こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2014年6月3日号二ュース >> VIEW

記事2014年6月3日 2308号 (1面) 
公平性・客観性確保等で懸念
中教審高大接続特別部会「審議経過報告」に 教育団体が意見表明
受験生負担増の懸念も
多面的・総合的評価には多くの賛意

 中央教育審議会の高大接続特別部会(部会長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)は5月23日、東京・浜松町の世界貿易センタービルで第15回の会合を開いた。同部会は、3月に取りまとめた「審議経過報告」について大学関係団体や校長会等に意見を求め、22団体から回答を得た。4月にはパブリックコメントも募集しており、今回の会合ではそれら意見が説明された。




 意見の多くは報告内容に概ね賛同としているものの、高等学校までの教育の延長上に大学教育を位置付けるのは「大学教育が『中等後教育』となるような質的転換」だと指摘し、その当否の議論が必要とする意見(全国専修学校各種学校総連合会)や、「高校は大学教育の準備段階としてのみ存在しているのではなく〜自立した人材の育成をめざす必要がある」との意見(日本私立短期大学協会)もみられた。また、高校生の学力測定と大学の入学者選抜は異質な問題であるのに「一方を改善すれば、他方も自動的に改善させるという基本的前提に立っているため、説得力に欠ける」(日本私立大学連盟)との指摘や、改革の一律的な強制を懸念しての「私立大学の自主性・自律性が最大限に尊重されるべき」(日本私立大学協会)との意見もあった。ほかにも具体性不足の指摘等は数多く、今後の検討課題とされた。

 大学入学者選抜の改善については、「多面的・総合的な評価」への転換に対しては賛同意見が多数だったものの、公平性・客観性の確保等に関して懸念の声もあった。「全ての大学で導入されなかった場合、入試制度が一層複雑化する」と受験生の負担増を懸念する意見(日本私立中学高等学校連合会)や、実施体制の整備には国が財政支援すべき等の指摘もあった。

 達成度テスト(発展レベル)(仮称)に関しては、合教科型等の実施で活用力、汎用的能力を測る、との趣旨には賛同意見が多数だった。一方でこれも公平性・客観性への配慮の必要性、学習指導要領等の高校教育との関係、大学個別の試験との関係の整理など、指摘事項も多数あった。年複数回実施については、実施の早期化の高校教育への影響を懸念する声があった。

 会合ではこれらを踏まえて、達成度テスト等について議論を重ねた。IRT―CBT(コンピューター利用による項目反応理論に基づく試験)の活用の検討等、具体的な試験方法にも踏み込んだ。ほかに「センター試験も複数回実施が検討されたが、公平性の確保等の問題で実現しなかった。達成度テストではどうか」「受験料を保護者負担とすると所得格差が影響する。誰が受験料を負担するかも論点とすべき」等の意見が出て、活発な議論となった。



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