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全私学新聞

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記事2018年6月3日 2444号 (1面) 
私学振興協議会を開催
「骨太の方針」決定に向けて
私学の課題や要望等で自民党文教議員と意見交換

幼稚園から大学までの私学5団体で組織する全私学連合の鎌田薫代表(早稲田大学総長)と元文部科学大臣の河村建夫・衆議院議員が共同代表を務める「私学振興協議会」が5月24日、都内で開かれ、私学団体代表が自由民主党の文教関係国会議員に日頃の私学振興への理解や応援に感謝し、私学が抱えている課題や要望、私学振興の在り方等について議員と意見交換を行った。同協議会のメンバーは、議員側は自由民主党の文部科学(文部)大臣経験者、文部科学(文教)部会長経験者、現職の文部科学部会長、私学側は私学団体代表。


 この日の協議会では初めに鎌田共同代表が出席の議員に、私学振興への日頃の理解や指導に感謝を伝え、その上で6月に決定される政府の経済財政運営の基本方針である「骨太の方針」が今後の教育政策の行方に決定的影響を与えるとして、各団体から当面する課題や要望を聴取し、指導頂きたい旨のあいさつを行った。一方、河村共同代表は、施設の耐震化問題に言及し、「公立学校は耐震化が大いに進んだが、私学はまだ十分ではない。人間の命に公私の格差はないので、(耐震化の)詰めをしっかりしなければならない」と語り、耐震化を含め私学が抱える課題に今後も取り組んでいく考えを強調した。  次いで自民党文部科学部会長の赤池誠章・参議院議員があいさつし、政府が6月の「骨太の方針」に盛り込む成長戦略の議論の予定を紹介した上で、文部科学部会長としてしっかり対応していきたいと語った。  この後、鎌田共同代表が進行役となって各私学団体から当面する諸課題等に関する要望が行われたが、初めに鎌田全私学連合代表が5団体に共通する諸課題として、(1)基盤経費である私学助成のさらなる拡充、(2)私立学校施設の耐震事業促進への支援のさらなる拡充など5点の実現を要望。  続けて大学関係の要望として、はじめに(1)大学教育の質的転換のための基盤的経費の確実な措置・拡充を挙げた。その中でも施設設備費(補助)がこの8年間で約半分にまで減額され計測機器等の買い替えができない事態が生じているとして施設設備費の拡充を要請。次いで、(2)国立大学の学生は約54万円の授業料を払い、約1人当たり平均約256万円(うち公費は202万円)の教育を受けていること、私大生は平均122万円の学費を払い約138万円(うち公費は16万円)の教育を受けていること、しかも国大生の30%は授業料の減免の措置を受けていることなどを説明し、合理性のない納税者間の不平等だと訴え、是正の方向性を示して頂きたいと要請した。  また、税制改正に関して教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の継続と、リカレント教育の奨励の観点からも贈与対象年齢(現行は30歳未満)の見直しを求めた。  続いて大学関係では日本私立大学団体連合会代議員の佐藤東洋士・桜美林大学理事長・総長が、人口減少から地方の大学の苦境を説明、支援を要請した。  短期大学に関しては関口修・日本私立短期大学協会長(郡山女子大学短期大学部理事長・学長)が自県内の短大への進学率が7割と高いこと、地域が限界集落とならないために、短大生が地域の人と話し合い、産物を作り出し、各地に送り出しているが、そうした取り組みに相当の経費がかかること、地域の人に学びの場を提供する使命もあるなどと語り、地方における短大の重要な役割への理解等を要請した。  中学・高校関係では吉田晋・日本私立中学高等学校連合会長(富士見丘中学高校理事長・校長)が、英語2技能のセンター試験がしばらくの間残ることで当初、高大接続改革の議論の中で決められた英語4技能を測るという試験の目的が消え失せてきたこと、英語4技能と2技能の試験の狭間で高校生が迷ってしまうことなどを訴え、世界に通用する試験にしてほしい、大学入学共通テストに利用できる民間の検定試験等について期間を限定し過ぎないよう要請した。加えてICT予算や経常費補助の拡充等を要望した。  小学校に関しては、小泉清裕・日本私立小学校連合会長(昭和女子大学大学院文学研究科特任教授)が、経常費助成費補助の拡充強化、施設設備の耐震化事業、安全対策費等に対する補助の拡充強化、小学校児童等への公的支援制度の定着・拡大、教員の資質能力向上等のための補助金の拡充強化、ICT化支援の拡充、校庭、屋上などの大型遊具の設置・建設に対する補助の新設等を要請した。  幼稚園に関しては、全日本私立幼稚園連合会の香川敬会長(鞠生幼稚園理事長・園長)が世界の先進国の中で、指導計画無しに11時間、12時間と施設に子供を収監している幼児の施設を推奨しているのは日本だけだとし、ワーク・ライフ・バランスを考えてほしいと訴えた。また指導計画をたて教育課程を持つ保育所を作っていかなかったら、日本は危ういと訴えた。




