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記事2001年5月3日 12号 (4面) 
大学審省庁再編で中教審大会分科会へ
短大、高専の位置づけ
大学院と学部の役割分担
 昭和六十二年に設置された大学審議会は省庁再編に伴って、昨年十一月、その歴史を終え、大学および高等専門学校における教育の振興に関する重要事項については、中央教育審議会大学分科会が引き続き議論していくことになった。
 大学審はこの間、さまざまな答申や報告を出してきたが、近年、特に高等教育政策に大きな影響を与えた重要な答申が、「21世紀の大学像と今後の改革方策について競争的環境の中で個性が輝く大学」(平成十年)と「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」(平成十二年)の二本である。
 「21世紀」答申は、大学改革の基本理念として、(1)課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上(2)教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保(3)責任ある意思決定と実行を目指した組識運営体制の整備(4)多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善の四点を打ち出した。これに基づいて提言された主な改革方策は、▽教養教育の重視、教養教育と専門教育の有機的連携の確保▽成績評価基準の明示と厳格な成績評価▽高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う大学院修士課程の設置促進▽四年未満の在学で学部を卒業できる例外措置の導入▽九月入学の拡大▽修士課程一年制コースの制度化▽自己点検・評価の実施と結果公表の義務化、学外者による検証の努力義務化▽第三者評価システムの導入等である。
 この「21世紀」答申の基本理念を踏まえ、特に高等教育制度と教育研究水準の両面にわたって国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を目指した改革を進めるべきだとしたのが「グローバル化」答申である。同答申は(1)グローバル化時代を担う人材の質の向上に向けた教育の充実(2)科学技術の革新と社会、経済の変化に対応した高度で多様な教育研究の展開(3)情報通信技術の活用(4)学生、教員等の国際的流動性の向上(5)最先端の教育研究の推進に向けた高等教育機関の組織運営体制の改善と財政基盤の確保の五つの視点に従って改革方策を提言した。その主な提言は、学生の募集単位の大くくり化、教員の教育能力・実践的能力の重視、教育に関する多元的な評価の推進、単位累積加算制度の導入、パートタイム学生の受け入れの検討、教員の流動性の向上などであった。
 今年一月に発足した新中教審に対しては、四月十一日、町村信孝文科相(当時)が四つの事項を諮問したが、このうちの一つに今後の高等教育改革の推進方策が含まれている。具体的な審議の検討事項として大きく三点が俎上に載せられており、これらについては審議の区切りがついた事項から答申を出し、制度改正などの対応を行っていく。五つの分科会のうち、ただ一つ会合を開いていなかった大学分科会は今月にも初の総会を開く予定である。
 ここで検討される第一の事項は、短期大学・高等専門学校から大学院までの高等教育制度全体の在り方についてだが、これに関しては大学審答申で引き続き検討が必要とされた課題である、正規の学生としてパートタイムで学びながら卒業を目指す新しいタイプの学生の受け入れの在り方、専門学校を含め高等教育機関全体における専門職業教育の在り方を視野に入れた短期大学および高等専門学校などの位置づけを審議していく。このほか、学部と大学院の役割とそれを踏まえた学部の修業年限の在り方、助教授・助手の位置づけをはじめ教育研究の活性化に資する教員組織の在り方も審議する。
 第二の検討事項は大学等の設置認可の望ましい在り方と今後の高等教育の全体規模についてである。大学の設置についてはこれまでも審査期間の短縮化、申請書類の簡素化などが図られてきた。しかし、大学等の主体的・機動的対応がより一層必要だとの観点から望ましい設置認可の在り方を検討する。高等教育の全体規模の在り方については十八歳人口の減少や国際化・情報化のさらなる進展なども考慮に入れ、平成十七年度以降の在り方を検討する。
 第三は職業資格との関連も視野に入れた新しい形態の大学院の整備の在り方について。「21世紀」答申で提言された、高度専門職業人養成を目的とする大学院については平成十一年に専門大学院制度が創設された。現在、司法制度改革審議会が新しい法曹養成制度の中核をなすものとして、「法科大学院」(仮称)の創設を検討、六月には結論を出す予定だ。この審議の動向も注視しつつ、職業資格との関連も視野に入れた新しい形態の大学院や学位の在り方、大学院と学部との役割分担などについて検討していく。

私大の財政状況公開など
規制見直しが改革後押し

 こうした審議会の議論と並行する形で、政府の行政改革推進本部規制改革委員会は高等教育分野の規制緩和の推進についても提言している。
 今年三月三十日、「規制改革推進三か年計画」が閣議決定された。高等教育の分野別措置事項としては、(1)インターネットを用いた高等教育の促進(2)大学院における通信制博士課程の設置(3)外国からの留学生に対する学位授与(4)大学の情報公開の推進(5)大学運営の自主性・自律性の向上の五つが挙げられている。
 このうち、(4)については私立大学の財務状況の公開のために、その具体的な内容と方法について今年度から検討を行う、とされた。
 (5)については大学の学部の収容定員の範囲内における学科の新設・改廃および学科定員の変更が大学の主体的な判断で機動的に行うことができるよう届け出制の導入を含め、現在の認可制を改める。これについては、十五年度までに結論を出すとされている国立大学の独立行政法人化と並行して検討する、とされた。
 また、国公私立大学の講座などの組織編制を柔軟に行うようにするため、大学設置基準の改正が行われたほか、第百五十一回国会に国立学校設置法の改正法案が提出された。



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