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記事2019年1月23日 2465号 (1面) 
教育再生実行会議「中間報告」公表
新時代に対応した高校改革など議論
詳細は今後、今年4〜5月に提言へ

安倍総理が開催する教育再生実行会議(鎌田薫座長=早稲田大学前総長)は今年4〜5月に取りまとめる第11次提言に向け1月18日に「中間報告」を取りまとめた。同会議は昨年8月に二つのワーキンググループを新設、「技術の進展に応じた教育の革新」と「新時代に対応した高等学校改革」の審議を続けている。今回の中間報告では、AI、IoT等の技術の急速な発展に伴うSociety5・0の到来やグローバルな競争の激化等に合わせて、STEAM教育の推進、教員免許制度の改善、外部人材の活用、普通科等の見直し、文系・理系科目をバランスよく学ぶ仕組み構築、広域通信制高校の第三者評価の実証研究結果等を踏まえたさらなる質の確保・向上等を提言している。


第11次提言中間報告の本文はA4判で約20ページ。改革の方向性を示しているが、詳細は今後、検討を重ねていくとしている。中間報告の前半は「技術の進展に応じた教育の革新」を、後半は「新時代に対応した高等学校改革」を取り上げている。
 このうち「技術の進展に応じた教育の革新」では、まず、「わが国の学校のICT環境は脆弱(ぜいじゃく)と言わざるを得ない。教育への先端技術の導入が進まず、学校と社会が乖(かい)離(り)してしまうことはわが国の教育の発展にとって危機的な状況」と指摘した上で、国、地方公共団体、民間企業、学校関係者が積極的にスピード感を持って「技術の進展に応じた教育の革新」を加速度的に進めるよう求めている。
 その上で、(1)Society5・0で求められる力と教育の在り方、(2)教師の在り方や外部人材の活用、(3)新たな学びとそれに対応した教材の充実、(4)働き方改革、(5)特別な配慮が必要な児童生徒の状況に応じた支援の充実、(6)新たな学びの基盤となる環境整備、EBPMの推進、(7)教育現場と企業等の連携・協働―の7項目について提言している。その中では国や地方公共団体には、プログラミングやデータサイエンスに関する教育、統計教育の着実な実施、STEAM教育の推進、課題解決的な学習活動の充実、情報モラル教育の充実を進めることを求め、教師に関しては自らの資質・能力を継続的に高めるため国内外の企業・教育機関等を含め研修プログラム・教材の開発推進、教員養成を先導するフラッグシップ大学(例えば教員養成の指定大学制度等)の創設を検討するよう求めている。
 また、全小・中・高校が遠隔教育を活用できるよう好事例を全国的に普及させること、中学校で特にニーズの高い分野(英会話、プログラミング)での全国を対象とした実証的取り組みを進める仕組みの検討を深めるとしている。
 一方、「新時代に対応した高等学校改革」では、(1)学科の在り方、(2)高等学校の教育内容、教科書の在り方、(3)定時制・通信制課程の在り方、(4)教師の養成・研修・免許の在り方、(5)地域や大学等との連携の在り方、(6)中高・高大の接続、(7)特別な配慮が必要な生徒への対応、(8)少子化への対応―の8項目について提言をまとめている。
 このうち239万人(2017年度、高校生全体の73%)が学ぶ普通科に関しては、生徒の能力や興味・関心等を踏まえた学びの提供という観点で課題がある場合があり、一斉的・画一的な学びは生徒の学習意欲に悪影響を及ぼすと指摘、専門学科に関しては社会や産業界の変化に応じた最新の教育を実現するための教育環境に課題があり、総合学科に関しては特色の発揮という観点で課題がある、としている。学科の在り方についてはさらに検討を深めていくことが必要とし、普通科については学習の方向性に基づいて学科を類型化することなどの検討の必要性を指摘、その際、設置主体(国、公、私)の特性や地域の実情等を踏まえ、その強みを発揮できるよう留意するとしている。
 また使用義務のある教科書についても検討する意向を示している。  定時制・通信制課程に関して、特に広域通信制高校に関しては質の保証・向上を徹底し、社会の信頼を高めていくことが必要とし、第三者評価の在り方の実証的研究結果等を踏まえたさらなる質の確保・向上に向けた取り組みを推進するとしている。このほか小規模の高校でも教育水準の維持・向上が不可欠として、少子化への対応のさらなる検討が必要としている。ICTの活用や、遠隔教育等を想定しているものと思われる。

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