こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2003年4月13日号二ュース >> VIEW

記事2003年4月13日 1886号 (3面) 
私学振興を協議した中高連合同会議
教育改革に私学の要望協力に推進

堀越会長

  日本私立中学高等学校連合会(堀越克明会長=堀越高校長)は三月十一日、東京・市ヶ谷の私学会館で全国理事会・全国評議員会合同会議を開き、平成十五年度の事業計画、同収支予算等を決めた。新年度の事業計画は、前年度までと同様、文部科学省の私立高等学校等経常費助成費補助金の増額、地方交付税による財源措置の増額、私学振興につながる税制改正の実現等を最重要課題としたものだが、同時に喫緊の課題といえる、中央教育審議会による「教育振興基本計画」の具体的施策作り、全国的な広がりを続けている公立中高一貫教育、株式会社による学校経営の解禁に代表される規制改革等に対し、私学の主張を積極的に表明し、その実現を目指す方針。また目まぐるしい勢いで進展する教育改革に私学の要望を反映するよう努めていくほか、そうした社会変化にこれまで以上に迅速に対応できるよう組織の在り方も見直していく。ここでは同連合会の平成十五年度事業計画のポイントを報告する。(編集部)


【私学教育の振興充実へ】

私学補助拡充、税制の優遇措置
教育振興基本計画への対応


 文部科学省の「私立高等学校等経常費助成費補助金」については、平成十五年度政府予算で私学関係者が長年の目標としていた一千億円台(一千一億五千万円)が実現した。十六年度に関してもさらに充実を目指すが、政府の財政事情は依然厳しく、景気回復の兆しも見えず、しかも長年の目標達成の翌年といったことを考えると、今年度の私学振興対策は前年度にも増して厳しいといえる。
 経常費補助以外では、理科教育、産業教育、定時制通信制教育等、教育条件の改善充実に要する補助金の充実、全私学に共通する日本私立学校振興・共済事業団の出資金などと長期給付に対する補助金の維持・充実を図る。また激甚災害・老朽校舎の改築等に対する公立学校と同等の補助金の確保を図る。また税制面では学校法人に対する優遇措置の維持、拡大、私立学校生徒の保護者の教育費負担軽減を目指す。各都道府県の私学振興運動についても積極的に支援し、私学関係予算の増額を目指す。私学助成の在り方は、私学助成専門部会等が検討する。
 最近の国公立中学高校一貫教育の全国的な広がりに関しては、国公立校と私立校との授業料等が極端に違う中では、国公立一貫校は私学の大きな脅威となるため、その動向を注視、必要に応じて意見表明などを通じて、公私間の競争条件があまりにも違う点などをアピールし、より適切な競争条件の実現を目指す。公立の中高一貫教育校は平成十四年度までに五十校が設置されたが、十五年度には三十校増加。しかもなかには市立にもかかわらず生徒募集を全国的に行おうとする一貫校も登場し、学校の形態が私学に近づきつつある。また十六年度以降もこれまでに分かっているだけで三十八校の公立一貫校が設置される予定。
 さらに教育特区でも一貫教育の試みが始まる予定。国公立の一貫教育問題は、主に中学校部会が対応する。
 教育特区に関しては、株式会社やNPO法人による学校(一条校)の設置・運営について文部科学省は条件付きながら容認する方針を先に明らかにしたが、この日の合同会議では、同省の久保公人・私学行政課長が株式会社等による学校設置の要件等を説明した。
 それによると、株式会社による学校設置は、地域の特性を生かした教育の実施の必要性、地域産業を担う人材の育成の必要性などの特別なニーズがある場合が対象で、設置できる校種は幼稚園から大学まで。学校の経営に必要な財産を有すること、学校の経営を担当する役員が学校を経営するために必要な知識または経験を有すること、役員が社会的信望を有することを要件としている。
 そのほか業務・財務情報の公開、特区認定を受けた地方自治体のセーフティーネット構築(学校が破(は)綻(たん)した場合の)などが課される。ただし私立学校法と私立学校振興助成法は対象外。
 一方、NPO法人による学校設置に関しては、不登校児童生徒、学習障害(LD)・注意欠陥/多動性障害(ADHD)のある児童生徒を対象とした「特別なニーズ」がある場合に認めることにしており、校種も幼稚園から高校までの限定。また要件は、株式会社の場合の内容に加えて不登校児童生徒等を対象とした活動実績を求めており、新規参入は認められない。ただし今後、学校法人になるための“ハードル”が下がると学校法人化するNPOの増加が予想される。また文部科学省が不登校児等の適応指導教室のNPOへの委託を進めていくことから、NPOのクラスに在籍しながら中学校等の卒業資格が与えられることになるという。
 しかしこの問題は、改めて政府の総合規制改革会議で取り上げられる予定で、現在は認めていない株式会社立学校等への私学助成の問題についても再燃は必至の状況。
 このほか私学審議会の在り方の見直し、学校法人制度の改善の動向なども当面の課題だ。

【調査および研究等事業】

教育基本法へ私学の位置づけ
規制改革、生徒収容対策も


 調査部会では、前年度と同様、中学高校の実態調査、都道府県私学助成状況調査とそれらの報告書の作成、名簿の作成などを進める。
 法令等検討委員会は、中央教育審議会や中教審答申を受け教育基本法の見直し作業を進めている文部科学省の動向等を注視しながら、教育基本法における私学の位置づけをより確かなものとすること、今後、同審議会の各分科会等で検討される「教育振興基本計画」に盛り込むべき重点施策にこれまで以上に充実した私学振興策が盛り込まれるよう同審議会等への働きかけを行っていく。
 このほか文部科学省が進める教育改革や政府の規制改革の検討、必要に応じて要望書の作成等も行う。私学助成の在り方なども検討する。
 生徒収容対策委員会では就学人口の減少が続く中で、公私立高等学校協議会の運営に関する事項や長期的な生徒減少に対応した生徒募集に関する基本方針の検討などを進める。
 定時制振興対策委員会、通信制対策委員会も当面の課題に取り組む。諸外国との教育の交流と情報交換(国際部会)に関しては、前年度をほぼ踏襲した内容の事業を行っていくが、このうち環太平洋私学教育連合会(PAPE)に関しては総会の運営の在り方を見直していく。
 広報活動(広報部会)に関しては、マスコミへの広報活動、機関紙「私学時報」の発行などを続けていく。学校教育および私学経営に関する調査研究、研修活動については、前年度までと同様、財団法人日本私学教育研究所に全面的に委託して実施する。

合同会議では株式会社の教育参入問題なども協議

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