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記事2001年7月3日 17号 (1面) 
私学振興後退の恐れ
特殊法人等の事業見直し
改革推進本部「中間まとめ」
私学事業団の融資事業や私大経常費補助金など対象
民間金融機関等への移行も
振興助成法補助拡充が先決


 六月二十二日に開かれた政府の「特殊法人等改革推進本部」(本部長=小泉純一郎総理)の初会合で、石原伸晃・行政改革担当大臣から「特殊法人等の事業見直しの中間とりまとめ」が報告された。この中では日本私立学校振興・共済事業団の私立学校施設・設備整備等に対する融資事業や同事業団が配分している私立大学等経常費補助金も見直しの対象に挙げられており、同事業団と文部科学省では国の重要政策である私学教育の振興を後退させないように同事業団の事業への理解を訴えていく方針だ。
 行政改革推進事務局がまとめた「特殊法人等の事業見直しの中間とりまとめ」は、特殊法人等に対するヒアリングなどを通じて、事業の廃止、整理縮小、民間事業化、国の直轄事業への移行など各検討項目の対象となり得る特殊法人等の事業を列挙したもの。このうち私学事業団の融資事業に関しては、「民間金融機関において類似の事業が行われている場合には、廃止も含めて事業の見直しを検討する」「金融を主たる業務とする法人の行う事業への統合等を検討する」などの指摘を受けた。
 こうした指摘に対して、私学事業団は、民間金融機関に移した場合、貸し付け先の選別(貸し渋り等)や学校法人間で貸し付け条件に格差が生じる恐れがあること、貸し付け業務は、経常費補助事業、経営・教育条件情報支援事業など他の助成業務および共済業務と「総合的・一体的」に実施することにより「私学振興」の実を上げているもので、貸し付け事業だけを切り離して他の機関に移管することは効果的ではない、としている。
 私学事業団が助成業務を行っていくための運営費は全額、貸し付け事業によって生み出しており、運営費に対する国の補助はない。貸し付け事業がなくなると補助金の配分を含めてすべての助成業務を実施できなくなる。私学事業団の貸付利率は効率的な事業運営から財政投融資金利に〇・一%を上乗せしただけ(原則)の低利で、政府系金融機関と比べても一%ほど低い金利を実現している。
 一方、私立大学等経常費補助金等に関しては、「社会経済情勢の変化、効果等を踏まえ、事業の意義が乏しくなっていると認められる場合には、廃止も含めて事業の見直しを検討する」「国、地方公共団体または民間団体が実施すべき事業であると認められる場合には、廃止も含め事業の見直しを検討する」等の指摘を受けた。
 私学事業団の行っている私立大学等経常費補助事業は、私学振興(教育条件の維持・向上、修学上の経済的負担の軽減、経営の健全性の向上)に不可欠のもので、我が国の発展の活力を生み出す元となっている。しかも私大等の経常経費に対する補助率は一一・九%と目標の五〇%には程遠い状況で、むしろ一層の充実が求められている。また補助金は全額、同事業団を経て各私立大学等に配分されるため、補助金の削減は直接私立大学等の経営に影響する、と説明している。
 今後、行革推進事務局は七月中に文部科学省から三度目のヒアリングを行い、八月中には同事務局の見直しに向けた指摘と文部科学省の反論を合わせて公表、十二月には平成十三年度から五年にわたる特殊法人等の整理合理化計画を明らかにする方針だ。
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