こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



Pick up!

TOP >> Pick up!

記事2021年6月13日 2547号 (4面)
災害を生きぬく非常食ローリングストック
昭和女子大学 現代ビジネス研究所
食プロジェクト 日常の食料品等を普段の食卓で使用しながら備蓄
ポリ袋でご飯を炊く方法など公開

 災害時における非常食や備蓄の重要性が指摘されているが、昭和女子大学 現代ビジネス研究所(東京都世田谷区)は、いざというときの安心のために「ローリングストック」という方法を実践してもらえるよう研究している。「ローリングストック」について取材した。


 「ローリングストック」とは、もし災害が起こってしまった場合にも、できるだけ日常生活に近い生活を送ることができるように、日常の食料品や生活必需品を普段の食卓で使用しながら備蓄する方法だ。


 同研究所は大学と企業・地域が連携して、革新的な教育・研究活動を行っており、多彩な実務経験を持つ社会人が研究員として所属、学生の実践的な研究を支援している。この中で研究会として「食プロジェクト」が発足し、「ローリングストック」の普及に向けた活動に取り組んでいる。2015年から始まった普及活動は、非常食レシピの提案と発信、ワークショップの開催など、食についての専門的な視点からだけではなく、学生の幅広い発想が特徴となっている。


 この会の研究員で代表者の段谷憲氏は「この研究会ができて7年目を迎えています。今年はこのプロジェクトに興味・関心のある学生24人の応募がありました。主に災害時におけるレシピの創作に取り組んでいますが、多様な専門性を持った学生が集まることで、さまざまな災害レシピが考えられています」と同研究会について語る。


 同じく研究員の矢代晴実氏は「東日本大震災(2011年3月11日発生)では、同じ物を食べている状況が続きました。食は生きていく上で基本的なことで、被災者にとってはとても大事なことです。ガス・水道・電気が止まるという条件で、普段の食事と同じものをどのように作るかということが重要になってきます」と非常食の重要性を語る。


 同研究会のメンバーになって備蓄を始めるようになったと言う山田ゆいかさん(管理栄養学科4年)と下未羽さん(同)が、手間のかからないレシピの一端を紹介してくれた。災害時にはカセットコンロで湯を沸かす方法を確保することが重要となる。食材をポリ袋に入れて、カセットコンロで沸かした湯で煮るだけの調理方法だ。これでご飯も炊けるという。ポリ袋でご飯を炊くコツは、高密度ポリエチレン製の半透明のものが理想的だそうだ。


 「非常食のレシピは大学の授業で考えるレシピとは違い、作り方の順番、見通しを持ったメニューの立て方、知識として知っておかなければならないことなど、多くの人に分かってほしいと思います」と二人は話す。


 段谷代表は「昨年はコロナ禍で市民を対象としたワークショップができませんでしたが、それまでは年に4〜5回、自治体が主催するワークショップやセミナーで、非常食レシピを実演しました。学生にとっては良い経験になったと思います。本研究会が目指すのは、非常時に誰でも簡単にできる料理です。『ローリングスロック』に適している非常食、備蓄食材などを自治体、地域に広まるような活動を今後も続けていきたいです」と期待を述べる。


  ワークショップ等で非常食レシピを実演することができなくても、同研究会は「クックパッド(cookpad)の「昭和女子大学非常食のキッチン」で、2016年3月から創作した非常食、約80種類を公開している。「ローリングストック」を活用したレシピとして、『災害を生きぬく非常食〜ローリングストックと災害時調理〜』(昭和女子大学 現代ビジネス研究所 食プロジェクト発行)では、「ポリ袋で作る白菜と焼き鳥缶詰の卵とじ」「乾物天玉切り干し大根でお好み焼き」「にんじんとカラムーチョの簡単サラダ」「ポリ袋で甘酒蒸しパン」などを紹介。


 小原奈津子学長は現代ビジネス研究所について、「学生が参加するプロジェクトには、研究員と学生との調整やアドバイザー的な立場で本学の教員が関わることになっています。研究員とプロジェクトを進める中で、教員は刺激やヒントをもらうとともに、専門的見地からそのプロジェクトを支援し、それに関わる学生は専門分野の知識を実践し、社会とつながることができます」(ブログ)と述べている。


ポリ袋を使ったレシピを検討している学生


下未羽さん(右)と山田ゆいかさん(左)


試作したメニュー

記事の著作権はすべて全私学新聞運営委員会に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