星稜高等学校(金沢市)は5月からTOiRO梶i東京都千代田区)と連携して、高校生アスリートに向けたキャリア教育研修「アスリートキャリアトレーニング」を開始した。
長らく学業と部活動の両面に注力してきた同校は、これまでにも松井秀喜さん(野球)や本田圭佑さん(サッカー)をはじめとしたトップアスリートを輩出し、現在でも全国大会出場を目指す部活動と学業とを両立させる「Pコース」を設置している。このほか土曜日の特別授業ではキャリア教育や国際理解をテーマに取り入れるなど、時代の変化に応じた新しい教育プログラムも実施している。
一方、若年層向けキャリア教育のプラットフォームを提供する同社では、早い段階での自主自律型育成を目指したスポーツキャリアトレーニング事業「updraft(アップドラフト)」を展開。日本のトップアスリートの多くが引退後の就職などその後のキャリアに不安を抱えており、同社では現役時に夢を追いつつ次のキャリアに向けて準備を行う「デュアルキャリア」という考えを持っておくことが重要であり、そのためにupdraftを通して育成年代に対するキャリア教育を行う必要があると捉えている。
今回、同校の進路担当者から「生徒がスポーツだけでなく新しい時代に対応するために必要な能力を身に付けられるよう思考力や表現力、多様性などを育成する新たな取り組みを行いたい」との要望があったのに加え、既に昨年末から今春にかけて女子バレーボール部でチームビルディングに関するトレーニングを行っていた関係から実現することとなった。
講師で自身もスポーツの経験がある同社取締役updraft事業部長の鶴巻翔平さんは、今回の研修のコンセプトについて「どんな人材が求められているかなどリアルな人事や採用の状況も伝えながら、進路の選択や決断を自分自身で行い、スポーツの経験を社会でどう生かし役立てるかを身に付けてほしい」と語る。5月24日、総合学習の時間内でPコース1・2年生149人を相手に、教室のモニターや生徒のタブレット端末とリモートで結んでの1回目の研修を実施した。
1回目は導入として、キャリア形成をどうやって行っていくかを説明。生徒が抱える「目標はあるけれど目的が持てない」「自分でうまく表現できない」といった問題点を挙げ、スポーツが得意だという強みを生かして人生上のいろいろな出来事をスポーツの場面に置き換えて考えてみることや、一方で先輩の経験から障壁や悩みの回避方法も知っておくべきだとも伝えた。さらに鶴巻さんは「149人の人生の大事なものは皆違う。『スポーツしかできない』ではなく、さまざまなことができてその上『スポーツもできる』という発想に転換してほしい」と強調した。
出席した生徒からは「さまざまな分野の仕事に目を向けて広い視野を持ち考えていかないといけないと感じた」「自分の将来についてまだまだ考え直す必要があると改めて感じさせられた。過去の事例も教えてもらえたのでしっかり参考にしながら考えていきたい」「小中学校ではプロサッカー選手という夢を追い掛け続けていたが、その後の就職のことなどを改めて考えようと思った」「仕事もスポーツ関係に就けたらいいやという軽い考えだったが、スポーツだけできても、勉強もできなければ引退後の就職だけでなく大学進学にも困ることが知れてよかった」などの感想が聞かれた。
第2回は6月28日に行われる。今後1〜3カ月のペースで実施し、個別の相談にも応じるほか、トップアスリートをゲスト講師に迎えることも予定している。