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記事2001年1月3日 1号 (7面) 
立教大学におけるインターネット技術の活用
立教大学メディアセンター 毛利 立夫
研究・教育に画期的試み
 立教大学におけるインターネットの利用は一九九三年から始まった。当初は研究・実験用のネットワークとしてスタートしたが、九四年に八十人程度だった学生利用者が一年足らずで十倍以上の千人弱に増え、九六年には二千五百人まで急増した。利用者の増加に合わせて、システム面も拡充を続けてきたが、インターネットの爆発的普及から、研究ネットワークの延長線として拡充する方針を見直す必要性があり、今後の研究・教育に必要な機能を織り込み、システムの全面的な更新を実現して、九九年四月に立教バーチャルキャンパス(立教V-Campus)を、二〇〇〇年四月からは携帯電話へも情報提供を行えるモバイルV-Campusをスタートした。


独自のインターネット環境構築
プロバイダー事業の立ち上げ

 立教V-Campusは、大きく分けて二つの要素から成り立っている。一つは、インターネットとイントラネットを融合した立教大学独自のインターネット環境の構築、もう一つは、学生、教職員、校友を対象とした独自インターネットプロバイダー事業の立ち上げである。
 プロジェクトを開始するに当たり、本学では「学生のプライバシーが守れる環境を確保しインターネットを授業に生かすこと」を念頭に置いた。
 大学のような教育施設では、だれであっても見ることのできるネットワーク環境が必要なことは言うまでもないが、同時に限られたメンバーだけしか見ることのできない環境も必須の条件である。
 このためにはネットワークにおけるセキュリティーの問題を解決しておく必要がある。セキュリティーに問題があると教員が独自に持っている、取り扱いに注意が必要な調査データや、オフレコの情報はインターネットを経由しては学生に見せられないし、学生のプライバシーの問題もある。
 つまり、大学に必要なインターネット環境とは、外部(社会一般)からは自由に見ることのできる、研究や教育の発表の場としてのネットワークと、学内関係者だけが利用できるネットワーク(イントラネット)の両方が並存しながら全体としては一つに統合されているシステムである。
 本学として、もう一つ目指した方向はコンビビアル。
 コンビビアルとは「楽しい陽気な雰囲気の中、みんなでワイワイ、ガヤガヤとやっていく」という意味で、ネットワーク上にキャンパスを構築し、そこで在学生、卒業生、教職員の生涯教育の場、また交流の場として整備していきたいと考えた。

安定したメール、webサービス実現
セキュリティー万全に

〈システムの特徴〉
 これまでのシステムの問題点は、学内停電等が発生するとシステムが止まってしまうなど動作が不安定な点だった。そこでV-Campus導入に当たって、サーバー類は、すべて外部のインターネットプロバイダー業者のコンピュータセンターに設置し、運用まで委託することによって三百六十五日、二十四時間止まらない、安定したメール、webサービスを実現した。もう一つの問題点であるセキュリティーに関しても、予防や調査能力を強化しセキュリティーを万全にすることが急務だったので、サーバーと同様にシステムの設置場所や運用を外部の業者にアウトソースし、プロに運営・管理を任せることにした。
 また、ドメインに関しても改善を行った。それまで本学で使用してきたacドメインは本来研究用ドメインなので、acドメインを使い続けながら、プロバイダー事業を行ったり、学生が卒業後も利用し続けたり、小・中・高校生や校友へのサービスなどを拡大していくのは不可能と判断した。このため、V-Campusの開設に当たっては、新たにネットワークサービス用のドメインであるneドメインを取得してV-Campusのインターネット、イントラネットを運用することで、研究・実験用のacインターネット環境を残しながら、一方で新サービスとしてのneでのV-Campusを自由に運営することが可能となった。

〈サービスの内容〉
 V-Campusは11・5Mbpsの高速回線を使用し、以下のサービスを実施している。
 基本サービス
 1.全学生へのアカウント配布
 2.エイリアス付き電子メール
 3.簡単なwebベースの設定画面(パスワードの変更、転送設定、掲示板の設置、メーリングリストの設置、カウンターの設置等)
 4.自由にホームページを設置可能(量制限なしのインターネットとイントラネットのwebエリア)
 5.自由にいくつでも設置できる掲示板とメーリングリスト
〈本学独自のインターネットプロバイダー事業〉
 1.地方とニューヨーク等海外にアクセスポイントを整備
 2.学生や卒業生の自宅からのアクセス手段を提供
 3.学生に対する安価で良質なインターネット接続サービスの提供
 4.自宅からのイントラネットアクセス提供(講義情報、休講など)
 5.卒業後も利用できるインターネット接続サービス
 6.学生時代の電子メールアドレスは生涯利用可能

