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記事2002年3月23日 号 (5面) 
企業トップインタビュー 教育はこれでよいのか
ダイヤル・サービス株式会社代表取締役社長 今野 由梨氏
「人間力」を育成
生きていく力と知恵 個性や異才を育てる教育

今野 由梨氏


 ダイヤル・サービス株式会社は昭和四十四年、日本で最初の電話秘書サービスや、電話による育児相談「赤ちゃん一一〇番」を開設、以来次々と新しい電話による情報サービスを展開し、総合情報サービス企業として成長を続けている。現在、同社が手がけている情報サービスは四十種類を超える。
 このニュービジネスでは女性ベンチャーの草分け的存在といえる今野氏は、「当時は情報という言葉すらまだ一般的ではなく、企業を興して十年間は、日本の社会が情報とあまりにもかけ離れていることを痛感し、毎日が啓蒙活動の日々だった」と当時を振り返る。
 「情報最後進国である日本社会との間のミスマッチが続いた」時期だった。
 この時代にはモノ・カネの万能主義時代で、情報・心・知恵といった形がないものに対しては価値が認められていなかった。
 大学卒業後はどこの企業を受けても不採用の連続だった。「女子という存在が日本の企業に眼中になかったということを徹底的に思い知らされた」。しかし、「十年後にはどんなことがあっても自立しようという」持ち前のパワーで、起業家への道は就職への道をすべて絶たれたときから始まった。
 今野氏の学校教育に対する考え方は厳しい。
 「英語教育、コンピュータ教育もこれからは重要だが、それ以前にどうしたら生きていく力と知恵を身につけるための『人間力』を持った子どもを育成することができるか、ということが大切です」
 昭和五十四年にスタートした「子ども一一〇番」では、主に小学生から高校生までのさまざまな悩みに対して相談に乗り、子どもたちの精神的な支えになっている。ここではいじめられて苦しんでいる子どもばかりではなく、いじめて苦しんでいる子どもからも相談が寄せられている。
 「『子ども一一〇番』に電話を掛けてくる子どもたちは『忙しい親は子どもとじっくりかかわる代わりに物やお金で片付ける』と言って親の心を見抜いている。これでは『人間力』を持った子どもは育ちません」と憂える。
 「学校では個性を育てる教育をしないで、“だれもが平等”という教育をしている。みんなが同じことを同じようにするという考え方は間違っていると思う。学校は子どもたちそれぞれの個性や異才を育て、しかもそれが等価値であることを教えるべきだ」
 今野氏は、長い人生の一時期に過ぎない子どもの時期は「人間力」をつくっていく基礎と位置付け、子どもは刻々と変化していく存在だという意識が学校にはないのではないか、と疑問を投げ掛ける。
 そして、「親は、『SOS』を発信している子どもに気付こうとしないし、子どもが荒れると怖がって遠ざかってしまっているのではないか。もっと(親として)エネルギーを使うべきだ」と訴える。
 企業の求める人材もこの「人間力」を総合的に発揮することのできる人を挙げる。
 「これからは自分のためではなく、自分の持っているものを多くの人たちにエネルギーとして還元していきたい」と今野氏は言う。
 家庭科が嫌いで教師のいうことを聞かず、徹底的に家庭科をサボったが、両親から「自分の自由を貫くために、人(先生)を泣かすのはよくない」と諭された。両親からは、分け与える体験、人からありがとうといわれる仕事をする喜びを教えられた。
 毎日“完全燃焼”を目指している今野氏の周りには、多くの起業家が集まっている。
 昭和五十四年、女性だけのシンクタンク生活科学研究所を設立、平成五年、財団法人2001年日本委員会理事長に就任。平成十年、世界の優秀女性起業家に贈られる「世界女性起業家賞」を受賞した。政府税制調査会をはじめ、各省の委員を歴任している。

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