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記事2001年3月23日 8号 (6面) 
教育はこれでよいのか
国際交流基金 日本語国際センター所長加藤 秀俊氏
日本語教育は感じがネックに
日本語教師は歴史、文化の基本的知識を 評価は尺度を柔軟に
 加藤秀俊所長によると、海外での日本語学習者は現在百十数カ国、およそ二百三十万人に上り、五年前に比べると、二〇%増と大幅に伸びている。国別では韓国、オーストラリア、中国が日本語学習者の多い順だ。
 加藤所長は「教育学上、言語教育は日本語教育と国語教育とに使い分けられるとしますと、国語は内(日本人)向けの言葉、日本語は外国人が勉強する言葉」とし、国の力を図る指標の一つとして言語力を挙げる。
 世界で七千から八千ある言語の中で、言語力トップは中国語、次が英語、スペイン語と続き、日本語はベスト五には入るという。
 「日本語教育で最大の問題は表記法にある」と指摘する。
 「話し言葉の日本語は決して難しくはありません。外国人が日本語を学ぶ場合、表記法の問題、つまりかなと漢字が入ってくると、日本語は難しくなってきます。日本語教育では漢字がネックになっています」
 中国、韓国、日本などの漢字文化圏では最近、漢字を共有しなくなってきており、漢字文化が大きな曲がり角に来ていると語る。
 「言語は文字言葉と(話し)言葉が必ずしも結びついていないことを考えれば、漢字に固執する必要がないのではないか。先生方の間でも意見が分かれるところですが、そろそろ、表記法について考える時期が来ているのではないか」と提案する。
 若い人、あるいは企業を定年退職した人で、海外で日本語を教える人が増えてきた。
 日本語教師を目指す人、あるいは今日本語を教えている人に望むことは。
 「日本の歴史、社会、文化の中学レベルの基本的な知識を勉強してほしいです。日本語教師ですから日本語以外のほかのことは分かりませんでは済まされません。言葉を教えることは文化学習の集約ですから」と訴える。
 現在の日本の教育については、「入試制度と(一般的な)評価の制度について、真剣に考えているのでしょうか」と疑問を投げ掛ける。
 出発点は「一人ひとりの人間の能力には当然差があるのに、評価を測る尺度が一元化されているのはおかしい」からだ。
 「一人の子供を評価する場合、すべての成績がいい者にいい評価をすると考えているのではないか。一人の人間を評価するには、柔軟に尺度を考える必要があります」
 評価についての考え方が集約された入試制度は、最も悪い部分と指摘する。
 「学校だけではなく、家庭、企業でもこの評価を引きずっていると思います。悪いところに目がいくのではなく、子供のよい所を励ますようにするべきです。不完全な人間が子供に完全さを求めることが最大の問題です」
 加藤所長が最近考えることは、「人生はどうにかなっていくものだ」ということ。小さなことは計画が立てられるが、大きなことについては計画が立てられないことが多いからだ。どうにもならないと思ってもどうにかなるものだという。
 国際交流基金は海外との文化交流を行うため、一九七二年、外務省所管の特殊法人として設立された。日本語国際センターは、その主要な活動の一つである日本語教育への支援を強化するために、一九八九年に同基金の附属機関としてつくられた。
 現在では、海外の日本語教師の研修、日本語教材の制作・寄贈をはじめ、海外の日本語教育に関する情報の収集・提供を行っている。
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