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記事2021年10月13日 2558号 (4面)
「村上春樹文学」「国際文学」「翻訳文学」の研究拠点を目指す
早稲田大学 国際文学館を開館
田中総長「世界に文学と文化を発信する」
村上氏「学生が自由に意見を出し合う場所に」

 早稲田大学国際文学館(通称:村上春樹ライブラリー)が10月1日、開館した。同館は「村上春樹文学」研究とともに、「国際文学」「翻訳文学」の研究拠点を目指す。開館に当たり、同大学は同館の施設概要と今後の展望等について9月22日、記者会見および内覧会を開催。田中愛治総長、村上春樹氏(作家)、隈研吾氏(建築家、早稲田大学特命教授、東京大学教授)、十重田裕一・早稲田大学国際文学館長・同大学文学学術院教授、柳井正氏(潟tァーストリテイリング代表取締役会長兼社長)が登壇した。


 田中総長は、村上氏の厚意で貴重な資料の寄託・寄贈があったこと、隈氏の設計であること、柳井氏が改築費用を出資していること等を報告した上で、「世界中から翻訳や村上春樹文学を研究する人々が訪れることに意義があると思う。国際文学館が文学と文化の発信となって、本学の文化等を世界に発信できればいいと思う。そして、若い人の中から小説家が集まることを期待したい」とあいさつした。


 十重田館長・同大学文学学術院教授からは同館の機能と展望を説明。その中で、活動の柱である(1)研究(2)交流(3)発信を通して、村上春樹文学研究、翻訳文学研究、国際文学研究、それぞれの研究者が国内外から集まる拠点にしたいとした上で、「国際文学館におけるシンポジウム・講演会の開催、日本文学・文化研究者の世界的ネットワークの形成とデジタルリソースの開発などを行う」と展望を述べた。研究では村上氏の全作品(小説、翻訳、随筆、紀行文、ノンフィクション、対談、絵本)や世界各国さまざまな言語で翻訳された作品などが対象。また、同館顧問のロバートキャンベル・同大学特命教授、同館副館長の榊原理智・同大学国際学術院教授、マイケルエメリック・同大学文学学術院教授・UCLA教授を紹介した。


 村上氏は早稲田大学の学生の頃を振り返った上で、「緊張している。とてもありがたい。文化の発信基地となればいいと思う。先生が教える、これを学生が受け取るというのではなく、学生が自由に意見を出し合う場所になればいい。大学の自由でフレキシブルなスポットになればいい」と思いを述べた。


 隈氏は「文学の世界は今生きている世界とは違う世界。国際文学館は大きな吹き抜けの空間をつくった。中は堅苦しいものではないように考えた。みんなが交流できるような場にしてほしい」と述べた。


 柳井氏は「日本は世界への文化の発信が弱いと思う。世界への日本文化の影響が少ない。国際文学館が新しい文学の発信をしてほしい」と期待を述べた。


 【早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)】(TheWasedaInternationalHouseofLiterature)


 村上春樹文学を基点に、グローバルに文学を研究・発信し、国際交流を図っていく。村上氏から寄託・寄贈された資料を適切に整理・保管し、閲覧に供することで、研究の環境を整え、セミナー、シンポジウム、企画展示などを行う。文学や文化の風通しのいい国際交流拠点・交換の場となることを目指す。オンラインでの展開も積極的に行う。旧4号館を改築。村上春樹氏の作品の世界と呼応を意図する建築コンセプトで、隈氏による斬新なリノベーションを経て生まれ変わった。


 階段本棚(B1Fから1F)は屋外の木のトンネルから続くように、木を多用した温もりのあるデザインで、同館の象徴となる場所。開館時の企画は下に向かって左側が「村上作品とその結び目」、右側上部が「現在から未来に繋ぎたい世界文学作品」。


 ラウンジ(B1F)のコンセプトは、ゆったりと読書ができる空間。村上氏ゆかりの家具やピアノ、作品の舞台装置などが置かれている。舞台「海辺のカフカ」の美術装置や各種の寄贈品が飾られている。また、村上氏の書斎を再現した「村上さんの書斎」がある。学生が企画・運営するカフェがある。


 ギャラリーラウンジ(1F)はデビューの1979年から2021年までの村上氏が寄贈した初版本を中心に展示している。オーディオルームは、村上氏が選んだスピーカー、プレーヤーなどオーディオ機器を配し、村上氏と関わりの深い音楽を体験できる。


 ラボ(2F)にはスタジオが併設され、海外の学生や研究者との交流が可能だ。展示室は村上文学に限らず、幅広い内容の企画展となっている。旧4号館が国際文学館として様変わりする過程を展示している。


早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)


9月22日の記者会見


1Fのギャラリーラウンジ


階段本棚


B1Fにある「村上さんの書斎」

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