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記事2007年4月3日 2061号 (2面) 
新世紀拓く教育 春日部共栄中高校・共栄学園中高校
JDCで世界のリーダー育成
日米高校生がペア組み映像制作
 「世界のリーダーを育てたい」。岡野實理事長の掲げる目標の実現を目指して共栄学園(東京・葛飾区)の二つの高校で立ち上がった国際交流・語学学習プログラムの一つが、二〇〇五年から始まったJDC(ジャパン・ディスカバリー・チャレンジ)プログラムである。
 JDCプログラムは、日本語を第二外国語として学んでいる英語圏の高校生が来日し、春日部共栄高校(矢口秀樹校長)・共栄学園高校(倉島新治郎校長)の高校生と合宿生活し、日本の文化資産について研究し、メディア制作するというサマープログラムだ。
 二年目の「JDC二〇〇六」は七月十九日から八月十六日まで実施され、二十四カ所での体験取材、ドキュメンタリー方式での撮影による映像制作を行うコンペティションが行われた。
 参加生徒は、春日部共栄高校から四人(男女各二人)、共栄学園高校からも四人(同)、アメリカからはニューヨークのスタイベソン高校など六つの高校から八人(男女各四人)。日米の同性の高校生がペアを組み、女子ペアと男子ペア計四人が一チームとなる。そこにチームリーダーとして日本人大学生が一人、アメリカ人カメラマン(カリフォルニア大大学院などで映画制作を学んでいる学生)一人が加わり、各チーム六人構成となった。
 スケジュールは、セミナールームでの合同合宿、二つの高校内での合宿、関西旅行、発表会・ミニ旅行・ホームステイなどが四週間の間に実施された。
 最初の一週間は、全員で映像制作に必要な基本的なスキル、撮影の視点、音声の録音方法、コンピューターでの編集のやりかたについて学んだ。
 二週目から早速、体験取材とメディア制作。すしざんまい喜代村塾の協力で、築地への見学、様々な包丁の使い方、店での研修、すしの握り方などを体験し、その映像をカメラに収めた。
 三週目は関西への旅行。広島では全員で原爆資料館の見学、慰霊祭に参列。現地では、インタビューを実施し、ドキュメンタリーを制作した。京都・大阪では、それぞれテーマごとに自由に映像制作を行った。
 四週目は高校に戻り、メディアの編集作業及び、ミニ旅行をした。また、プログラムの最後に、ぺアを組んだ生徒の家にアメリカの高校生がホームステイした。
 一カ月間、共に生活し、共同で課題制作したことで語学力が飛躍的に高まったという声が多かったのは当然だが、なによりも相手の気持ちをくみ取ろうとする心が大切だと言った生徒もいた。厳しいスケジュールに追いかけられながらの課題制作だった。それだけに、最終日にはチームメイトとの別れを惜しんで、大泣きした生徒が大勢いたそうだ。
 「JDC二〇〇六」では、最終的には、カメラマンの作品と生徒の作品とで五十を超える映像が出来上がり、優勝チームは、日本・アメリカ・オーストラリアの高校生審査員によって決定された。すべての作品はデータベース化され、共栄エクスチェンジサイト[www.kyoex.com]で英語と日本語のマルチメディア教材として活用される。
 昨秋、新たに立ち上がったのが、インターネットを活用したプログラム「KyoExコンペティション」である。十四週間にわたって実施されたこのプログラムは、春日部共栄・共栄学園の中学高校生とアメリカ・オーストラリアの同性の生徒がパートナーとなり、男女ペア計四名が一チームとなり、全十六チームが参加した。週ごとに決められたテーマに沿って、写真と日本語・英語での説明記事の投稿、JDCプログラムの生徒作品を使ったクイズ、ダイアログ(台本)の制作、録音などの課題を行い、共栄エクスチェンジサイトに投稿した。例えばダイアログを投稿する場合は、ペアとなった日米の生徒が、相談しながら作った日本語・英語の会話文(台本)と、その台本通りにスカイブ(skype:インターネット電話)で会話した録音ファイルとを、ワンセットで投稿する。投稿システムはいたって簡単なため、中学生でも短時間の講習ですぐに投稿できるようになる。また、優勝チームは、課題の達成数と完成度によって決定される。
 二〇〇七年四月からは、さらに「e部活」も立ち上げた。e部活はビギナー向けのプログラムで、春・秋年二回実施する。やはり英語圏の中学高校生と語学パートナーを組み、マルチメディアを使って日本語・英語でテーマに添った発表を行う。現在、すでに百人を超える英語圏の生徒が登録している。
 二〇〇七年度からは、e部活、KyoExコンペティション、JDCが、KyoExオンライン・カリキュラムを構成する。e部活はレベルIとして国際交流と語学学習のすそ野を広げ、レベルUに秋のKyoExコンペティションを置き、JDCサマープログラムはレベルVのスカラーシップとする予定である。サマープログラムは今後、実施場所を日本に限らず、アメリカやオーストラリアでも行いたいという。海外からは、サマープログラムの作品を日本語学習教材に使わせてほしいという要望が寄せられている。
 KyoExオンライン・プログラムは、同校の生徒たちにとって、ネイティブのパートナーと行う英語学習や国際交流だけでなく、日本語と日本の文化を海外に紹介しつつ、生まれた国「日本」を新たに「発見する」プログラムでもある。
 共栄学園では、KyoExオンラインプログラムを通じて、全生徒に語学パートナーを提供し、日常的にネイティブ高校生との英会話や、国際交流ができるよう海外の教育機関との連携を推進していきたいとのことである。今後はオンラインコースへの参加を海外だけではなく、国内教育機関からの要望にも対応していきたいとしている。

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