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全私学新聞

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記事2002年9月3日 1857号 (8面) 
私学における環境教育の現況
環境教育の取り組み富士見丘で研修会
地球と人類の共生テーマに
 学校が取り組むべき環境問題はさまざまだが、健康に害を及ぼすとされる空気中の化学物質を除去して学習環境を整えたり、生ごみを有機処理して排出量を抑え、生成物を再利用する試みが、私学の間でも広がりつつある。ここでは、学校での環境対策について関連の話題を集めた。

 東京私学教育研究所(堀一郎所長)は七月十六日、東京・笹塚の富士見丘中学・高等学校(吉田晋校長)で環境教育研究会「見学研修会」を実施した。当日は理科、家庭科、社会科担当などの教職員が集まり、同校を見学しながら環境教育についての取り組み方を学んだ。
 同校は十年前から「地球と人類の共生」という課題の下に“心の環境教育”に取り組んできた。
 平成十二年三月に創立六十周年を迎え、その記念事業の一環として校舎の全面建て替えを行い、四年の歳月をかけて十四年三月に新校舎を完成させた。地上六階、地下二階の新校舎は防災面とともに、「地球にやさしく、人にやさしい、わたくしたちの学校」をコンセプトに掲げ、環境面には最大限に配慮した。
 「学校を『おうち』とした理由は、生徒が一番長くいる所は学校で、ここを『おうち』と考えられないか、という考えからだった」(吉田校長)
 “心の教育”の最終目標は自分の考えをしっかりと主張できる知性と慈しみの心あふれる「国際性豊かな若き淑女(ヤングレディ)の育成」だ。
 同校は十三年八月二十四日、ISO(国際標準化機構)が定める環境マネジメントシステムISO14001(JISQ14001)規格の認証を取得した。認証取得に当たっては、学校が環境にどのように影響を及ぼしているかを全教職員が一年間測定し、日常的な学校生活の面で、環境教育をどのように実践していくかを考えるところから始まった。
 環境に配慮した施設・設備の多いのに驚かされる。特に水については、雨水を地下貯留ピットにため、浄化し、中水としてトイレの洗浄・植栽の散水に利用するシステムを設置しているほか、屋上の緑化や木製デッキの導入によって熱の吸収などにも配慮している。また、太陽光発電ユニット、風力発電ユニット、および生ゴミ再生処理機を設置、教材としての効果も上げている。生徒は具体的な行動で積極的に環境への配慮にかかわっている。紙のリサイクルを通じティッシュペーパー作り、家庭科の調理実習で発生した生ゴミを再生処理機でリサイクルし、再生たい肥としている。


【PL学園での実践】

生ごみを乾燥・減容
「ゴミナイスG」でリサイクル

 学校法人PL学園(大阪府富田林市)では、一昨年に「PL学園食堂」の施設を新築し、同時に生ごみ処理機を屋外に設け、生ごみを乾燥・減容処理している。生成された処理物は園芸などの土壌の改良に役立ち、多くの植栽や実習農園のある学園構内でのリサイクルがほぼ確立した。同校が導入したのは三洋電機株式会社(大阪府守口市)のバイオ式たい肥化タイプ「ゴミナイスG」(写真)で、生ごみ投入のサイクルをうまく調整し、一日当たりでは約百キログラム、連続投入が可能だという。
 「PL学園食堂」は多い時で約四百人の生徒、教職員ら学校関係者が昼食に利用し、入寮生や部活動の生徒は朝食、夜食にも利用している。一回の食事で平均三十三キログラムの生ゴミが発生し、それを食堂職員が機器に投入する。学内でイモ類やトウモロコシなどを育てる栽培実習を行っているため、処理物は主にそれらの土壌改良にあてる。PL学園本部総務課では「ホールチップの交換など設置後の消耗品の補充が不要なので、手間やコストがかからない点が導入の決め手になった。特にPL学園中学校では来年度から本格的に総合学習に取り組む計画なので、環境学習教材として利用する可能性もある」と話す。夜間を含め学期中は連日フル運転だが、これまで故障は一度もないという。





バイオ式たい肥化タイプ「ゴミナイスG」

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