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記事2002年2月13日 号 (3面) 
社会人の積極的活用を
私学団体の中教審(教員養成部会)への意見
 中央教育審議会の教員養成部会(部会長=高倉翔・明海大学長)は、答申案の作成に当たって、教育、経済関係団体に対し、今後の教員免許制度の在り方に関する「中間報告」についての意見を書面で提出するよう依頼した。各団体は要請に応じて意見書を提出したが、このうち私学関係団体が意見書の中で表明した意見の概要は次の通り。ここに掲載した意見の概要は、中教審事務局(文部科学省)が各団体の意見書をもとにまとめ、一月二十九日の中教審第十五回教員養成部会に提出したもの。

〔日本私立小学校連合会〕

専門性と特色ある教員不可欠
隣接校種免取得を促進

教員免許状の総合化・弾力化

 実際に理数系出身の教員が少ない実態もあり、総合的な学習に対応するためには中学校の実技教科(音楽、美術、保健体育、家庭)の免許状に限られた他校種の免許状による小学校の専科担任を、例えば理科、算数、外国語など他教科等に相当免許状主義の原則を維持しつつ拡大し、指導をより効果的にする提案に賛同する。
 また、小学校、中学校の系統的な指導ができれば効果的であり、特色ある学校作りには、教員の専門性と特色ある教員は不可欠な要素である。そして各学校間の連携を促進するため、現職教員の隣接校種免許状の取得を促進する制度を創設すべきであり、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の教員免許の総合化の検討については、子どもの発達段階、学習指導要領の構造等からの調査、分析が重要であり、今後中長期的課題として専門、学術的調査研究を進めるべきという提案に賛同する。

教員免許更新制の可能性

 教員免許制更新については重要な問題であり、また制度論としても多くの障害がある。私立学校の教員は、それぞれの学校の方針や判断により、採用、人事管理等を通じて適格性の確保を、そして自己研修をはじめ校内研修や団体研修などの各種研修によって、その専門性の向上を図っている。そのような状況から本連合会にはこの提案された内容に対して積極的に賛同する意見もあり慎重な意見もあったが、教員免許更新制の可能性の検討にあたり、教員の適格性の確保、専門性の向上の観点から検討し、現職教員に対する十年目の研修、指導力不足の教員への対応、免許の取り上げ、分限、勤務評定など総合的な措置をとる施策で更新制に代わるものを検討することに意義を認め、特に教員の専門性の向上を図るための教職十年経験教員に対して、個々の教員の勤務成績の評価結果や研修実績等に応じた研修を実施すべきとの提案に賛同する。そしてこの研修に国・公立教員に限らず、私立学校の教員にも公費で研修を受ける機会を作るべく検討してほしい。指導力不足の教員に対する教員の人事・管理システムを早急に構築する提案については賛同するが、私立学校への適用は私立学校の判断に委ねるべきである。また、教員免許状の取り上げ事由を強化し、他の制度との整合性や私立学校教員への適用の在り方を考慮しつつ検討する提案に賛同する。

特別免許状の活用促進

 小学校においては、総合的な学習など広く、深く、教養や専門知識も必要となる教科であって、指導体制の整備が必要であるので、特別免許状を活用すべきである。また、教師として、より積極的に子どもの教育にかかわりたいと希望する者にも臨時免許状の枠を広げることによって教育の向上につながると思う。こうした観点から特別免許状の活用が促進されるよう学士要件や有効期間を撤廃することには賛同する。それから社会人特別選考の各都道府県での実施を早急に促進すべきである。


〔日本私立中学高等学校連合会〕

教員免許更新制導入は必要
他校種免許取りやすく

教員免許状の総合化・弾力化

 中間報告に示されている教員免許状の総合化・弾力化の方向性は、大筋としては是とする。「その具体的方策」とされる中学校等の教員免許状保有者による小学校での教授も一つの考え方であり、必要修得単位数を教職経験に応じて軽減するなどして他校種の免許状を取りやすくし、小・中学校など隣接する校種の免許状取得を促進することなどは評価できる。