移動中も大学情報入手
学生への情報伝達見直しの動機に

 九九年のV-Campus導入を機にいろいろな情報を学生向けに流していたが、この間の携帯電話の急速な普及を見て、インターネットだけでなく、携帯電話でも大学の情報を提供できればより多くの学生が大学の情報を活用できると考えた。学生側のメリットとしては、電車の中などの移動中にも学生が大学情報を見ることができる。パソコンを持たない学生でも、大学外で情報が入手できるほか、例えばコミュニティ福祉学部の福祉実習など、大学から離れた場所での教育機会であっても、その場から大学の状況を把握することができるようになる。また、就職活動中でなかなか大学に来られない学生にも就職部の情報や大学の情報を伝えるようなサービスも可能となり、そのメリットは大きい。
 サービスの開始に当たり、それまでの組織縦割り的サービス体制を、学生サービスという切り口でプロジェクトチームをつくった。このことは、学生への情報伝達を見直すきっかけにもなり、業務改革につなげることができた点で大学として大きな成果であった。
〈サービス内容〉
1.緊急ニュース
 災害や交通スト、台風等緊急事態発生時に大学の対応を知らせる(ニュースがある時だけ表示)
2.関連webページ(HPの自動変換表示)
3.大学のホームページをiモードに変換して表示(就職部や教務部、研究室の情報等)
4.大学カレンダー(窓口開室時間)
 図書館や教務部等の窓口の開室時間・各窓口からの本日のお知らせを表示
5.便利電話帳
 窓口の各部署の電話番号を一覧で表示
6.研究室掲示板
 学部別に先生の掲示板、ゼミの掲示板、講義の掲示板を表示
7.休講情報
 全学の休講情報を学科別に表示(情報は十分ごとに更新)
8.履修確認
 四月と十月の履修登録時に、登録エラーの情報を確認できる
9.マイカリキュラム
 個人のスケジュール帳。履修登録した科目の時間割、休講情報を表示(自分で入力した個人の予定の表示も可能)
10.マイアドレス
 個人アドレス帳サービス
〈システムの開発〉
 このシステムは、立教大学とNTT東日本で共同開発し、NTT-MEから製品として発売されている。NTT-MEは「モバイル・イントラネットサービス」として、ビジネスモデルの特許を出願した。
http://www.ntt-me.co.jp/news/news.html
 システムの主な特徴は以下の通り。
 1.同一サービスをパソコンからも利用可能
 2.管理者のメンテナンスの手間が掛からない
 3.既存データベースとの連携
 4.学内の認証と連携した個人認証
 5.管理可能なwebページの自動変換

携帯電話所有率92%
学生の利便性高まる

〈学生の反応〉
 大学が実施した学生へのアンケート調査によると、パソコンの自己所有は三七%、家族の所有が三五%で合わせて七二%の学生が自宅でのパソコン利用が可能だった。
 一方、携帯電話の所有率は九二%に上り、携帯の所有率の方が高くなっている。Eメールの利用状況は、携帯のみが一八%、パソコンのみが三七%、携帯とパソコンの併用が二一%という調査結果が出ている。
 これにより、パソコンを持っていても、携帯電話も便利なので併用する学生が多いことが分かった。利用統計では、登録者千百人(二〇〇〇年一一月一日現在)、一日平均百―二百人がアクセスし、一人平均十ページを見ている。一カ月で四万ページへのアクセスがあり、学生の利便性も高まったと感じている。
〈問題点・今後の展開〉
 学生に役立つ情報の充実、変換しやすいページの作成マニュアル、既存システムとのデータベース連携等は、継続的に行いたいと考えている。次年度は、対象機種がiモード以外の他の方式でも利用できるようにしていく予定。また、画像や次世代携帯「IMT2000」への対応を検討している。
 モバイルV-Campusは日々進化を遂げている。研究室のホームページ、ゼミの掲示板、授業の掲示板などが次々に開設されていて学生の学習・大学生活を支える重要なインフラとなっていくと感じている。
 今後も、大学で行われるさまざまな情報をV-Campusに取り込み、学生にとって必要な最新ニュースを積極的に提供していきたい。


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