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記事2002年3月23日 号 (8面) 
新病院の理想を具現した「東京臨海病院」
最新医療設備整備
高機能の医療サービス提供


 日本私立学校振興・共済事業団(國岡昭夫理事長)は四月一日、東京・葛西に東京臨海病院(小屋二六病院長)を開院する。同事業団では私学教育の充実とその経営の安定を図るための支援や私学教職員とその家族、私学共済年金受給者に対する年金・健康保険の提供および福祉事業を行っているが、新病院はその福祉事業の一環として計画されたもの。私学事業団の加入者はもとより、地元・東京都江戸川区民、さらに周辺地区の住民も含めた地域に協力する病院として高機能の医療サービスを提供していく。
 
患者さん中心の病院
医療水準の向上図り、地域へも協力
東京臨海病院長小屋二六氏

 東京臨海病院の基本理念は「患者さん中心の病院」であり、患者さんと病院職員との相互信頼に基づく、あたたかく親しみのわく医療を展開していきます。この基本理念を具体化するために、(1)患者さんが高度の医療をいつでも受けられるようにする(2)地域に不足する医療を中心に地域医療に協力する(3)医療の質を確保するとともに医療水準の向上を図る(4)独立採算を原則とし、病院経営の健全化に努める(5)患者さんの権利を尊重した医療、科学的根拠に基づいた医療(EBM‥Evidence Based Medicine)を提供することを基本目的としています。
 診療科目は全十八科ですが、各診療科を基盤とし、全人的医療を実現するための総合診療を総合診療科で行う予定です。ここで患者の振り分けを行い、必要に応じて総合診療科での継続診療も行います。
 インフォームドコンセントやアメニティーに配慮し、患者さんを「待たせない・わかりやすい・やさしい病院」づくりが診療方針です。外来診療・各種検査の予約を行い、調剤などの待ち時間の短縮を図ることによって「待たせない病院」を、外来患者さんの動線が短くなるよう各部各室を配置し、廊下を色別にするなどして「わかりやすい病院」を実現します。病院職員はお年寄りや身障者をはじめすべての患者さんと同じ目線で接し、心の安らぎを与えるサービスを提供します。患者さんの信頼を得るために診療、検査など医療行為について十分な説明を行うほか、電子カルテシステムの採用により、患者サービスの向上を目指します。診療録の開示や説明も積極的に行っていきます。
 各診療科、各部門と協力し、患者さんのQOLを考慮した治療を実現するために、医師、看護師、医療技術者等の協力体制を確立し、チーム医療を実施していきます。地域特性と考えられるアレルギー、循環器系疾患の診断・治療にも取り組んでいきます。また、地域医療機関との連携を密にし、病診連携・病病連携を推進するとともに、症例検討会の開催などによって医療協力を進めていきます。二十四時間の救急体制を取り、小児救急にも積極的に取り組みます。
 医療機器はリニアック、CTスキャナー、MRI、血管造影装置などの最新装置を導入しました。病院は免震構造を採用し、大規模災害時にも診療機能の継続を図り、救護医療の場を提供できるようになっていることも特長の一つです。
 私学事業団の加入者の方々はもとより、江戸川区民、さらには周辺地域住民の方も含めた地域に協力する病院として今後、高機能の医療サービスを提供していきたいと考えています。

