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記事2017年6月3日 2410号 (1面) 
自民党・教育 再生実行本部 第八次提言を総理に提出
教育投資の拡大等で提言
投資額を大きく上回る便益

自由民主党の教育再生実行本部(本部長=櫻田義孝・衆議院議員)は、5月18日、「第八次提言」を公表した。提言は、同本部の下に置かれている「次世代の学校指導体制実現部会」(馳浩主査=衆議院議員)の緊急提言と、「恒久的な教育財源確保に関する特命チーム」(馳浩主査)、「成長戦略のための人材教育部会」(山谷えり子主査=参議院議員)、「学校・家庭・地域の教育力部会」(福井照主査=衆議院議員)の各提言を合わせたもの。5月22日には櫻田本部長らが総理官邸に安倍晋三総理・総裁を訪ね、提言を申し入れた。  このうち「恒久的な教育財源確保に関する特命チーム」の提言は、初等中等教育分野への投資効果は他のさまざまな経済効果と比較(10年以上の長期で)して成長率への効果が最も大きいとの分析結果があり、大学卒業者1人当たりの公財政教育支出に対して便益(税収増加額、失業による逸失税収抑制額、失業給付抑制額、犯罪費用抑制額)は約2・4倍になって社会に還元されるとの国立教育政策研究所の試算がある、また幼児教育段階は生涯にわたる人格形成や、認知・非認知能力を育成する上で、極めて重要で、その投資効果は収益率が年7〜10%、費用対効果で見れば3・9倍〜6・8倍との試算があると指摘。こうした社会効果を踏まえた教育投資が今、求められていると提言。  またアベノミクスの成長戦略を教育投資による国民一人一人の成長で牽引することを「教育アベノミクス」だとしている。  教育投資の中でも、幼児教育の無償化(必要な予算額0・7兆円)と高等教育の無償化も視野に入れて新たなスキームで更なる負担軽減を行うことを、特に優先して取り組むよう求めている。幼児教育に関しては、そのほか質の向上に0・3兆円が必要だとしている。  初等中等教育に関しては、全国の私立高校授業料の平均額を上限として授業料を支援(高等学校等就学支援金)すること(0・3兆円)、高校生等奨学給付金の対象を年収約590万円未満世帯までに拡大すること(0・2兆円)、ICT環境の整備として1人1台の教育用コンピュータの配備(1800億円)、学習用ソフトウエア等の整備(600億円)、このほか幼稚園から大学までの国公私立学校の施設整備関係予算として1・8兆円が必要としている。  高等教育に関しては、授業料支援と奨学金の充実に0・7兆円以上(年収300万円未満の世帯は全額免除、300〜500万円未満世帯は半額免除)が必要だとし、さらに大学から専門学校に至るまで授業料を無償化した場合、3・7兆円が必要としている。  教育投資の財源に関しては、税、保険、国債など幅広くかつ柔軟に可能性を検討すべきだとしている。特に高等教育に関しては、所得税や相続税の見直しによる財源の充当が考えられると指摘。また保険に関しては、自民党内で議論の続く「こども保険」や雇用保険を活用した教育訓練給付金制度の抜本的強化等を、国債に関しては、オーストラリアで制度化されている高等教育拠出金制度(HECS:国が授業料等を立て替え、学生が卒業後に一定額以上の年収となった場合に、所得に応じて源泉徴収により高等教育拠出金を納付する制度)創設の財源に国債が充てられていることを説明。こうした高等教育の費用負担を社会と個人とで支える新たな仕組みについては、18歳など若者の人口減少が本格化する平成32(2020)年からの本格的開始を目指して必要な制度整備等の議論を進める必要があると訴えている。一方、次世代の学校指導体制実現部会の緊急提言では教師の長時間勤務の是正に向けて、ICT等を活用した業務の効率化、学校業務の精選、外部人材の一層の充実等を求めている。成長戦略のための人材教育部会提言ではリカレント教育を提供する大学への変貌、急ぎ専門職大学の制度化・充実等を、学校・家庭・地域の教育力部会提言では、地域と協働した家庭教育支援の充実等を求めている。

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