文部科学省は平成26年度予算で新たに「私立学校施設の耐震改築補助」60億円を計上するなど、喫緊の課題である私立学校施設の耐震化事業に急ピッチで取り組んでいる。加えて下村博文・文部科学大臣が昨年末、私立大学等や都道府県知事に書簡を送り、私立学校施設の耐震化事業の早期完了を要請したこともあって、同省の今年度予算では、私立大学等から当初の見込みを超える要望が出されており、また、私立高等学校等を所管する都道府県でも今年度予算で、私立学校施設の耐震化関係の独自の補助事業を実施する自治体が41都道府県(うち耐震診断のみ7都道府県)に上った。
これは同省高等教育局私学部私学助成課が4月1日時点で調査し、明らかにしたもの(一覧表参照)。
それによると、都道府県の平成26年度私立学校施設耐震化関連予算では、北海道、青森県、岩手県、福島県、埼玉県、新潟県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、岡山県、福岡県の12道府県で、これまでなかった私立高等学校等を対象とした耐震化関連補助金が創設された。このうち北海道や青森県では耐震診断事業費補助金が、福島県、埼玉県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、岡山県、福岡県では耐震改築補助が新設された。
これら新設された耐震改築補助はいずれも国庫補助の対象となる学校法人の耐震化事業であることが要件。県負担補助率は1/6、国庫補助と合わせると補助率は1/2以内となる。特に奈良県及び福岡県は耐震補強、耐震改築の各補助事業を同時に創設している。
一方、耐震化関連補助を拡充した都道府県では、例えば千葉県は、耐震補強工事への補助について、補助額の上限額を撤廃し、山形県では、耐震改築の補助事業における補助率を10分の1から5分の1に引き上げている。福島県、埼玉県、京都府、兵庫県、岡山県では、これまでの耐震診断や耐震補強工事への補助に加え、耐震改築補助事業が追加されている。
このほか、山形県や愛知県のように平成25年度までに耐震改築補助事業を実施している県もある。愛知県では耐震改築補助のほか、非構造部材の耐震対策補助を実施(対象経費に診断費・設計費含む)しており、広島県では耐震改築補助はないが、耐震化済み(耐震化率100%)の学校(園)に対して経常費補助金を加算配分(平成25年度〜27年度)している。
その一方で、栃木県や愛媛県のように私立学校(幼稚園、小・中・高校、中等教育学校、特別支援学校)の耐震化率が全国平均(77・8%、平成25年4月1日現在)を下回っている中で、私立高等学校等施設の耐震化促進事業を設けていない自治体も見られる。
文部科学省の補助金が呼び水となって各都道府県でも私立高等学校等の施設の耐震化補助が拡充されつつあるが、その補助の中身については、なお大きな開きがある。
こうして見ると、充実した耐震化補助金を設けている自治体は、必ずしも財政が豊かという訳ではなく、県内の教育で私立学校の割合が高いという訳でもない。結局の所、自治体の方針によるところが大きいようだ。
公立学校に関しては、ここ数年、耐震化事業に重点的に予算が振り向けられてきたため、平成27年度には耐震化が完了すると言われている。
それに対して私立学校(幼稚園、小・中・高校、中等教育学校、特別支援学校)施設の耐震化率は、平成25年4月1日現在で77・8%にとどまっており、耐震化事業の加速化が必要とされている。平成25年度に続いて、26年度も政府の補正予算案が編成されれば、私立学校施設の耐震化達成に向けて状況を大きく進展させる予算の計上が必要といえる。