事業団加入者や地域住民対象
内科、循環器科など18科

 私学事業団は昭和三十二年以来、直営の医療機関として台東区根岸で下谷病院を運営してきたが、昭和六十一年の消防法改正に伴い、スプリンクラーの設置が義務づけられたこと、および建物が築後六十年を経過し老朽化が著しかったため、昨年十二月に閉院。新病院は地域を挙げて総合病院の誘致を進めてきた江戸川区が臨海町一丁目の用地をあっせんし、建設が進められてきた。四月一日、「患者中心の病院」という理念が貫かれた理想的な病院が開院する運びとなった。
 病院が位置する江戸川区南部の葛西地区は近年、団地が相次いで建設され、人口が増えている地区。最寄り駅は営団地下鉄東西線西葛西駅とJR京葉線葛西臨海公園駅。西葛西駅からはバスで約十分、葛西臨海公園駅からは徒歩約二十分という距離にある。東京臨海病院は職域病院として、私学事業団加入者・家族、年金受給者はもちろん、江戸川区民をはじめ、こうした地域の住民を対象に高度の医療サービスを提供していく。診療科は内科、循環器科、消化器科、呼吸器科、小児科、メンタルクリニック、外科、脳神経外科、心臓血管外科、整形外科、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科、形成外科、泌尿器科、産婦人科、麻酔科、放射線科となっている。
 病院は約三九九八四平方メートルという広い敷地面積の中に位置し、地下一階、地上八階建て。延床面積は約三九一五九平方メートル。大きな地震にも建物が耐えられるよう、免震構法を採用している。免震構法とは建物を積層ゴム、ダンパー等の免震装置の上に載せ、地震からの揺れの影響を少なくするというもの。また、液状化対策として地下約三十五メートルまで地盤改良を行い、地震災害時に救急医療拠点として機能するよう考えられている。
 建物のうち、四階から七階までが病棟部門となっており、病床数は四百床(ICU・CCU十床を含む)。ユニークなのは病棟が三角形の形状で構成されていることで、この特徴を生かして入院患者の療養環境が快適なものとなるよう図られている。病棟は一看護単位三十三床で、一フロアに三看護単位の配置。全病床に占める個室率は四〇%で、最近の患者の個室化指向のニーズに対応している。多床室(四床室)の面積は一床あたり八平方メートルで、ベッド間に十分なゆとりを取っている。各病室ごとにトイレが配置され、個室にはシャワーも設置されている。廊下が片側廊下となることから、自然採光・換気が可能で、病棟全体に明るい雰囲気が醸し出されている。また、各階にシャワールーム、浴室が設けられている。ナースステーションは三角形の建物の各頂点、看護師が受け持つ病棟のほぼ中央に配置されており、患者とのコミュニケーションが取りやすくなっている。また、エレベーターコアからの渡り廊下の正面に配置されていることから、外部の訪問者の管理・対応の面でも申し分がない。
 病院内には健康医学センターも設けられた。病気の早期発見と予防を目的として最新の設備と専門医による総合健診を行う。人間ドックはスピーディーかつ快適に精密検査を受けられる日帰りドックと、より充実した精密検査をリラックスして受けられる一泊二日ドックの二タイプ。脳ドックメンタルヘルスなどのオプション検査も充実しており、加入者の健康づくりを支援する。同センターでは労働安全衛生法で義務づけられた定期健康診断も行う。検査内容は各学校の要望にも対応する。

病床数400、個室率40%
健康医学センター、ICU・CCU完備

 建物の概要を各階ごとに見ていくと、まず地下一階はリニアックなどの放射線治療部、薬剤部、給食部、中央材料室、エネルギーセンターなどを配置。健康医学センターの専門ドック部門もある。
 一階は、外来診療部、MRI・CTなどの設備が完備された放射線部、救急外来部、中央処理室、医事事務室、地域の病院・診療所と連携を深めるための地域連携室など。健康医学センターの受付、問診指導室も配置。
 二階は外来部門のほか、検査部門、リハビリテーション部門、透析部門、コンピューター室など。健康医学センターには人間ドックの諸検査室も配置。
 三階には日帰り手術を含む手術部門、ICU・CCUなどの救急病棟・集中治療センター、医局の管理部門がある。
 四階は分娩室、新生児室、LDRシステムを採り入れた病室を二室用意した産婦人科病棟がある。LDRとは、Labor‐Delivery‐Recoveryの頭三文字を取ったもの。陣痛から出産、回復までを一つの部屋でゆったりと過ごせるよう、部屋の構造や設備が工夫され、新しいタイプの分娩室となっている。このほか、プレイルームを完備した小児科病棟や一般病棟が配置され、小児科病棟の一部は六床室となっている。五階から七階までは病棟。八階には車いすのまま入浴できる介助浴室、展望浴室がある。屋上には屋上庭園を備えている。
 「患者中心の病院」という理想を体現した新病院に、私学事業団加入者、地域住民の期待は大きくふくらんでいる。

開院祝って盛大な披露会
國岡事業団理事長、浅田氏があいさつ

 三月十二日には東京臨海病院の開院を祝って、盛大に披露会が開かれた。國岡昭夫・私学事業団理事長は「医療をめぐる変化に対応し、良質な医療を提供してほしい。職員一入ひとりが病院の健全な運営のため、意識して行動してほしい。それが地域社会からの評価につながる。医療を扱うのは人であることに思いを致して、患者さん中心の医療に努めてほしい」とあいさつした。続いて、約二年の工期を経て病院が昨年十二月に完成したと工事経過の報告が行われ、病院の設計・建築に当たった関係各社への感謝状贈呈も行われた。
 披露会に続く祝賀会では、旧私立学校教職員共済組合の理事長を務めた浅田敏雄・東邦大学名誉学長が乾杯の音頭を取り、開院を祝った。
 浅田氏は「いま生活習慣病が増えているが、その予防のためにも努力してほしい」などと新病院への期待を述べた。














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