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記事2012年12月3日 2257号 (1面) 
大学入試での能力判定など討議
センター試験 高校教育の質保証への活用
研究者交えて汎用的能力育成を討議
 文部科学省の中央教育審議会高大接続特別部会(部会長=安西祐一郎・日本学術振興会理事長)は、十一月三十日、都内で第三回部会を開き、国立教育政策研究所の総括研究員から「汎用的能力の育成と評価」について、大学入試センター総括研究員から「大学入試センター試験の現状」について聴取、大学入試における能力の判定の現状と課題について意見交換を行った。

高大接続特別部会

 「汎用的能力の育成と評価」について発表した国立教育政策研究所・教育課程研究センター基礎研究部の後藤顕一・総括研究員は、高校で身につけるべき汎用的能力、その育成の取り組み事例を報告した。後藤氏は、高校では汎用的能力の一つとして知識の基盤ともなる精緻な言語的、記号・数量的論理構成能力(中心教科は「国語」と「数学」)を育成することが大切で、育成には具体的な手だて・スキル等を考える方略を示す必要があり、実効的教育を可能とする学習形態・評価法ができれば高校の質保証に寄与できると述べた。また、育成例として、多角的な見方や考え方など論理的なスキルのトレーニングを中学一、二年生で集中的に行い、高校三年で卒業論文、卒業制作、発表を行っている県立中高一貫校や、総合的な学習の時間を活用し、体験活動や課題研究を通じ論文を作成するなどしている県立高校等を報告した。
 その上で同研究所初等中等教育研究部教育研究情報センターの白水始・総括研究員が、汎用的能力の評価について発表。汎用的能力育成の第一歩として、知っていることの根拠を問う問いに答えられるような教育、また、目標設定と評価、知識技能、授業デザインを一体化した教育サイクルの構築が必要で、知識を結びつける学習が卒業後もさまざまな授業の知識を結び続ける「適応的学習能力」の獲得につながった事例、グループでの実験・調査学習が「コラボレーション能力」等を獲得した事例、仲間同士で知識を結びつける学習が新たな疑問につながるなど「適応的学習能力」「学習意欲」を獲得した事例などを報告、今後は、実践例や評価例の収集とモデル開発、こうしたアクティブラーニングに対応した教員養成、研修の必要性を指摘した。
 一方、大学入試センター試験の現状等に関しては、同センターの荒井克弘・試験・研究総括官が現役生の出願状況や外国の共通試験(フランスのバカロレア等)との比較を説明し、検討中の新試験構想を紹介した。それによると、現行制度(センター試験+個別試験/AO・推薦)と併存でき、センター試験の識別力が低い受験者層=高学力側、低学力側)及びセンター試験非利用者層について識別力の高い、教科科目型と適性試験型の試験の構想を紹介した。こうした発表に委員からは、センター試験を高校教育の質保証に活用できる可能性を尋ねる意見が複数聞かれた。国語、数学の二教科での判定、米国並みに試験科目構成の単純化、センター試験を高校生全員が受験した場合の問題点、高校の質保証のためにPISAの活用等が質問されたが、荒井研究総括官は、センター試験はあくまで大学進学のための選抜資料で、学力低位層の学力判定の難しさ、汎用的能力の判定で下位層に十分機能するか疑問とし、センター試験等を高校の質保証に活用する難しさを指摘した。


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