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記事2002年1月3日 号 (2面) 
学生を確保し経営基盤を充実
私大振興協会が役職者研修会
 日本私立大学振興協会(北元喜朗会長=北陸大学理事長)は昨年十一月二十二日、東京・市ヶ谷の私学会館で「平成十三年度役職者職員研修会」を開催した。日本私立学校振興・共済事業団財務相談支援センターの田村儀一・主任研究調査員が私立大学の財務の現状と今後の改善策について講演。田村氏は私立大学を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しているとし、学生募集にあらゆる努力を払い、経営基盤の充実を図るべきことなどを指摘した。
 田村氏はまず調査データを基に、私立大学の入学定員充足率について説明した。充足率の高い大学とそうでない大学との二極分化が進み、比較的入学志願者を集めやすい大都市圏の大学の中でもさらに二極化の傾向が見られると指摘。これまで年々、上昇する進学率が唯一の追い風だったが、これも頭打ちの時がくるとしたうえで、学生数の減少は学生納付金の減少につながり、財政悪化を招くと述べ、学生確保に力を入れるべきだと強調した。
 財務体質強化のために各大学が取り組んでいる実例としては、事務組織形態の見直し、退職金割り増しによる早期退職奨励、教職員の再雇用制度の採用、事業のアウトソーシング化による残業時間の削減といった人件費の抑制策が実行されていることを指摘した。特に人件費は財政悪化の大きな要因であり、ひとたびこれが増大すると縮減は容易でないとして、これを厳しく精査しなければならないと強調した。また、財務状況を公開している法人が年々増えていることにも言及。その積極的な公開を図るとともに、教職員も財務状況の現状を認識して、情報の共有化に努め、この難局に対応すべきだと述べた。
 二人目の講師、水鳥川和夫・東北芸術工科大学教授は「大学に企業原理を導入する」と題して講演。株式会社デジタル・イメージCEOでもある水鳥川氏は、企業経営から見た大学経営の特殊性として▽極端な年功序列で教職員に何のインセンティブもない▽顧客満足(CS)という概念がない▽サービス内容を見直すことをしない。カリキュラムが硬直化しているなどと指摘。大学の競争戦略は常に学科を改変することであると述べ、東北芸工大でeビジネス、アミューズメント(ゲーム)、広告の学科開設に苦闘した経験を紹介した。その経験を踏まえ、新規学科の開設に当たっては、既存の学科の合議制で起こさない、外部からあるいは有能な一人の人間に任せる、新規教員の採用にはマネジメント制を採り入れることなどが重要だと強調した。
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