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記事2003年11月23日 1916号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 私大団体連が意見 適正な配置に配慮 財源措置も
留学生政策に私学関係意見
中間報告検討し年内には答申
海外研修制度の充実 日短協意見

【留学生部会】

 中央教育審議会大学分科会の留学生部会(部会長=木村孟、大学評価・学位授与機構長)は十一月十二日、東京・霞が関の経済産業省別館で第十三回の会合を行った。中間報告「新たな留学生政策の展開について」をもとにした答申案を改めて検討、了承し、部会を閉じた。今後は中教審大学分科会、総会に諮り、年内には答申する見通し。
 文科省では十月七日から中間報告をホームページなどで公表し、内容への意見を募集。留学生関係団体から四十五件、関係団体以外に個人二十四件、団体四十九件の意見を得た。具体的には、日本私立大学団体連合会は「国費留学生制度の見直しにあたっては、留学生の希望を重視して適正な配置に配慮すべきであり、そのための財源措置を講じるべきである」など、日本私立短期大学協会は「短期大学教員を対象とした海外研修制度の一層の充実」など、全国専修学校各種学校総連合会は「専門学校が留学生政策に果たしてきた役割を評価・検証し、大学との制度的格差を是正する必要性を明記すべき」などの意見を寄せている。
 中間報告への意見を取り入れた結果、答申案は質の向上などを強く意識した内容となり「学生数の確保という観点からのみ安易に留学生を受け入れることは、厳に慎むべきである」「関係省庁との連携の下、留学生の質の確保のための取組を強化すべきである」などの部分が加わった。
 同部会では、新たに加わった「留学生がアルバイトを希望する場合には、各大学等が適正なアルバイトのあっせんに関与するなど、留学生のアルバイト状況の把握に努めるべきである」などの部分を取り上げた。
 委員からは「アルバイトをすることが前提になっている。生活費のすべてを日本で稼ぐつもりの留学生を是認してよいのか」「アメリカに留学する場合は預金の残高を示すなど、自分で支弁する能力を証明しなければいけない。生活資金のない学生を受け入れて、支援することでよいのか」「生活が苦しければ、アルバイトに明け暮れて勉強がおろそかになる。悪い誘惑に負ける可能性もある」「安易に受け入れて犯罪が増えた場合には、留学生や外国人に対する悪いイメージが増す。外国との関係にも悪い影響がある」などと批判的な意見が多かった。
このほか「日本から外国へ留学する学生の質についても警告すべきだ」「机を並べる日本人学生の質が低ければ、留学生の質の向上もありえない」などと、日本の学生の質を問う意見もあった。
 同部会は新たな留学生政策について審議することを目的に平成十四年十二月に第一回の会合が始まった。今年十月七日に開いた中教審の総会で、河村文部科学大臣に中間報告を提出。今後は部会での意見をもとに答申案を見直し、大学分科会や中教審の総会に諮る。

教員組職の在り方 検討委初会合
座長に安西・慶應義塾長就任

【大学分科会】

 中央教育審議会大学分科会の「大学の教員組織の在り方に関する検討委員会」は十一月十三日、東京・霞が関の経済産業省別館で第一回の部会を開いた。座長に安西祐一郎・慶應義塾長を選任し、講座や学科目制などの教員組織、助手や助教授などの若手研究者の職務内容などについて自由討議を行った。
 大学の教員組織の在り方は学部と大学院に共通するため、各部会とは別に同委員会を設けて審議することとなった。具体的には▽大学の自主性や自立性の確保の観点からの教員組織の在り方(講座・学科目制など)▽助教授、助手などの若手研究者が独立して研究することもできるようにする観点からの職の在り方(職務内容など)――などを見直す。
 文部科学省では検討項目例として▽若手研究者がより独立して研究できるようにすべきだという各方面の指摘への対応▽助手の職務内容は設置者や分野によって多種多様である実態▽助手とほかの職やポストドクターとの関係▽法令上、大学に必置の職と、大学の判断にゆだねる職の範囲▽若手研究者の独立した活動を保証するため講座制の制約を排除すべきとの指摘――などを挙げた。
 委員からは「大学審議会のころからの懸案事項であり、よい意味で変えることが必要だ」「テニュア(終身在職権を持つ研究者の職位)を日本に導入するかどうかを検討する必要がある」「大学院修了後のプロセスをどうつくるのか」などの意見があった。
 また、助手については「海外の大学に推薦する場合は、アシスタント(助手)ではなく、『アシスタント・プロフェッサー』としている。アシスタントでは大学院の学生と認識され、対等な環境で研究できない」と、国際的な通用性を疑問視する意見があった。
 助手が学生を指導する実情は「専任の教授、助教授又は講師が担当する」(学科目制)、「専任の教授が担当する」(講座制)とする大学設置基準と異なっているという指摘や、「単純にポストドクターに置き換えることはできない」とする委員もいた。
 若手研究者が独自の研究を進めることができる理系とは異なり、人文系は長年にわたり積み上げていく分野であることから「フラットにしてしまっては、テーマの継承性が損なわれる」と危ぐする意見もあった。

委員、臨時委員、専門委員あわせて19人

 大学分科会の「大学の教員組織の在り方に関する検討委員会」の委員は次のとおり。
 ▼委員=黒田玲子・東京大学教授・東京大学総長特任補佐、中嶋嶺雄・アジア太平洋大学交流機構(UMAP)国際事務総長・北九州市立大学大学院教授
 ▼臨時委員=天野郁夫・国立学校財務センター研究部長、安西祐一郎・慶應義塾長、生駒俊明・一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授、井村裕夫・総合科学技術会議議員、荻上紘一・大学評価・学位授与機構教授、野依良治・独立行政法人理化学研究所理事長
 ▼専門委員=伊藤文雄・青山学院大学大学院国際マネジメント研究科長、岩田啓靖・山口県立大学長、川村正幸・一橋大学副学長、小野田武・日本大学総合科学研究所教授、鈴木昭憲・秋田県立大学長、鈴木典比古・国際基督教大学学務副学長、福田康一郎・千葉大学医学部長、堀江孝至・日本大学医学部長、森脇道子・産能短期大学長、山本眞一・筑波大学大学研究センター長、四ツ柳隆夫・宮城工業高等専門学校長
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