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記事2019年11月13日 2493号 (1面) 
私立大学の振興に関する協議会(拡大)開催
約13倍もの不合理な国私間格差是正要望
議員から個人に着目した支援策検討求める声

日本私立大学団体連合会(会長=長谷山彰・慶應義塾長)は11月6日、都内のホテルで「私立大学の振興に関する協議会(拡大)」を開催した。  同協議会は平成29年3月、歴代の文部科学大臣、副大臣、大臣政務官、文部科学部会長、私大団体連役員等をメンバーに、私立大学への理解と支援を得ることを目的に設置されたもの。今回はより多くの国会議員の理解を得るため、自由民主党・文部科学部会、私立大学振興小委員会、税制調査会、学校耐震化・施設整備等促進議員連盟等の国会議員にも参加を呼びかけ拡大開催した。当日は国会議員本人47人、秘書ら代理者30人が出席した。協議会では初めに長谷山会長があいさつに立ち、私立大学が日本の高度成長期の人材育成を担ってきたこと、未曽有の災害など想定外が頻発する時代こそ多様な個性と能力を持った人材育成が必要で、私大は多様性をもって多様な人材育成に努めていることを説明。「一緒に私大振興策を検討していただきたい」などと語った。  続いて萩生田光一・文部科学大臣が今後とも私大の発展に精一杯取り組んでいく考えを表明した。上野通子・文科省副大臣も出席した。  また河村建夫・衆議院議員は国私格差が依然縮まらず拡大する状況で、予算編成の時期に財政当局にきちんとした対応を求めていきたいとした上で、耐震化や税制改革でも頑張りたいと語った。 塩谷立・衆議院議員は「わが国の教育は大きな転換点を迎えている。発展に向け教育の在り方を見直していきたい」との思いを語った。  その後、長谷山会長が私大団体連の「令和2年度私立大学関係政府予算に関する要望」と「令和2年度税制改正要望」を説明。このうち予算要望では、私立大学における経常的経費の2分の1補助の早期実現(学生1人当たり公財政支出に係る約13倍に上る不合理な国私間格差の是正)、設置形態の違いのみに依拠しない、個々の能力と経済状況に応じた幅広く柔軟な支援の実現、高等教育の無償化による国立大学生と私立大学生の不当な格差拡大(国大:無償、私大:50万から450万円負担)を緩和すべく現行の私学助成における授業料減免制度の継続実現、私大の施設・設備に関しては2分の1補助の制約、文化財の指定を受けた建物等の存在など個々の大学による努力だけでは耐震化率100%の実現は困難な事例もあることなどを説明し、耐震化率100%の補助対象要件の見直し、私大の施設・設備整備の推進に係る補助金の拡充等を要請した。さらに国立大学生は54万円を納付して256万円相当の教育を受けており、一方、私大生は122万円の学納金に対して138万円相当の教育しか受けていないことなどを訴えた。税制改正に関しては、寄附金の税額控除に関する優遇措置、新入生を対象とする寄附金控除の対象範囲の拡大、寄附金控除の年末調整の対象化など手続きの改善などを要請した。  こうした要望に自由民主党の高階恵美子・文部科学部会長は日本の医療も高等教育も私立が8割を支えていることに言及し年末の政府予算編成等に力強く臨んでいく決意を表明した。  この後、出席の国会議員から発言が相次いだが、渡海紀三朗・衆議院議員は、より多くの国会議員に私大の状況について理解してもらえるよう、卒業生の国会議員に積極的に働きかけてほしいと私大学長らに要請。また個人に着目した支援策のアイディアを出すべく(私大関係者に)議論してほしいなどと語った。 冨岡勉・衆議院議員は「災害による被害状況を教えてほしい。避難所の環境をよくするために私大に協力頂きたい」などとし、赤池誠章・参議院議員は文科省の私学助成以外にも内閣府の科学技術予算なども活用できることを指摘。関連して早稲田大学の田中愛治総長は研究にとって私学助成と競争的資金と並んで企業との連携が重要なことを強調。引き続き松野博一・衆議院議員は教育に対する投資の受益者は社会全体であること、海外との競争に勝ち抜くには私大の学部構成の見直しが必要で公的資金も活用しての転換の重要性を強調した。伊藤信太郎・衆議院議員は憲法89条の問題をどのように考えているかなどを私大関係者に質問。山本順三・参議院議員は充実した防災教育の必要性、またスポーツの振興が社会に大きな影響を与えることを測る絶好のチャンスを迎えていることなどを指摘した。船田元・衆議院議員は中央の大学の定員管理により地方私大にも光が見えてきたこと、大学は地方振興、地域振興のためにも存在していることを力説した。  遠藤利明・衆議院議員は税と教育の一体改革など国民に大きなインパクトを与えるような提案や議論の必要性を訴えた。最後に長谷山会長が感謝の言葉を述べて協議会を締め括った。

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