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記事2020年2月23日 2502号 (1面) 
私学振興協議会(懇談会)開く
国会議員、私学に先駆的役割期待

 幼稚園から大学までの私学5団体で組織する全私学連合の長谷山彰代表(慶應義塾長)と元文部科学大臣の河村建夫・衆議院議員が共同代表を務める私学振興協議会(懇談会)が2月20日、都内で開かれ、和やかな雰囲気の中で私学振興を巡って忌憚(きたん)のない意見交換等が行われた。私学振興協議会には私学団体代表、自由民主党の文部科学(文部)大臣および文部科学(文教)部会長の経験を持つ国会議員と現職の文部科学部会長が参加している。


 今年の私学振興協議会(懇談会)では、初めに日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘中学高校理事長・校長)が開会あいさつを行い、目下、新型コロナウイルスが猛威を振るっている中で生徒の保護者には外出に細心の注意を払ってほしいと要請していることや、春休みに予定されているスポーツ系、文系の大会について軒並み中止が検討されていること、高校2年生に関しては英語4技能試験等が中止となり、ポートフォリオに書くことがなくなっていることなどを訴えた。


 この後、国際的な学会出席のため急遽(きゅうきょ)渡米した河村共同代表に代わって私学振興協議会事務局長の塩谷立・元文部科学大臣(衆議院議員)が国会議員を代表してあいさつを行い、「私学の皆さんには先駆的な役割を担っていただきたい。私どもは毎年の予算、税制で頑張っていく。私学振興協議会の皆さんと新しい時代の子供たちの教育を目指して頑張ってまいりたい」と語った。


 続いて私学側共同代表の長谷山・全私学連合代表があいさつし、「戦後、国立大学がほとんど増えない中で経済成長を担ってきたのは私立大学で、それを支える高校、中学、小学校、幼稚園という裾野を持っている。私学がこれからも自由で多様な個性を持ちながら発展していくために私学の学校関係者も自律的な改革に力を尽くすが、ぜひとも人材育成、改革に公的な支援、国会議員の先生方の力添えを頂戴したい」と要請。乾杯の発声は日本私立学校振興・共済事業団の清家篤理事長が行い、「私学でなくては果たせない役割は日本の教育、研究の場に多様性をもたらすこと。多様性のない社会がどんなにもろいかは過去の歴史が示している。今われわれが享受している知識や技術、豊かさは異端といわれた考えから出ている。例えば天文学・地動説は、昔は異端だった。しかしそれを基にニュートン力学が生まれ、産業革命につながり現在に至っている。私立学校が固有の建学の理念を持ち、それに基づいた個性のある独特の教育研究を行っていること自体が日本の社会、将来の発展、持続可能性のために最も大きな貢献をしていることと思っている。多様性のある私学をサポートしてくださる政治家の先生方は本当にありがたい」とし、私学事業団も私学の多様性を守るため努力を尽くす考えを表明。近藤彰郎・日本私立中学高等学校連合会副会長(八雲学園中学高校理事長・校長)は、「学校法人制度をしっかり守りよい教育をしていく。私立学校の目的は教育。時代の要請を取り入れるためには私学各校にできるだけ自由に先駆的な役割を果たさせた方が日本のためになる」と力説した。


 小泉清裕・日本私立小学校連合会会長(昭和女子大学大学院文学研究科特任教授)は、「今日、神奈川県の小さな学校の見学に行ってきた。障害を抱えているであろう子供の教育を丁寧に行っていた。今後、もっと増えていくであろう障害のある子供たちにもお金の問題、教員の力を付けていかなければいけない問題を感じた。小学生をどう伸ばしていくかを深く考えていきたい」と語った。


 麻生隆史・日本私立短期大学協会副会長(山口短期大学理事長・学長)は「経常費補助の一般補助が増額し、修学支援も力を入れていただいたが、地方の小規模な大学が取りやすい補助金は多くない。短大の灯を消さないように、私学振興協議会の一致団結した行動によってこれを守っていただきたい」と要請。福原紀彦・日本私立大学団体連合会代議員(中央大学学長)は「コロナウイルスよる感染拡大を防止する観点から各組織とも連携している。さまざまな方針やガイドラインに基づきながらも各教育機関が園児・生徒・学生本位でしっかりと年度末、年度初めの行事を敢行していかなければいけない」などと語った。福井直敬・日本私立大学団体連合会副会長(武蔵野音楽大学理事長・学長)は中締めのあいさつを行い、多くの国会議員、私学団体代表らが出席して懇談の機会を持てたことに感謝の思いを表明した。


 私学振興協議会(懇談会)には10人を超える国会議員が出席した。


 その中で中曽根弘文・元文部大臣(参議院議員)は「私は自民党の青少年健全育成調査会の会長を務めていて、その中でこのたび人間力向上PTを作った。ITで便利になる中で、多くの体験を通じてたくましい自立した青少年をつくろうと始めたところ。外遊びの場所もなくなるなど子供たちの環境は厳しくなっている」などと青少年の健全育成の重要性を強調。


 松野博一・元文部科学大臣(衆議院議員)は、「日本の高等教育の文系と理工系の比率を見直さなくてはいけない。中国や韓国は高等教育で学ぶ学生の7割が理工系だ。日本は2割。日本の次の産業構造を考えても教育政策、産業政策、社会政策としても高等教育のありようについてゆっくりと意見交換したい」と語った。


 赤池誠章・前文部科学部会長(参議院議員)は、「私は参議院文教科学委員会で筆頭理事を務め、法案のクローザーの役割を担っている。今国会は教育環境の法案がほとんどないが、私学を含めて文教を進めるためにも文部科学省にはどんどん法案を出してもらい、われわれはしっかり審議していきたい」と語った。


 柴山昌彦・前文部科学大臣(衆議院議員)は、「私学の建学の精神と多様性は私達の大きな財産。引き続きより良い方向に改革が進むよう頑張っていきたい」と語った。


 義家弘介・元文部科学部会長(衆議院議員)は、「少子化の中で求められるのは、この学校だからこそできる、伸ばせる教育。私学の日本の教育へのさまざまな提言は大変重要なこと。日本の人づくりをしっかりと守っていきたい」と語った。


 渡海紀三朗・元文部科学大臣(衆議院議員)は、「教育者はいろいろ課題を抱えている。国家として少子高齢化にどう立ち向かうか。今後、私学が果たす役割を皆さんもしっかり議論して、われわれもしっかりと議論させていただいて、やるべきことをやっていきたい」との考えを述べた。


 冨岡勉・元文部科学部会長(衆議院議員)は、コロナウイルスの感染の有無が短時間で判定できる検査キットが長崎大学等によって開発されたことなどを報告。その上で情熱を持った人材を育成してほしいと私学関係者を激励した。

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