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記事2001年5月3日 12号 (5面) 
ユニーク教育 (93) ―― 国際学院高等学校
総合学科で学ぶ楽しさ
高校3年間で進路じっくり
産業社会と人間、情報、課題研究必修


 国際学院高等学校(大野博之校長、埼玉県伊奈町)は三月五日、大宮市(当時、現さいたま市)の大宮ソニックシティで「平成十二年度国際学院高等学校課題研究発表会」を行った。会場には千人を超える、全校生徒、保護者、中学生、企業関係、他校の教職員らが集まった。
 この発表会は総合学科での教育や学習指導の内容を広く理解してもらうとともに、発表会での成果を今後の教育活動に役立てようという趣旨で開催された。
 「誠実・研鑽・慈愛・信頼・和睦」を建学の精神に掲げる同校では、「人づくり」を教育の理念に学習活動を展開している。この教育の理念は生徒が自分で将来の進路を考え、学びたい科目を選択して時間割を作り、学ぶ楽しさを体験する学科総合学科に表れている。これによって「将来、社会の一員として立派にその役割を果たし、充実した人生を送り新しい時代を生きるための基礎」(大野校長)を作ろうというのが狙いだ。
 総合学科は、「産業社会と人間」「情報基礎」「課題研究」の三科目が必修となっているのが特徴。同校では一年次に「人生と社会」(学校設定科目)、「産業社会と人間」それに「情報基礎」を学ぶ。そのうち「人生と社会」では人間としての生き方と社会とのかかわりについて学び、「産業社会と人間」では将来の進路や科目選択について体験を通じたガイダンスを受け、二年次、三年次での多数の選択科目から生徒が興味・関心、適性・進路に合った科目を選びじっくり学習する。
 この科目選択のための目安になるのが「系列」だ。こんな系列がある。「人間科学系列」「情報科学系列」「生活科学系列」「健康科学系列」「国際文化系列」「人文社会系列」。どの系列からも自由に選択することができる。
 「課題研究」は総合学科の学習成果の集大成で、三年次で学ぶ。当日発表された研究は「記憶障害のメカニズム―痴呆老人のケア―」「経営戦略について―国際経営とマーケティング―」「世界の難民とその現状について―私たちにできること―」「褥瘡―褥瘡にならないためには―」など、八つのテーマに及んだ。
 この「課題研究」は「七―八割が自分の進路に合わせたテーマになっている」(小林恵二学年主任)。生徒はテーマが決まったら、図書館の資料、インターネットを利用して情報収集、アンケートの実施、街頭インタビューなど、さまざまな方法をつくしテーマについて調べ上げる。教師は調べ方などについてアドバイスする。
 生徒は一人一台ノートパソコンを持っているので、研究の成果はフロッピーで提出することになっている。大野校長も全員の「課題研究」を評価する。研究論文の提出に当たっては一日たりとも遅れは認めない。「学校としては時間厳守を大事にしているので、提出日が遅れた場合は単位を与えないことにしている」(小林主任)と厳しい。
 将来、児童施設で働きたいと思っている板橋雅枝さんは「世界の難民とその現状について」発表し、インターネットを利用し国連難民高等弁務官事務所のホームページで難民や紛争などについて調べ、さまざまな理由で難民が発生していることを知り、「紛争は人間が引き起こした問題なので、最後まで調べ受け入れていかなければならない。今後の課題として将来の難民の姿を考え、私たちが難民問題にきちんと向き合って調べていくことが重要である」と結論付けている。
 また看護婦志望の猪瀬純恵さんのテーマは「褥瘡」。褥瘡とはいわゆる床ずれのことだが、どんな病気か、どのように手当てをすればよいのか、予防方法は、などを研究した。試行錯誤の中で作成した「課題研究」は生徒にとっては宝物であり、自信となっている。



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