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記事2012年1月23日 2227号 (1面) 
教職員のメンタルヘルス対策検討会議発足-文部科学省
精神疾患による病気休職者数 10年で2倍強に
予防策や効果的な復職支援策検討
近年、急増している教職員の精神疾患を予防する方策や復職後も再休職にならない支援策等を検討する文部科学省の「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」が一月二十二日、同省内で初会合を開いた。今後、年内に七回程度の会議を開き、十二月中に最終まとめを公表する予定。

 この検討会議は、精神科医や産業医、スクールカウンセラー、中学校長といった八人の専門家による会議で、座長は吉川武彦・清泉女学院大学・清泉女学院短期大学長。同氏は教育学部教授経験を持つ精神科医。
 同省の調査結果によると、精神疾患による病気休職者は近年、平成二十一年度まで十七年連続で増加しており、十三年度に五千二百人を数えた病気休職者の内で精神疾患による病気休職者数は二千五百三人だったが、それが二十一年度には五千四百五十八人と二倍強に増加している。最新調査結果の二十二年度では五千四百七人と前年度に比べ微減したものの、低下傾向に転じたかは現時点では不明。
 二十二年度で全教員数(公立学校)の内、精神疾患による病気休職者数の比率は〇・五九%。十一年度は〇・二〇%、元年度は〇・一〇%だったことから約二十年間で六倍増との計算になる。
 精神疾患により病気休職している教員は、学校種では「中学校」、年代別では「五十代」、職種別では「教諭・助教諭・講師」が比較的多いが、その他の学校種、年代、職種でも満遍なく精神疾患による病気休職者が見られる。また約半数は転勤後二年以内というのが特徴だ。条件付採用期間後に依願退職した者は二十二年度で二百八十八人(全公立学校)いたが、その内、九十一人が精神疾患を理由とした依願退職者だった。さらに民間等の調査で「仕事や職業生活におけるストレスを相談できる者がいるか」との設問に対して、「いる」と回答した教職員の比率は四五・九%で、一般企業の労働者の八九・〇%を大きく下回っており、特に「上司・同僚」が相談相手という比率は一般企業の労働者が六四・二%だったのに対して教職員は一四・一%と極めて少なかった。
 各教育委員会や同省でさまざまな対策を講じているが、効果を上げているとは言い難く、検討会議の冒頭にあいさつした文部科学省の布村幸彦・初等中等教育局長も「教育委員会が対策をとっているが深刻な状況のまま」と語っている。
 検討会議の初会合では同省による現状等説明の後、自由討議となったが、精神疾患を生みやすい職場環境や、上司・同僚に相談できない組織、教員養成制度といった学校独自の制度や文化を問題視する意見が多数聞かれた。メンタルヘルス対策を実効あるものにするには、学校教育制度や学校独自の文化に切り込めるか同省の「本気度」が問われることになりそうだ。

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