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記事2018年10月13日 2456号 (1面) 
地域振興の核として高校に期待
地域との協働による高校教育改革推進
地域課題解決通じ探究的な学び推進
教育再生実行会議も検討開始

高校はこれまでも地域人材の育成や地域の文化的資源として重要な役割を果たしてきたが、政府は、高校段階で地域の産業や文化等への理解を深めることが、その後の地元定着やUターン等にも資するとして、高校が地元市町村・企業等と連携しながら、高校生に地域課題の解決等を通じた探求的な学びを提供するカリキュラムの構築等を行う取り組みを推進、また高校を活用した地方創生を進めるため、地域関係者により構築するコンソーシアムの設置など地域の基盤構築を事例紹介も行いながら推進していく方針だ。


今年6月15日に閣議決定された政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針2018」に地方創生に資する高校改革の推進として、そうした方針が盛り込まれている。  また同日、閣議決定された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる「骨太の方針」)でも、地域振興の核としての高校の機能強化を打ち出しており、さらに安倍総理が開催する教育再生実行会議に新しく設置された高校改革ワーキング・グループでSociety5.0の進展や地方創生等も踏まえつつ、生徒一人一人が多様な選択肢の中で、必要な学びを能動的にできる場を実現するなど新しい時代に対応した高校教育の在り方が検討されている。  こうした取り組みの先進地域とされる長野県飯田市の牧野光朗市長も同会議の有識者(委員)に就任、市内での取り組み等を報告している。そのほか、島根県内での学校を核とした官民協働による地方創生プロジェクト等も報告されている。同県内の廃校寸前だった隠岐島前高校が生徒・学級増を果たし、全国や海外から志願者が集まる高校に転換した事例なども紹介されている。県レベルでも遠隔授業(ICT)の環境整備、魅力化コーディネーターの配置支援、全国からの積極的生徒募集の合同説明会の開催等を実施している。  そうした政府の方針を受けて文部科学省は2019年度事業として「地域との協働による高校教育改革推進事業」の実施を財政当局に要求している。同事業の要求・要望額は4億円、Society5.0を地域から分厚く支える人材の育成に向けた教育改革を推進するため、高校が自治体、高等教育機関、産業界等と協働してコンソーシアムを構築し、地域課題の解決等の探求的な学びを実現する取り組みを推進することで、地域の核としての高校の機能強化を図るもの。  同事業には(1)プロフェッショナル型、(2)地域魅力化型、(3)グローカル型の3タイプが計画されており、そのうちプロフェッショナル型は、地域の産業界等との連携・協働による実践的な職業教育を推進し、地域に求められる人材を育成するもので、地域の特産物の付加価値を高め安定的な食糧生産により地域の発展を担う人材を育成する等の取り組み等が想定されている。専門学科中心に10校程度指定する。  地域魅力化型は、防災や高齢者介護といった地域課題の解決等を通じた学習を各教科・科目や学校設定科目等において体系的に実施するためのカリキュラムを構築し、地域ならではの新しい価値を創造する人材を育成するもの。衰退しつつある地域の振興方策を地域との連携により研究・実践する、地域との連携に係る教科横断的な単位の設定等が想定されている。普通科中心に20校程度を指定する。  グローカル型は、グローバルな視点を持ってコミュニティーを支えるリーダーを育成するもの。グローバルな社会課題研究のカリキュラム研究開発や海外研修等をカリキュラムの中に体系的に位置づけ、海外からの留学生を受け入れるなど外国人生徒と一緒に授業・探究活動等を履修、コミュニケーション能力を重視した外国語(複数外国語を含む)の先進的な授業の実践等が想定されている。学科共通で20校程度を指定する。  全国でも先進的な取り組みをしているとされている長野県飯田市では、県立飯田OIDE長姫高校と飯田市と松本大学がパートナーシップを締結し、高校生が地域課題を主体的に考える「地域人教育」の実施を支援している。地域人教育は1学年で「ビジネス基礎」(3単位)を学び、2学年で応用として「商業実務」(2単位)、3学年で実践として地域商品開発・販売やイベント企画・運営などの「課題研究」(3単位)を履修する。

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