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記事2003年4月13日 1886号 (5面) 
平成15年度 首都圏高校入試の特徴と総括
絶対評価で内申バブル
内申書の情報補う対抗策に併願推薦や適性検査

【東京】


 都立高校では絶対評価のほかに学区制の廃止、自己PRカードの導入、入試問題自校作成校の増加など、大幅な入試改革が進み激動した年だった。
 学区制撤廃では、都立高校は従来五〇%に抑えていた他学区からの入学者限度枠が今春から撤廃され住所に関係なくどの高校でも受験できるようになったため、大学進学実績のある人気校には学力のある志願者が集まり他学区からの出願が八〇%になった高校もある。都立高校の推薦入試は過去最高の三・四二倍(前年比〇・六六ポイント増加)となった。
 一般入試の志願者は四七、〇〇〇人余りで最終倍率は一・四五倍と前年を〇・〇三ポイント上回り、八年ぶりに上昇に転じた。学区制を撤廃して初の入試で旧他学区から受験したものは九、三二〇人で全体に占める割合は二六・一%(前年比九・七ポイント増)だった。入試の自校作成校は昨年の日比谷、西の二校に加えて戸山、新宿、八王子東、国分寺の四校が参入して六校となり、これらの高校では学力の高い生徒を選ぶために英数国三教科の入試問題を自校で作成した。日比谷、西、青山、立川は単独選抜になってから最高の倍率を記録した。こうした改革によって、まず都立高校が人気校とそれ以外とに分かれる格差がついた。
 自己PRカードは受験生が学校生活で取り組んできたことやその成果を自分でPRする制度で、各校で一〇〇〜二〇〇点に点数化して換算され、学力試験と調査書を合わせた一、〇〇〇点に加えて推薦入試、一般入試ともに評価されることになった。これは大学進学実績をあまり売り物にできない学校の魅力づくりにされる一面もある。
 一方、都内の私立高校も推薦入試などを中心に絶対評価対策を実施した高校が多い。推薦入試では森上教育研究所が都内私立推薦実施校一八〇校にアンケートして調査したところでは、推薦応募者は前年比約二、九〇〇人増加したが、「適性検査でいままでにない低い点数をとる受験生が出てきた」など、応募者を増やした原因が絶対評価によるインフレであることを懸念する学校が多かった。これまで推薦入試に適性検査(学力検査)をしていなかったが、今春から適性検査をあらたに導入した学校は國學院大學久我山、国士舘、駒込、淑徳巣鴨、中央大学附属、帝京、東京電機大学、東洋女子、日本大学第一、日本大学豊山、富士見、明法など、また適性検査を一部実施から全面実施へ切り替えたところは武蔵野女子学院、安田学園などである。また共立女子第二、錦城学園、自由ヶ丘学園、大成、帝京、東京家政大学附属女子、東京純心女子、東洋女子、宝仙学園、明法などは併願可能なB推薦を導入した。
 推薦入試では応募者を大幅に増やした学校と減らした学校とがあり、一律ではない。中央大学附属は前年まで九科三七という基準があったが、この基準を撤廃し適性試験を実施した。基準がなくなってだれでも受験できるようになり、単願推薦のみで男子五〇二人(前年比三六三人増)、女子は四三六人(二一八人増)の応募者と大幅増だった。豊島学院、駒込、専修大学附属、大東文化第一、郁文館、東京家政大学附属女子、日大第三、中大杉並、文華女子、青山学院、国士舘、駒場学園も大幅に増加した。
 都内私立高校の一般入試は二月十日が初日だが、上位校を中心に五〇%が初日試験を実施した。初日には第一志望が集まり、二日目以降は併願受験が中心になるが、少子化時代が進行する中で、少しでも早く生徒を確保したいという気持ちはどこも強く、推薦入試の募集枠を広げることと、一般入試の初日試験を実施することで、第一志望の生徒を早く確保しようとする動きが強まった。
 絶対評価インフレで都立上位校への応募者が増えれば不合格者が増えるわけで、その分、私学の一般入試合格者の歩留りはよくなったようである。

