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記事2001年3月23日 8号 (3面) 
私立大学の教育改革 (2)
インターンシップ―福岡大学
参加学生、好調な就職
蓄積ノウハウで講義科目も
 福岡大学では学生を企業現場の実習に受け入れてもらうインターンシップ実践の歴史が長く、学内で次第に実施学部を広げてきたが、それだけにとどまらず、この三月の春休みからは福岡県内全部の大学や企業経営陣を巻き込んで全県的なインターンシップ実施体制をつくり上げるところまで影響を拡大してきた。
 福岡大学で一番早くインターンシップを実施したのは工学部土木工学科で、昭和三十九年の学科創立時から建学の理念として行われてきた。学外実習は夏季休暇中に一か月間体験しなければならない三年次の必修科目(二単位)とされ、平成十二年度には百十二人の学生が九十七社の企業で実習した。
 続いて歴史が古いのは薬学部製薬学科で、昭和六十二年から薬剤師として必要な病院実習を四年次生の春または夏休みに二週間行うのがやはり必修科目(二単位)とされ、平成十二年には四十二社へ二百九人が実習に赴いた。
 これらはいずれも正規の授業科目だが、授業として単位認定しなくても、学生にとって企業が求める能力と自らの適性を知り就職活動に生かすことは必要との考えから、文系学生を中心に全学的に参加を呼びかけるビジネスインターンシップを学校行事として就職課主催で始めたのが平成九年八月。通産省主導で全国的なインターンシップが展開されるより一年早いスタートだった。これは一〜三年次生や大学院生を対象に春・夏の長期休暇中に二〜三週間行うもので、平成十二年度には夏五十六社、百七人、春十九社、五十二人が参加した。当初は経験のための単位なし学校行事で始められたが、やってみるとなかなかいいので、経済学部のように、インターンシップ体験をレポートとして提出させ、出来がよければ単位を認定する授業科目に格上げするところも出てきた。商学部も同調しそうな気配である。全部合計すると平成十二年度のインターンシップ参加は二百十四社、参加学生四百八十人に達している。
 就職課主催のインターンシップは三月の学科登録の際にアンケート形式でインターンシップへの関心度、参加意識、住所、電話番号などを書かせ就職課へ持参させる。毎年七百人ほどの学生が持参するが、この時点での参加意識は「受け入れ企業の内容などが希望に合えば参加する」という考えが多い。従って受け入れ企業をどうやって集めるかが担当者の能力の問われるところとなる。四月の早い時期に求人依頼を企業にお願いしてもほとんど反応はないので、毎年採用の多い企業やOBの多い企業、地元企業など各業界にバランスよく依頼文を送る。その後担当者から電話で頼んでみると、これから読んでみようという対応になるのが通例である。一度インターンシップを受け入れた企業は例年受け入れてくれるので、少しずつ増加の傾向にある。
 参加学生の数も最初は少なかったが、ある年、参加学生十人が百人を集めて発表会を開き、自分たちのこれまでの視野の狭さ、勉強不足、接客業での言葉遣いやあいさつの役割の大切さ、自分とその業界との相性、中小企業でのやりがい、自分自身を見つめ直す機会になった話、また相手の立場に立って相手の望むものが分かるようになった話などを熱を込めて語った。次の年にはその百人が参加してまた発表会を開いた。こういう循環が動きだして次第に全学的な体制へと近づいていった。インターンシップ参加学生の就職率は全学平均を大きく上回って九六%強という数字を上げている。企業と参加学生を通じた大学との間に信頼感が醸成された結果といえる。
 インターンシップについて受け入れ企業の開拓、学生の募集・掲示、企業と学生とのマッチング(文系と技術系とで違う)、派遣決定学生へのオリエンテーション、依頼状・誓約書・覚書・学生評価表等の学長名による送付、事前研修(企業担当者からのビジネスマナーや基礎知識の話、服装、話し方、就業規則の順守、守秘義務、実習期間中の日誌の付け方、事故への対応、研修感想文の書き方、実習終了時のお礼状)など、新学期から夏休みまでの短期間に積もる山のような仕事は就職課に十二時間勤務を強いることもしばしば。その中でインターンシップ遂行についてのノウハウは着実に蓄積され、いまでは関連の講義科目もいくつか用意されている。経済学部「ベンチャー起業論」に対しては、インターンシップ受け入れ企業サニックスの宗政伸一社長から一億円が寄付された。技術系の研究シーズを文系の感覚でベンチャー起業に結び付ける大学院研究科をつくろうかという構想も同大学で温められている。
 影響はさらに学外へ及び、福岡県インターンシップ推進協議会準備会が、インターンシップ導入時の福岡大学の学生部長として活躍した中野勝之教授を座長として昨年一月に発足、福岡県内の国公立を含む二十六大学の学長、県内の経営者団体責任者、地元企業、福岡県、福岡市、北九州市も加わって八月には同推進協議会として発会、この三月からはインターンシップのマッチングの仲介、学生への事前指導などで大学、企業の双方へ力を貸すことになった。協議会会長には九州大学学長が選任された。
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