こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2014年6月3日号二ュース >> VIEW

記事2014年6月3日 2308号 (1面) 
教育再生実行会議 学制改革に応じた 教師の在り方を審議
教育投資の在り方等検討にも着手

  安倍晋三総理が開催する「教育再生実行会議」(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)は現在、今年2月に提示された学制の在り方にかかる論点に沿って審議を進めているが、4月21日開かれた第20回会議では、「学制改革に応じた教師の在り方」が議論された。このほど議事録が公開され、審議状況が明らかになった。

 第20回会議では、子供たちの発達段階に応じて、幼稚園、小学校、中学校、高校間の段差≠できる限り滑らかにする学制改革の方向性に合わせて、複数学校種で指導できる免許制度の在り方、複数の免許状の取得促進、幼・小、小・中の間などの連携や一貫教育、小学校の専科指導のための教職員配置、特別免許状による外部人材の登用、教師が教育活動に専念できる教職員体制の在り方(専門人材の活用等)等が話し合われた。

 この日、委員からは、「スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーといった専門職を学校の中に入れてさらに学力を向上させていく必要がある」「人材確保法の趣旨を尊重することは重要」「従来の教員免許とは違った特別な免許というような形で外部の方々に現場に来て教えて頂く必要がある」「給与水準は是非上げて頂きたい」「民間による教員の養成をもう少し広げてもいい」「特別非常勤講師制度をもう少し積極的に活用するよう文部科学省で指導してほしい」といった意見が出された。

 また、遠藤利明・衆議院議員は自身が本部長を務める自民党教育再生実行本部が昨年5月に教師インターンシップ制度の導入と社会人採用枠の創設、管理職登用の資格化とメリハリある処遇の実現、新たな人材確保のための法律の制定等を盛り込んだ提言をまとめていることなどを報告した。

 下村博文・文部科学大臣(兼・教育再生担当大臣)は、教員の処遇問題等が財務省との大きな争点となっている中で、実践指導力を十分に備えた教師を確保する必要があり、さまざまな課題への対応が求められており、従来の延長線上ではない、教員の養成・採用・研修の在り方を検討しながら、全体的に整合のとれた改革が必要だと強調した。

 教員免許を持っていないものの、優れた知識経験を有する社会人を対象に、都道府県教育委員会が行う検定試験に合格した者に出される特別免許状の活用については、極めて低調で平成元年度から24年度までの特別免許状の授与件数(延べ)は、549件、ここ10年の授与件数は毎年50件程度、1県に約1人といった状況だ。

 また初等中等教育に占める教員以外の専門スタッフの比率は、米国の44%、英国46%に対して、わが国は18%。

 さらに人材確保法に関しては、法律施行後の昭和55年の教員の給与水準は一般行政職より7・42%高かったが、平成24年度では、一般行政職を上回る分は0・32%(年収で約10万円)となっている。

 こうした中で課題解決型や双方向の授業の実現や特別支援教育のなど個別の教育課題へのきめ細かな対応に向けて教員の配置や教育環境の整備などが焦点となる。

 教育再生実行会議では、5月16日に第21回会議を開き、学制改革に必要な条件整備にかかる論点の検討を始めている。

 具体的には教育投資の在り方、高校教育を義務教育または無償教育とする場合に要する費用、6・3・3の区切りを変更する場合の費用などが論点とされており、下村大臣は教育投資が少子化の克服、格差の改善、経済成長・雇用の確保という課題を解決することなどを強調している。

 学制改革に関する論点をめぐる議論も最終段階にきている。第21回会議の議事録はまだ公表されていない。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