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記事2019年1月13日 2464号 (1面) 
文科省の検討小委 学校法人制度の改善方策提言
自律的なガバナンスの改善・強化 
私立学校法等の関係法令改正へ

文部科学大臣の諮問機関である大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の下に平成29年8月に設置された「学校法人制度改善検討小委員会」(座長=日〓義博・学校法人専修大学理事長)は1月7日、「学校法人制度の改善方策について」と題する提言をまとめ公表した。文科省では昨年9月初めから10月初めにかけパブリックコメントの手続きを終了、昨年秋には提言を取りまとめる予定だったが、それが年明けまでずれ込んだ形だ。同省では提言を実施するため来年の通常国会に私立学校法の改正を含む大学改革関連法案を提出する予定にしている。


学校法人制度の改善については、わが国の教育に大きな役割を担う私立学校が今後も社会からの信頼と支援を得て重要な役割を果たし続けるため、学校法人の自律的で意欲的なガバナンスの改善や経営強化の取り組み、情報公開を促すとともに、学生が安心して学べる環境の整備のために検討を進めてきた。  小委員会設置から約1年半の間に計12回の会議を開催している。  提言は、(1)はじめに、(2)学校法人の自律的なガバナンスの改善・強化、(3)学校法人の情報公開の推進、(4)文部科学大臣所轄法人を中心とした学校法人の経営の強化、(5)学校法人の破綻処理手続きの明確化からなっている。  このうち(2)の学校法人の自律的なガバナンスの改善・強化では、文部科学大臣所轄法人における中長期計画の策定、私立大学版ガバナンス・コード(自主行動基準)の策定の推進、役員の責任の明確化(善管注意義務、第三者に対する損害賠償責任、役員報酬基準の策定、利益相反行為の対象拡大など)、監事機能の充実(理事の行為の差し止め請求など)、評議員会機能の充実(中長期計画の策定の際の意見聴取など)等を提言している。この中の中長期計画に関しては、詳細な内容や期間については相当程度各学校法人の裁量に委ねるとしているが、一方で各私立大学団体が中心となって作成する自主行動基準である「私立大学版ガバナンス・コード」に定めるべき内容を盛り込むことに期待を表明している。中長期については原則5年以上ともしている。また役員の責任の明確化に関しては、一般社団法人や一般財団法人等に倣って規定の整備を求めている。さらに評議員会機能の充実を提言しているが、一般財団法人や社会福祉法人と比べて学校法人の評議員の権限は限定されているとして、善管注意義務の明示や第三者に対する損害賠償責任の規定を理事や監事と同様に整備することについては慎重に検討すべきだとしている。  (3)の学校法人の情報公開に関して、貸借対照表、収支計算書、事業報告書、監事監査報告等の公表については、大学法人では進めるべきだとする一方、高校以下の学校のみを設置する都道府県知事所轄法人については、小規模の法人が多く、私学助成などを通じて各都道府県における独自の監督を行っているなどとして、広く全国にこうした書類の公表を義務付けることには慎重であるべきだとしている。(4)の文部科学大臣所轄法人を中心とした学校法人の経営の強化については、学部単位等での円滑な事業譲渡の促進(審査項目の簡略化など)、経営改善に向けた指導の強化、経営困難な場合に経営判断を促す指導の実施等を提言。(5)の学校法人の破綻処理手続きの明確化では、学校法人が解散する場合、別段の定めがない場合、理事が清算人になるが、所轄庁がふさわしい人物を選任する仕組みを設けるべきとしており、学生のセーフティーネットの充実では、学校法人が破産した場合でも学生の授業料等の適切な返還が守られるような仕組みづくりを求めている。

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