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記事2002年5月3日 号 (2面) 
新理事長に抱負を聞く 日本私立学校振興・共済事業団 理事長鳥居泰彦氏
教育制度は根本的に考え直す時期
就学人口激減問題教育界全体で検討必要
学校を育てる助成・融資を


 日本私立学校振興・共済事業団(=文部科学省所管の特殊法人、以下、私学事業団)の新理事長に四月一日、鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問が就任した。鳥居氏は慶應義塾塾長、全私学連合代表などを歴任、現在は文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会の会長を務めている。今回は私学振興への思いや政府による特殊法人見直しが進む中で私学事業団の将来像などを伺った。(編集部)

―新理事長としての抱負をお聞かせ下さい。
 鳥居理事長 この事業団は、日本の私立学校の振興という大きな目標のために活動を続けてきた日本私学振興財団と私立学校教職員共済組合の仕事を引き継ぎ、学校教育振興のため潤滑な公的な資金の供給を、助成金、融資という二つのパイプを通じて行い、また短期、長期の共済事業を行うことによって私立学校で働く人達の福祉の向上に努め、高齢化時代の中で在職中の健康の維持管理、福祉の向上、退職後の年金の確保といった大きな責任を負っている。この事業団の存在によって、私学の教育研究活動の振興と私学で働く人たちの福祉が支えられているということを社会の皆さんに理解をしてもらい、私学振興に努めたい。

―昨年十二月に策定された政府の「特殊法人等整理合理化計画」によると私学事業団については融資事業の縮小(民間金融機関への移譲等)や私大等補助金の一部を文部科学省による直接交付に切り替えるなどの方向が示されましたが、私学振興の後退の恐れは。
 鳥居理事長 国の私学助成金は総額で約四千五百億円。この金額自体が極めて不十分だと思う。国は公教育の一方の柱である私学を本気になって育てていくという観点から、私学助成の仕組みを抜本的に見直してほしい。少なくとも特殊法人の見直しで補助金の総額が縮小することはないと信じているし、文科省による直接交付も心配はないと思う。事務手続きの多くは、当事業団と共同作業的な側面を必要とすると思う。
 また融資事業は融資対象の学校法人の詳細な状況を掌握していないとできず、単なる金融業ではない。一般の融資業務とは違う。今後は、世界でもさすがといわれるような学校を育てるための助成活動、融資活動が必要だ。同時に学齢期の子どもが激減していく中で、一部の学校が定員を割り苦しい状況に陥っている。そうした問題は教育界全体として解決策を編み出さないといけない。

―そうした中で私学事業団は今後、コンサルタント機能を強化するべきだとお考えですか。 鳥居理事長 将来のことはこれから事業団の皆さん、私立学校の先生方と話し合い考えていきたい。もし当事業団がお役に立てることがあるとすれば、金銭的な学校経営支援だけでなく、新しい学校像、新しい時代を担う先生をどう育成し、力を結集していくか、青少年の中にどういう空気を醸し出していくかといったことなども含め、私学の方向を少しでも誘導できるコンサルティングでなければ意味がない。

―文科省が今年度から実施する「世界的教育研究拠点の形成のための重点的支援二十一世紀COEプログラム」では、私学事業団が審査・評価業務を行う委員会の運営を担当する日本学術振興会に協力することになりましたが、私学事業団が今後、第三者評価機関としての機能を持つお考えはありますか。
 鳥居理事長 何らかの評価活動を行うつもりは今の所ない。ただ融資活動、助成活動では大学を評価せざるを得ない。

―中央教育審議会では現在、教育振興基本計画を審議中です。その計画には私学教育をきちんと位置づけることが必要だと思うのですが。
 鳥居理事長 今の教育制度は米国を中心とする占領軍が原型を作り、それをいつまでも守ってきたもの。しかし社会は大きく変わった。もう根本的に考え直すべき時期といえる。そうなると国公私立の別をどう考えるのか。六・三・三・四制の仕組みをどうするのか。私学の立場を慮って下さいというだけでなく、教育界は国公私立の学校の併存状況をどう理解するのかについて、そろそろ国民によくわかる論を立てることが必要だ。
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