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記事2002年3月23日 号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
法案化など提言内容具体化へ
中央教育審議会は三月に入っても積極的に審議を重ねており、教員免許制度の見直しなど審議の先行しているものは、答申がすでに出され、提言内容の具体化のための法案が国会に提出されている。今後国会を舞台に議論が展開される。

【教員養成部会】

教免法、公務員特例法改正案報告
10年経験者研修私学の扱いで質疑

 中央教育審議会初等中等教育分科会の教員養成部会は三月十一日、東京・虎ノ門の霞が関東京会館で第十六回部会を開いた。国公私立大学・短期大学・大学院などの教員養成課程の認定を行ったほか、二月二十一日に公表された答申「今後の教員免許制度の在り方について」の中間報告からの主な修正個所について報告があった。
 答申での修正個所は、更新制についての結論の文言を「現時点における制度上の制約などに加え、その政策的有効性についても十分検討を進めたが、導入にはなお慎重にならざるを得ない」としたこと、研修の際の「自己評価」に関する記述を追加したこと、新しい教員評価システムの導入に関して校長のマネジメント能力も外から評価されるとの記述を追加したことなどが、高倉翔部会長から報告された。
 また、答申の提言を踏まえ、教育職員免許法の一部を改正する法律案、教育公務員特例法の一部を改正する法律案の概要について文科省が説明。いずれも答申の提言を踏まえたもので、教免法改正案の概要は、各学校段階間の円滑化、小学校の専科指導の充実の観点から、他校種免許状による専科担任制度の拡充といった教員免許制度上の弾力的措置を講じ、教職経験を持つ人の隣接校種免許状取得の促進、優れた社会人の一層の登用を図るために特別免許状の授与要件の見直しと有効期限の撤廃を図るものだとした。また、教員に対する信頼の確保を図るために免許状の失効および取り上げに関する措置を強化すると説明。教育公務員特例法改正案には教職十年経験者研修の実施を盛り込んだとした。
 委員からは十年経験者研修の実施について、国公立の小中高校の教諭を対象に行うとなっているが「私学での教職経験も換算できないか。私学での十年経験者はどうするのか」との問題提起があった。文科省は「初任者研修は私学団体で行われているので、まず私学団体としてどうお考えになるのか。国公立とともに行うと考えられた場合は、私学にも参加を働きかけるよう、教委に検討を促していく」と答えた。
 また、特別免許状の活用状況が芳しくないとしたうえで「多様な方法で活性化を図るべきではないか。もう少し考え方を柔軟にして対応すべきだ」とする意見も出た。

【将来構想部会】

第三者評価義務づけ等めぐり論議
設置認可を弾力化
骨子案で意見集約に至らず

 大学の設置認可の望ましい在り方について審議している、中央教育審議会大学分科会の将来構想部会は三月十二日、東京・虎ノ門の文部科学省分館で第七回部会を開いた。
 文科省から骨子案「第三者評価制度の導入等による大学の教育研究の質の保証を図るためのシステムの構築について」が提示され、これに基づいて話し合った。部会としてこの日の部会で骨子案に関する意見集約を図ろうとしたが、機関別第三者評価の義務づけなどをめぐって合意をみるに至らず、あと一回部会を開くこととなった。
 文科省から提示のあった骨子案は、これまで将来構想部会、大学分科会で審議されていた「大学の質の保証に係るトータルシステムの構築について」と題する骨子案を手直ししたもの。大学設置後のチェック体制を整備するとともに設置認可の弾力化を図ろうというのが趣旨。
 国の設置認可の対象は大学の基本組織である学部の新設・改廃について行うことを原則とするが、学位を授与する課程としての同一性に着目して(1)現在、授与している学位の水準・分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は、学部など大学の基本組織の設置であっても国の認可は不要とし、届け出で足りるとする(2)新たな水準・分野の学位を授与するための組織改編の場合は、学部の学科の新設であっても新たな学位課程の新設として認可対象とする(3)短大の学科は認可の対象とするが、審査の手続きや内容の簡素化を図るとなっている。
 また、大学の教育研究活動の状況について、国の認証を受けた第三者(認証評価機関)が定期的に評価し、一定の基準に達しているかどうかチェック(適格認定)する、機関別第三者評価について各大学は認証評価機関による評価を受けることとする、と提言されている。

短大の学科改編弾力化必要

 部会では複数の委員から「短大の学科改編を弾力的に行えるようにすべきだ」との指摘があったほか、機関別第三者評価の義務づけをめぐっては「各大学がアクレディテーションを受ける環境をつくることが重要。義務化では評価を受けることが先行してしまう」「評価機関の認証を当初は国が行うことは仕方ないが、評価機関同士が切磋琢磨する状況が理想だ。無理に義務化することはどうか」などの意見が出された。
 また、骨子案では、首都圏、近畿圏、中部圏における工業(場)等制限区域・準制限区域内の大学の設置については抑制方針を撤廃する方向で検討すると提言されているが、これについても「撤廃方針は理解できるが、地方私学の倒産・閉鎖につながる事態も考えられる。国として地域的バランスを考えた高等教育の配分について検討する機会を設けるべきだ」との指摘も出た。

【大学分科会】

設置基準の改正など審議
大学院制度の整理求める声も

 中央教育審議会の大学分科会は三月七日、東京・一ツ橋の学術総合センターで第七回会合を開き、先に同審議会が取りまとめた答申「大学等における社会人受入れの推進方策について」を受けた大学設置基準などの改正について審議、文部科学省に答申した。中教審は二月二十一日に、大学が社会に開かれた機関として多様で柔軟な学習機会を提供するための具体的方策として、長期履修学生制度の導入、専門大学院一年制コースの制度化、通信制博士課程の制度化を打ち出していた。
 長期履修学生制度については大学設置基準、短期大学設置基準がいずれも改正されることになった。大学、短期大学は学生が修業年限を超えて一定の期間にわたり授業科目を計画的に履修することを認めることができるよう明確化した。通信制博士課程については大学院設置基準を改正。通信教育を行う課程として博士課程を追加した。
 専門大学院についても大学院設置基準の標準修業年限を一年以上二年未満とするよう改めた。

大学の質の保証めぐり審議

 文科省がまとめた骨子案「大学の質の保証に係るトータルシステムの構築について」の審議も行った。同案は大学設置後のチェック体制の整備と設置認可の弾力化を図ることによって、大学が事後チェックによって大学教育の質を確保しようというもの。第三者評価制度を導入し、国は適格認定のための第三者評価を実施する機関に機関認証基準を示し、認証申請のあった機関のうち基準を満たすものを第三者評価機関として認証することができるとしているが、委員からは「“認証”の定義は何か。民間の評価機関を認証することはデリケートに考えた方がよい」「専門大学院ができてまだ間もないのに、専門職大学院の創設が言われている。これは必要だが、大学院制度全体での関連をすっきりさせるべきだ」などの意見が出た。さらに設置認可の弾力化をめぐっては、短期大学の学科は学部に当たるとして「学科の速やかな転換が促せるような措置をお願いしたい」と要望する意見もあった。

国立大の独法化の審議報告

 このほか「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が最終報告に向けて取りまとめを進めている「新しい『国立大学法人』像について(案)」の報告が文科省からあった。昨年九月の中間報告と比較し、教学面の重要事項を審議する評議会(仮称)と並んで、経営面の重要事項を審議する運営評議会(同)を設け、そこに学外の有識者を参加させるとの提言や、法人化のメリットを最大限に生かし弾力的で多様な人事制度を実現する観点から、職員の身分は「非公務員型」を選択するとの提言がなされているなどと報告があった。
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