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記事2020年5月23日 2510号 (6面)
玉川聖学院の取り組み オンライン授業全校一斉実施
1人1台端末・校内ネット環境、数年前からいち早く整備

 玉川聖学院中等部・高等部(東京都世田谷区)は4月の新学期から、新型コロナウイルスの影響による休校期間の対策として、既存のウェブ会議システムを活用したオンライン授業を始めた。同校では事態が起こる前から校内のインターネット回線や端末配備など情報通信環境の整備を実施しており、教職員と生徒双方のネット環境や機器の所有、使用者のITスキルといったオンライン授業導入に当たっての課題を克服し、全校一斉の本格運用を実現している。

 同校は数年前からオンライン授業導入に向け動いていた。BYOD(個人の所有機器を学校や職場に持ち込むこと)の形で生徒1人1台タブレット端末所有を進め、2018年には高等部の全員が持つようになり授業や行事で活用されている。同時にネットワーク設備会社の協力を得て校内にWiFi環境を配備、さらに同時期に同じ会社のウェブ会議システムも導入し2019年には実践・活用するまでになった。 

 校内のIT環境整備に携わった情報化主任の大沼祐太先生は「3〜4年かけて整理し、快適に使えることに力を入れた」と語る。現在では一般教室はもちろん音楽室や体育室も含め、校舎のほとんどの場所で高速で安定したインターネットが使えるようになっている。加えて生徒自身でのアプリの導入ができないなど利用・閲覧制限を設定しており、安全面でも万全を期している。

 そうした中、今年2月に新型コロナウイルスの影響が教育現場にも及び、同校でも自宅学習および卒業式などの行事の縮小が決定、そのうち卒業式ではウェブ会議システムを活用し中継映像を保護者へライブ配信。その後ウェブ会議システムのプロジェクトチームが大沼先生などをメンバーとして発足し、始業式・入学式も含め新学期の授業や行事をオンラインで実施することを決めた。

 教職員全員がシステムの利用ができるように設定を済ませ、タブレット端末所有が全員ではない中等部の生徒については持っていない人に学校から貸与し、家庭でWiFi環境が整っていない生徒には携帯型ルーターを貸すなど全校の生徒・教職員がオンラインに臨めるよう準備を進め、試行期間や検証を経て4月23日から中高合わせ約900人の生徒を対象としたオンライン授業が本格的に始まった。

 4月の授業は午前中のみの時間割で、中等部では8時30分に各クラスで担任による点呼が行われた後に全学年一斉で礼拝が行われ、本来生徒が集まる礼拝用ホールから、学院長の安藤理恵子先生が端末を通して各生徒に聖書の言葉などを語り掛けた。その後は中等部・高等部それぞれ学年やクラスなどの単位で全4時限の授業が行われ、体育ではまず先生が体操やダンスを示して生徒が実践し、家庭科では各生徒が自分で作った料理を他の生徒や先生に紹介していった。教科によっては複数の先生がそろって生徒と語り合う形で進めていたほか、通常板書するものをシートに色分けして示しすぐに各生徒の元へ送るなどオンラインを生かした授業も行われていた。そして終礼では先生が当番の生徒にオンラインランチ会を呼び掛けるという一幕もあった。

 「子供たちは慣れるのが早い」(大沼先生)と、生徒の端末操作は手慣れているそう。対する教職員側の方は慣れた先生はタブレット端末だけで進める一方不慣れな先生にはそばに慣れた人が付いてすぐにフォローするなど、ソフト面でも問題なく行えるようサポート体制が整えられている。

 今回の取り組みについて中高等部長の櫛田真実先生は「大沼先生など精通したメンバーが次々に進めてくれて、滞りなく実施することができた」と、こちらもオンラインで答えてくれた。今後の学校に必要な環境を早くから整え、急な事態にも学びを進めることができた同校はこれからも一歩進んだ学びのスタイルを取り入れていくだろう。


校内IT整備に携わった大沼先生


端末を通して授業を行う(数学)


端末を通して授業を行う(音楽)

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