受験機会が複数化 併願可能な推薦や自己推薦導入増

【神奈川】

 神奈川県立高校で推薦入学を実施したのは、前年度より四一校多い一五七校。受験者二九、九一一人に対して一一、二六二人が合格した。平均競争率は二・六六倍(前年比〇・三一ポイント増)。一般入試でも「昨年公立高校入試で定時制が全日制を上回る高志願率になった事態を回避するため」と称して、県教委が少子化に逆行する募集定員大幅増を強行した結果、県立と市立の全日制合計一七五校の第一、第二志望合わせて三一、二八四人の募集人員となった。これに対し出願者は四〇、七〇八人で平均競争率一・三〇倍(前年比〇・〇五ポイント増)となった。
 こうした公立の入試戦略に対して、私学側は推薦入試が公立の推薦と期日が重なることへの対策として二回推薦入試を行うなど、工夫をこらしているものの、いささか苦しい戦いになっている。推薦入試応募者数が前年比で二桁以上伸びたところは推薦初導入の慶應義塾のほか麻布大学附属渕野辺、湘南学院など一四校に対し、二桁以上減ったところは一七校。一般入試では男子校から共学校へ移行した横浜商科大学(九三六人増)など一七校が応募者数を二桁以上伸ばしたのに対し、逆に二桁以上応募者数を減らしたところは三三校となっている。

【千葉】

 千葉県の公立高校では今春から従来の推薦入試に変わるものとして、志望理由書に生徒本人が記入して自己推薦する特色化選抜を実施したが、平均倍率二・五九倍と前年度の一・四九倍を大幅に上回った。従来の推薦入試に必要だった校長の推薦が不要になったことで、公立校進学希望者の八六%がこの特色化選抜を希望、二月二十六日に実施する通常の一般入試と合わせて事実上受験機会が複数化された。
 これに対して私学側は対抗策として、併願可能な推薦や自己推薦を導入する学校が増えてきた。西武台千葉、千葉国際、千葉萌陽、麗澤などが併願可能な自己推薦、国府台女子学院は併願推薦の対象者を英語科のみから普通科と英語科へ拡大した。自己推薦導入は聖徳大学附属、芝浦工業大学柏、千葉日本大学第一、千葉商科大学付属、千葉明徳、東葉、専修大学松戸など。専修大学松戸は併願自己推薦導入などで推薦応募者を六二〇人増やしたほか、一般入試を再度受験する連続受験生には優遇措置を設けたことも応募者増につながった。こうした努力で千葉県内の私学の推薦入試応募者の増減を総計すると約八、二〇〇人の増加となった。中でも数百人規模の応募者増となったところは併願推薦導入校に多いのが目立つ。木更津中央と清和女子短期大学附属が統合して生まれた木更津総合は二、〇八一人と順調なスタート。

埼玉県内の私立高全校が推薦入試導入

【埼玉】

 埼玉県内の公立高校の推薦入試と芸術系学科前期募集の合計志願倍率は二・六七倍(前年比〇・一五ポイント増)に上昇した。一般入試は志願倍率一・二五倍で前年の一・二三倍をわずかに上回った。私立高校の募集校は男子七、女子六、共学三四の合計四七校で募集人員合計は一七、三三四人と昨年より五一〇人減った。募集を減らしたのは立教新座、淑徳与野、小松原女子、正智深谷、小松原、大妻嵐山、春日部共栄の七校。進学選抜などのコース制で幅広い層から集めた小松原女子は推薦で三二〇人応募者増、小松原も推薦で二二六人の応募者増。一般入試の応募者減を埋めて上乗せした。東邦音楽大学附属東邦第二と星野は女子校から共学校へ移行した。慶應義塾志木は自己推薦入試を四〇人枠で導入、一五八人の応募者があったが、一般入試で四〇人減らした。これで埼玉県内の私立高校で推薦を実施しない高校はなくなった。早稲田大学本庄は一般入試の帰国生入試の枠を一〇人減らし、その分を推薦で帰国生対象のAO入試へ振り向けた。一般入試の応募は六〇人増だが、例年出していなかった繰り上げ合格を今春は出した。埼玉では全般に入試日程を前倒しする学校が多く、浦和ルーテル学院、大妻嵐山、開智、正智深谷、栄北、西武台、獨協埼玉、東野、本庄東などが一般入試初日の二月一日へ移動した。
 入試回数を増やしたのは秋草学園、浦和学院、国際学院、小松原、本庄第一など。浦和明の星は今春から延納金なしで公立の発表まで待つことにしたのが好感をもたれて一般入試応募者を二三五人増やした。東野は併願推薦の基準を一ポイント下げたら併願受験の比率がますます高まった。併願の場合都内生の歩留りはよかったが、県内生は県立で決まる生徒が多く歩留りはあまりよくなかった。国際学院は推薦で入試日程を一回増やし七五人の増。
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