 


議員発言


教育財源の在り方年末までに提言 


寄附税制の改善等も課題に 


こうした私学団体からの要請に、はじめに馳浩・元文部科学大臣(衆議院議員)は、自由民主党の教育再生実行本部でオーストラリア型の授業料後払い制度創設の提言をまとめ、安倍総理に提出したこと、2018年から18歳人口の減少がはじまり、大学の8割を占める私立大学が直撃を受けることになるが、今後どう取り組んでいくか長期的な視点で検討が必要で、社会へのアピール、財政再建論者への説明責任も果たす必要がある、などと語った。  渡海紀三朗・元文部科学大臣(衆議院議員)は教育再生実行会議の第十次提言では、特に研究を主体とする国立大学に関しては、大学院を充実する一方、学部は減らすよう書いてある。規模についてはまず国立大学自身が自主的に検討し、国立大学協会や文科省等とも議論すること、国立大学の再編・統合も進めること、長年の懸案事項の一つである国立大学と私立大学をめぐる支援の在り方および大学等の活用を支える教育財源の在り方については党の教育再生実行本部で今後引き続き検討を行い、今年末までに提言をまとめる予定だ、と説明した。  続けて遠藤利明・元文部科学部会長(衆議院議員)は、財源確保に絡んで、「寄附文化の醸成について皆さんと力を合わせ頑張っていきたいし、私大に関しては多様性が大事。私大はもっと独自性、特徴を出してほしい。校務のICT化に関しては、私立小・中学校全体でソフトを作って利用する手もある」などと語った。この後、政府の丹羽秀樹・文部科学副大臣(元文部科学部会長、衆議院議員)と木原稔・財務副大臣(同)があいさつ、最後に河村共同代表が、「消費税率の引き上げに伴う私立学校の負担軽減措置や寄附税制の改善についても今後の課題として話していきたい」と締め括った。同協議会にはあいさつした議員のほかに、中曽根弘文・元文部大臣(参議院議員)、塩谷立・元文部科学大臣(衆議院議員)、下村博文・元文部科学大臣(衆議院議員)、松野博一・前文部科学大臣(衆議院議員)、冨岡勉・元文部科学部会長(衆議院議員)、亀岡偉民・前文部科学部会長(衆議院議員)が出席した。  私学団体に共通する当面の諸課題としては、(1)各私立学校(幼稚園〜大学)の基盤経費である私学助成のさらなる拡充、(2)私立学校施設の耐震事業促進に対する支援の更なる拡充、(3)消費税率引き上げに伴う私立学校の負担軽減措置、(4)私立学校に対する寄附税制等の一層の改善、(5)東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故および平成28年熊本地震で被災した私立学校と学生生徒等に対する継続支援の5点が挙げられている。



 

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