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記事2002年9月3日 1857号 (7面) 
ユニーク教育 (109) ―― 桃山学院高等学校
男女共学の国際コースを新設
家庭での学習、職業意識高める


 桃山学院高等学校(石井陽三校長、大阪市阿倍野区)は今、進路指導部が中心となって、教育改革に取り組んでいる。
 同校は英国聖公会宣教協会から派遣された英国人宣教師たちが、明治十七年、男子教育のために設立し、今日まで百十八年の歴史を刻んでいる。キリスト教の精神に基づく人格教育を建学の精神に掲げ、自由を尊重する民主的な校風のなかで、自らの責任を自覚し、自主的な規律をつくって、これを遵守する良識ある若者を育てあげることが生徒指導の方針だ。
 同校の進めている教育改革は、新校舎(アンデレ館)が平成十三年三月に完成したのを契機に具体的に始まった。新校舎は大画面のディスプレイが設置された四十一の普通教室をはじめ、五百二十人が収容できる講堂、二つの大教室、視聴覚教室、各種特別教室、および図書館などの施設を持つ八階建ての、情報化・国際化に対応できる。
 同校では従来の英数、標準の二コースのほかに、十三年には男女共学の国際コース二クラス(クラスAとクラスB)を設置した。このコースでは、三十年に及ぶ米国姉妹校との一年間の交換留学で培った豊かな経験を生かし、多感な時期に海外で学習と生活を経験することによって、しっかりした語学力と国際感覚を身につけさせる方針だ。クラスAは二年生の夏期休暇中に約四週間、カナダへの短期語学留学を行い、クラスBは一年生の三学期一月下旬から一年間、カナダの公立高校に長期語学留学する。
 そもそも共学にしたのは、「本校の教育の基本方針が憲法、教育基本法、そしてキリスト教の精神に基づいて行われており、共学はこの三つの精神に支えられた教育にのっとっているからだ」(上田信夫・進路指導部長)。
 また、同校の方針としては、学校は生徒の将来の進路を見据え、大学入試などに対応できる授業にすること(授業中心主義)、そして、生徒には家庭での勉強の必要性を周知徹底させることだった。これは、将来の目標を持たないまま入学してくる生徒や、家庭での勉強の習慣が身についていない生徒が増えているからだ。上田部長は「授業に対して目標を持ち、将来に対する職業意識を植え付けさせたい。三年間で生徒が経験する行事などを通して、その意識を高めていく」と意気込みを示す。
 この方針の下では、生徒一人ひとりに対する進路指導はきめ細かくなる。生徒の進学目標に対する成績と全国レベルとの差などを教師がコンピュータで分析し、生徒に提示する。中間考査や期末考査に対しては、「学習と進路に関する意識を高めるシート」にどれだけ取り組んだか、科目のどこの部分が分からないのか、クラブ活動は参加したかなどを記入させる。これは教える側の反省材料にもなり、教師は生徒に早めに、しかも総合的にアドバイスできる利点を持つ。
 「この方式は詰め込み式の学習ではなく、授業の予習・復習をしっかりやることを通して、生徒一人ひとりの授業に対する意識を高め、考えさせる姿勢を身につけさせるのが狙いだ」(上田部長)。
 二学期の全国模試のあと、生徒、保護者、担任が記入する「進路・コミュニケーション・シート」は生徒一人ひとりのカルテとなって、一年から三年までその生徒の資料となっていく。十二月に行われる生徒、保護者、教師との三者面談はこれに基づいて行われる。
 同校の自主・自由な校風は、制服がないことにも表れている。これは生徒の自覚に裏付けられた自主的精神を最大限尊重した結果だ。この校風を十分に生かした教育の結果として、進学実績の向上を図る考えだ。


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