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記事2002年10月13日 1864号 (3面) 
教育改革で問題山積
私学のあるべき姿研究目標に
ゆとり教育論から学力徹底など
経営研究会東京中高協、教育研
東京私立中学高等学校協会(酒井A会長=東京女子学院中学高校長)と東京私学教育研究所(堀一郎所長)による私学経営研究会(理事長・校長部会)が七月二十六日から三日間、神奈川県足柄下郡のホテルで開催された。研究会では「私立学校のあるべき姿」を研究目標に、初日は講演、二日目はパネルディスカッションと分散会、三日目は総合討議などが行われた。
 初日は東京大学教育学部前学部長で現在東京大学大学院教育学研究科教授の藤田英典氏が「新時代の私学の課題・教育改革と私学の役割」の演題で講演し、一九八〇年代以降の教育改革の背景やその問題点を初等中等教育を中心に解説し、今後の教育課題について言及した。
 このうち完全学校週五日制については、「この制度の導入の隠れた最大の理由は一九八〇年代、政府の課題の一つだった、年間の労働時間千八百六十時間達成の一環として、公立の教職員の週休二日制をお金を掛けずに実現するためだった。それが、子供を家庭や地域に返してゆとりを与えるためだという『子供のゆとり教育論』という見当はずれの議論をしてしまったので、以後ゆがんだ議論になってしまった」と展開した。教育改革の方向性として(1)制度を多様化・弾力化・自由化し市場原理を推し進めること(2)ゆとりと個性を導入すること(3)心の教育、道徳教育、奉仕活動の強化を挙げた
 また、学校選択制、中高一貫校およびコミュニティ・スクールが提起する問題として、「コミュニティ・スクールが制度的に認められれば、中高一貫校(の問題)より大きい影響を及ぼすのではないか」と語った。
 また学力については、「学力は基礎・基本を徹底的にやり、それに先端をいくような専門的能力を身につけるトレーニングや努力をするべきだ。これが生きる基礎になるはずだ」と強調した。
 二日目に行われたパネルディスカッションでは、「国際化時代の人材育成と私立学校」のテーマで、本間長世・成城学園理事長・東京大学名誉教授、成松洋・アジレント・テクノロジー株式会社(本社・米国)代表取締役社長の二人のパネリストが参加、助川幸彦・芝中学高校長がコーディネーターを務めた。
 本間氏は「生きる力」を「よく生きる力」と言うべきだとし、「ゆとりある教育とは、一日をいかに充実して生きていくかという意味だ」と持論を述べた。また、「教育は天才を生み出すためではなく、知識を蓄積してそれらを関連させ、活用させるような教育が必要で、それには問題を深く考えさせることが大切だ。これが哲学(の勉強)に通じる」と教育の本質について触れた。
 一方、成松氏は企業の立場から、いま求められる人材として企画力のある人、失敗してもリカバリーができる人を挙げ、「伸びる人は自分で課題を見つけて、やっていける人だ」と国際化を見据えた人材論を述べた。

国際化時代の人材育成をテーマに徹底討議

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