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記事2003年4月13日 1886号 (4面) 
法科大学院の取り組みを聞く (2)
中央大学法学部部長 永井 和之氏
総合病院のような法科大学院を

中央大学
法学部長
永井和之氏

  中央大学は英吉利法律学校として一八八五年 (明治十八年)、東京神田錦町に創立され、これまで四千人を超える法曹を輩出しており、“法科の中央”“中央の法科”の伝統は脈々と受け継がれている。同大学では、二〇〇四年四月から入学定員三百人の法科大学院を東京・市ヶ谷キャンパスに開校することを目指し、その実現に向けて高いレベルの教育機関としての法科大学院を構築するため準備が着々と進められている。中央大学法学部の永井和之法学部長と、法科大学院開設準備室副室長の大村雅彦法学部教授に法科大学院の取り組み方を伺った。


国際的ビジネス法に強い法曹 公共政策ロイヤー育成

―中央大学法科大学院はどのような法曹養成を目指しますか。

永井法学部長 一つには、中央大学における英米法研究の伝統と社会的な要請に鑑(かんが)みて、国際的なビジネス法関係に強い法曹を養成します。二つ目は国際機関をはじめ、政府の機関、地方自治体など公共政策にかかわる分野で、立案から遂行に至るまでにおいて活躍できる法曹(公共政策ロイヤー)を育成したいと思っています。

―中央大学では規模の大きい法科大学院をお考えのようですが、この点でどのような法科大学院になるのでしょうか。

法学部長 本学が考えているような法科大学院の規模になりますと、一つの分野に特化するような法曹の養成を考えてはいません。将来的には法科大学院を卒業して毎年三千人規模で法曹(裁判官、検察官、弁護士)が増えていきますので、実際には多様な分野での専門知識を身につけた法曹を輩出することが大事だと思います。いわば総合病院のような法科大学院を考えていますが、法曹資格を取得した上で、先ほど申しましたような国際的なビジネス法関係に強い法曹と公共政策に携わることのできる法曹養成を考えたいのです。
 例えば、本学には「大学院国際会計研究科」(二〇〇二年四月開校)がありますが、こことリンケージさせれば知的財産、会計、税務、ファイナンス関係に強いロイヤーを養成することもできます。

―法学部の改革はどのような状況ですか。

法学部長 法学部の出口の問題として、法科大学院へ進学する場合と、それとは別に法学部を卒業してかなりの学生が社会に出ていくことになります。これをどのように社会的に位置付けるのかという重要な問題があります。根本的には、法律を一部の法曹が独占している社会がいいのか、または法学部を卒業後社会に出た人たちも役割を持って働くことができる社会が健全なのか、という問題です。私は将来を見据え、法律がどのような機能を有し、役割を果たすのかなど批判的な考え方ができる能力を身につけるのが、法学部を出て社会で働く者の役割であると考えています。このように考えれば、世界的視野を持った、骨太の法学部を考えています。

―具体的には、どのようなことをお考えですか。

法学部長 世界的に通用する学生ということを考えれば、語学教育を重視していきます。まず、一年から四年まで目的別能力別にクラス編成をして、基礎知識からTOEIC試験で高得点を得られるレベルにまでします。一年でTOEIC試験を受験することを義務付けるようにすることも考えています。四年では原語で行われる専門教育の授業についていけるような実力をつけさせます。このように“語学に強い中央”を目指します。
 教養という面から考えると、一つには選択の幅を広げるために他学部講座を履修できるようにすることと、もう一つは学生の将来につながるような、教養と専門が融合するようなシステムも考えています。このように横と縦の関係を組み合わせるとともに、それが基礎・発展・展開とつながるようにしたいのです。
 一年生の授業がたいへん重要と考え、教養演習を義務付けることも考えています。調査し、読む・書く・話すという基礎能力を徹底して、「学ぶ」ということを教えたい。本学ではこのように法学部の改革をすることによって必然的に少人数教育にならざるを得ないのです。そして、本学の教育に耐えられる学生を育てていかなければなりません。やる気を出し積極的にプランニングをする学生を十分支援するために奨学金も考えています。そのためにも学生にさまざまな情報を与えるセンターもあります。学生の入り口から出口まで一貫した教育を行っていくつもりです。


少人数で密度の濃い授業 実務に即した学修を検討
 
―法科大学院のカリキュラム上での特色はどのようなものになりまずか。

大村教授 カリキュラムは、(1)法律基本科目群(2)実務基礎科目群(3)基礎法学・隣接科目群(4)展開・先端科目群に区分され、それぞれ科目を設置しております。(1)公法、民事法、刑事法などを学び、五十人規模の少人数クラスで双方向的な密度の濃い授業を行います。(2)実務基礎科目群では、教室内での授業に加え、付設のロー・ファームでの法律相談業務や提携法律事務所での研修を実施するなど実務に即した学修ができるよう検討を進めています。また中央大学法曹会の協力により、外部の法律事務所で入門的な実務研修を行うエクスターンシップも考えています。(3)基礎法学・隣接科目群の中には「アメリカ公法」「アメリカ私法」など英米法関係の科目を組み入れる予定です。(4)本学の特徴が最もよく出ている展開・先端科目群では「知的財産法」「IT社会と法」「ビジネス法務戦略」など社会の最先端の状況やニーズを反映した科目を学びます。

―法科大学院の定員および社会人・法学部以外の学生・他大学出身者の割合はどうですか。

大村教授 入学定員は三百人を予定していますが、このうち法学既修者は二百人、法学未修者は百人です。法科大学院は三年(法学未修者)が標準ですが、入学段階で法律科目等の試験によって一年次に履修すべき法律科目の履修を免除される場合(法学既修者)は、二年次からの科目を履修すればよいので、二年で修了できることになります。社会人・他大学出身者は三割程度を目標としております。

―専任教員・実務家教員の割合はどうなりますか。

大村教授 専任教員は六十数名になる予定です。実務家教員は十七、八人になると思います。

―授業料はどのくらいになりますか。

大村教授 少人数教育が基本ですので、学部の授業料と比べると高額が予想されますが、二百万円まではいかないようにと考えています。支払方法や本学独自の奨学金など、学生に対する支援を充実させるように検討中です。

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