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記事2021年2月23日 2536号 (6面)
酪農学園大学の取り組み
サークルで育てたブドウのワイン/原料に赤ビートやホエイ
大学内で進む独自の酒造り

 酪農学園大学(北海道江別市)では数年前からワインなど酒に関する研究や製造に取り組んでいる。コロナ禍の今年度も、ワイン造りのサークルでは活動が縮小された中で原料のブドウを一定量収穫し、オリジナルワインの販売にこぎ着けた。同時に、従来にない新たな原料を使った酒が開発・製品化されており、大学発の独自の酒造りが進められている。


 同大学には構内の畑でブドウを栽培しオリジナルワインを造るサークル「酪農学園大学オリジナルワインプロジェクト(ROWP、ロープ)」がある。始まりは2014年、学生が「ワイン醸造をテーマにした卒業研究をやりたい」と、アルコール発酵の研究を行う山口昭弘・食農環境学群食と健康学類教授の元を訪ねたのがきっかけだった。100%同大学産のワイン醸造を目指して同学類内の三つの研究室が集結。酒類製造免許を取得した上で2016年4月に設立、活動が始まった。 


2019年度からは大学公認サークルとなり、現在は同じくROWP発足に携わった阿部茂・同教授を顧問として大学院生も含め全学年の学生が集まっている。育てたブドウは連携協定を結びROWPの元メンバーも勤める道内のワイン販売会社に持ち込み醸造を委託。ラベルのデザインは学生が手掛け、毎年100%同大学産のワインが造られている。 


 今年度は活動縮小に加え病害に遭ったり一部品種が収穫前に持ち去られたりするなど不運が続いたが、原料となる品種は9月に一定量収穫できた。2年生がラベルをデザインし今年も「酪農学園大学ワイン2020」が無事完成、11月に完成報告会を行った。前年までは同大学関係者のみに販売していたが今回は対象を一般にも広げている。 


 そして同大学産のブドウから造るワインに並行して新たな原料を使った酒造りの研究も、山口教授の指導の下で進行中だ。 


  昨年6月、社会人学生で大学院酪農学研究科食品栄養科学専攻修士課程の南典子さんが「赤ビートワイン」を完成させた。ワインの研究を進める中で赤ビート(カブのような植物でボルシチなどに使われる)を醸造に使ってはとの提案を受け無償で提供された。そこから実験を始め、前年には赤ビートワインの発酵条件を題材にして学会で発表。その後ワイナリーの協力を経て赤ビートワイン80本を完成させた。山口教授によると赤ビートを原料にしたワインは前例がなく、世界初ではないかとしている。 


 南さんは昨年9月に修士課程を修了し、今春から別の大学の大学院博士課程に進学予定。山口教授は「ご主人の理解もあって研究を進めることができ、まさに家族でつくり上げた世界初の赤ビートワインだ。ユニークでおいしいものができたと思う」と語った。 


 今年1月には食と健康学類4年の亀田くるみさんが、ホエイ(乳清)を原料としたホエイ酒を造り、これも世界で初めての事例となる製品化が決まった。実家が酪農を営んでいる影響で、乳製品の製造過程で発生するホエイを使った酒を造ることを考え、卒業論文のテーマに設定。試作当初は発酵がうまくいかずいろいろな酵母を選び発酵を何度も試したほか別の観点からの研究も並行させた。試作後、研究室と関わりのある酒造会社に製品化を提案し、今年4月以降に製品化されることが決まった。


 ホエイは家畜の飼料やプロテインとして利用されるものの腐敗しやすく多くは廃棄されており、今回の研究は資源の有効活用にもつながるとしている。亀田さんは4月に香料の研究開発を行う会社に就業する予定だ。 


 山口教授自身も現在、ハスカップの果皮を使った「はすかっぷクルゼイワイン」を開発中で、2月中に完成するという。


ROWPのメンバーと阿部教授 (後列右端、各写真とも同大学提供)


山口教授(左)と南さん(中央)および南さんの家族


ホエイ酒を造った亀田さん

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