入学職業支援センターといった教員以外の内部セクションからの支援依頼を受け入れ、クラスごとに頼まれたテーマを二十五人の学生が役割分担して協力解決するという助っ人方式である。
 二〇〇三年度のビジネス専攻の課題実践演習テーマは次の八つである。
 (1)卒業生ホームカミング業務支援=学生総合サービスセンターからの発注で産能祭の時に帰ってくる卒業生を楽しませるイベントの企画・運営に当たる。
 (2)ビジネスインターンシップ事前授業の実践=一年生の春休みに外部の企業などに出かけてビジネスのインターンシップを経験するが、こうした経験を八十人から聞き取り調査してプログラム開発し、後期のインターンシップ事前の授業で六回、一年生に教える。
 (3)高校生対象の合格者ウェルカムイベント実践=毎年秋にはAO入試や推薦入学の合格者が決まるが、この人たちに入学までの時期を有意義な準備に充ててもらうため、入学・職業支援センターからの発注で、アドバイスとなるイベントを企画、産能祭で運営する。
 (4)一年生対象就職サポート業務支援=自分たちの就職活動を振り返り、苦労話や面接で感じたノウハウなどを聞き取り調査でまとめ、一年生対象に情報提供する就職特講。非常に参考になると感謝されている。
 (5)高齢者向けパソコン教室=地域団体などからの要請で産能祭の時に開き、それ以後も土曜日などに老人センターなどで一対一の指導をする。
 (6)地域交流業務支援=世田谷区・目黒区などの地域公共機関マップづくりや産能祭での地域交流イベント実施。
 (7)自由が丘シティガイドブック=地元商店会へ自由が丘「ガイドブック」を創作して提案する。
 (8)ビジネス専攻課題実践演習PR制作=この課題実践演習授業をPRする紙面やプレゼンテーション資料を制作する。
 経営情報専攻も八クラスが八つのテーマをもらうが、こちらはパソコンを使うのが専門なので、地域住民向けパソコン教室とか、ホームページに載せるための高校生・新入生向け学校案内の制作、NPO団体のリサーチ業務など、パソコン関連業務の注文がほとんどを占める。
 こうした企画立案のためには、教職員が一応商店会や地域団体と大まかな下打ち合わせはしておくが、そのあとは学生が自分たちで関係先と話し合いをして具体的な需要を掘り起こしたり明確化する。
 課題実践演習の成績評価は(1)支援対象となった老人や一年生(2)入学・職業支援センターなどの発注元(3)教員の三者による評価を総合して採点する。
 ただ、こうした相手の需要に役立つ実践が二年生になればいきなりできるというものではない。一年前期にはグループ討議を中心に情報を集めて分析し、整理していく「チーム学習へのステップ」。後期にはホテルのフロントやハローワークへ出かけてインタビューによる実地調査を行い、その情報をまとめ、取材の方法と集めた情報を読み取る方法を身につける「フィールドワーク」。ここまで準備してから二年前期にはテーマの設定・企画・計画を立てる「課題実践演習I」。二年後期にはそれを実践する「課題実践演習II」となる。
 「ビジネス実務教育は、社会との連携が掛け声だけでなくいまや具体化され、実践の蓄積が豊かになった」と創立三十周年を迎えた日本ビジネス実務学会で総括される段階にいたった。
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