教員免許更新制の可能性

 教員免許状は、一定の水準に裏打ちされた実質的な証明力を対社会的にも有するものでなくてはならない。従って、教員免許状に更新制を導入することは、教員免許状自体の公信力を高めそれによって学校教育への信頼を回復させることに繋がるばかりでなく、制度自体の自己点検・自己評価を行うという意味合いからも、必要であると考える。現実問題としては、様々な問題点が指摘される現段階での更新制導入には、慎重にならざるを得ないことも理解できない訳ではないが、更新制実施に向けた検討は今後とも継続される必要がある。

特別免許状の活用促進

 社会制度や価値観が大きく変動し、急速に科学技術や知的水準が向上する中で、これからの学校教育にとって、教員の資格要件が教員免許状の有無だけで判断されるべきなのかという根本問題の検討も含めて、まずは、現行の社会人を教員に活用する制度を大胆に改革すべき。
 確かに、現行の「特別免許状制度」の要件を緩和し簡素化することは必要であり、「特別非常勤講師制度」のさらなる活用も有用ではあるが、これからの学校教育が学校ごとの個性化・多様化を目指すのであるならば、学校長の判断と裁量で当該学校の教育目標を実現するための教員構成を可能とする制度の導入も検討されるべき。


〔全日本私立幼稚園連合会〕

 意見なし


〔日本私立短期大学協会〕

総合化・弾力化は将来の課題
開放的教員養成の堅持必要

教員免許状の総合化・弾力化

 今回の中間報告での具体的方策案では、教員免許状の総合化は特殊教育諸学校免許状に限られること、教員免許状の弾力化は小学校専科担任の拡大、隣接校種免許状の取得の促進、専修免許状の改善など一部に限定され、総合化・弾力化の方向性は将来の課題とされたこと、つまり、今後の専門的・学術的な調査研究を進めた上での中長期的な課題とされたことに本協会は賛意を表したい。本協会としては、これより具体的に始まる特殊教育総合免許状の創設に向けての検討や、将来の教員免許状の総合化・弾力化への検討において、その方向性が、教員養成課程における修得単位の単純な増加に陥ることのないよう切に願う。

教員免許更新制の可能性

 教員の資質向上に向けては、「教員の適格性の確保」と「教員の専門性の向上」とを明確に分けていることは、教員が持つべき責任を間接的ながら明らかにしたものとして高く評価したい。更にその提案の内容も、教員の資質向上や現在の学校が持つ諸問題の改善に向けて、まことに時宜を得たものとして賛意を表す。
 ただその中で、将来、「科学技術や社会の急速な状況の変化によって、教員免許状の更新制を検討する場合には、『一定の単位の修得のみをもって一般大学・学部においても教員養成を行っている現行の開放制を含めた教員免許制度全体の抜本的な見直し』も視野に入れた検討が必要となろう」との指摘は、今次の部会が潜在的には開放的教員養成制度に消極的・否定的な見解を持つのではないかとの疑念を生じせしめ、開放制の堅持を主張する本協会としては、幾ばくかの懸念を持つ。

特別免許状の活用促進

 今日の学校の教員に、学校外の優れた知識・技能をもつ社会人を活用することは中間報告に述べられた通り必要であり、「特別免許状制度」の一層の改善に努力するともに、「特別非常勤講師制度」の活用についても配慮されるよう希望。


〔日本私立大学団体連合会〕

教員研修に私大活用を

 今回の中間報告にある基本的な考え方および施策の方向性につきましてはおおむね妥当。
 施策の具体化においては、(1)開放性教員養成制度の堅持、(2)教員養成現場における学生の負担増は必要最小限にとどめられることについては引き続きご留意願いたい。
 今後、国立大学における教育学部の統廃合が計画されているなかで、圧倒的多数の私立大学の利活用が不可欠と考える。特に「教職経験者研修」(五年経験者研修、十年経験者研修など)において、私立大学は、継続教育の立場から充分な研修の機会を設ける用意があります。教職経験者研修における私立大学の役割発揮のための施策について、さらに一層のご審議を願いたい。
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