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記事2002年11月23日 1872号 (1面) 
社会が望む大学で討議 私大の教育研究充実研究会大学の部
私学研修福祉会
私学研修福祉会(P在幸安理事長=日本大学総長)は十月二十九、三十の両日、東京・市ヶ谷の私学会館で「第二十五回私立大学の教育・研究充実に関する研究会(大学の部)」を開催した。初日は基調講演として、寺島実郎・株式会社三井物産戦略研究所長が「日本再生の要件としての教育改革戦略」、小野田武・独立行政法人産業技術総合研究所監事(日本大学総合科学研究所教授)が「創造科学技術立国を目指す我が国の大学教育・研究への期待」と題してそれぞれ、これからの大学教育への提言を行った。
 寺島所長は教育の現状をめぐる問題意識として(1)人口構造の急激な成熟化が教育にどういう影響を与えるか(2)真の教養教育の欠落の深刻さの二点を指摘。(1)については、幼いころから直系親族に取り囲まれて育った現在の若い世代は教育段階のどこかで集団教育を受けることが必要だとし、(2)については、物事の本質を深く考え抜く力=「脳力」の劣化が特に若い世代に加速していることと、大人社会のモデル形成力が欠如していることを問題点として挙げた。特に後者に関しては「団塊の世代」の省察として、私生活主義と拝金主義からの脱却を訴えた。
 教育改革には戦略的視点を持たなければならないとし、地域の産業が抱えているテーマと大学が連携していく視点とともに、経営戦略の専門家を大学の中で意識的に育成することを提言した。また、先端的サービス産業にスペシャリティーを持った人材を提供する学部が今後、必要とされるかとの見方を示した。
 小野田教授はこれからのわが国の産業構造を考えた時、求められる人材は、既存組織非依存型の自律的人材、学際的人材であり、こうした人材の育成にはダブルメジャーや新規融合学問体系の構築で対応しなければならいと指摘。これらへの私立大学の挑戦を促した。私立大学が多様な展開を行っていくためには、アカウンタビリティーや自己点検・外部評価・第三者評価の徹底、教育評価・教育研究の重視などが前提条件になると述べた。そのうえで、私立大学は高等教育の質的改革と普及の担い手であり、持続的発展の基盤を支える「民」の知的創造産業だと位置づけた。
 基調講演の後のディスカッションでは、小野田教授、黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長、P在理事長の三氏が社会が望む大学の在り方について話し合った。黒田学園長・総長は、真の創造力を育てるには十分な基礎学力を育てることが重要だとし、その意味で導入教育が重要になってくると指摘した。P在理事長は自然科学と人文科学との統合・融合、新たな教育市場への戦略と変革が求められているとした。
 二日目には「地域社会との連携〜産・官・学連携」をテーマにしたシンポジウムが開かれた。
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