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記事2011年7月3日 2209号 (1面) 
東日本大震災復興構想会議「提言」をとりまとめ
学校の機能拡大
新たな地域コミュニティの核に
被災家庭の子供に就学機会の保障も
 東日本大震災の被災地域の復興に向けた指針策定のための構想を検討してきた「東日本大震災復興構想会議」(議長=五百旗頭真・防衛大学校長)は六月二十五日、提言を取りまとめ、菅直人首相に提出した。教育・研究等の果たす役割としては、学校の機能拡大や、さらなる減災・防災教育の必要性、被災した子供たちへの支援、震災に関する学術調査研究の重要性などに言及している。

 「復興への提言〜悲惨のなかの希望〜」と題した提言は、冒頭に「復興構想七原則」を掲げ、「新しい地域のかたち」「くらしとしごとの再生」「原子力災害からの復興に向けて」「開かれた復興」の四章から成る「本論」と、「前文」と「結び」で構成されている。
 このうち、第二章「くらしとしごとの再生」では、地域の再生は、くらしとしごとの条件整備がなされて初めて可能であるとして「学校の機能拡大」の重要性に言及。減災の面から、学校を災害時の避難場所や防災拠点だけでなく、新たな地域コミュニティの核となる施設として拡充していかなくてはならないとしている。併せて、教職員、児童・生徒、地域住民が、減災・防災教育を通じて、地域の特性を知り、いざという時に「逃げる」までの道程を学ぶ必要を指摘する。
 幼稚園や保育所の再建については、財政基盤が脆弱なところもあることに配慮し、関係者の意向も踏まえ、幼保一体化施設(認定こども園)として再開できるよう支援するとしている。
 また、今回の震災で親や身内が被災し経済的に大きな損失を被った子どもや若者たちが、就学困難な状況に陥らず教育の機会を得られるよう、奨学金や就学支援等を適切に実施し、教職員やスクールカウンセラー等の適切な配置を図るよう求めている。
 東北地方には、東北大学をはじめ、多くの大学・大学病院、高専、研究機関等が共存していることから、こうした強みを生かし、知と技術革新(イノベーション)の拠点機能を形成し、新産業や新しい雇用の創出、地域産業の再生によって、東北に産業と技術が集積する地域を作り出すことを期待している。
 第四章「開かれた復興」では、これまでの防災対策の再検証、避難行動など被災者の有する情報の収集の必要性を強調し、今回の震災から得た教訓を、地域・世代を超えて共有するとともに、国際公共財として海外とも共有することが必要であると強調している。防災・減災分野で国際社会に積極的に貢献し、被災地における国内・国際会議の開催・誘致の検討も提案している。
 地震・津波災害、原子力災害の記録・教訓については、地方公共団体や大学など地元との十分な連携を図り、さらに官民コンソーシアムを活用した保存・公開体制を作り出すべきであると提言している。
 また、復興のための財源は、次世代に負担を先送りせず、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かちあい確保すべきであるとして、臨時増税措置の検討を促している。
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