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記事2003年6月13日 1892号 (8面) 
ユニーク教育 (119) ―― 目白学園中学校・高等学校
ボランティアクラブが活躍
脳関連障害者への支援
  目白学園中学校・高等学校(松本逸也校長、東京都新宿区)のボランティア部は平成八年に設立された。設立のきっかけは、吹田克也教諭の高校二年現代文の授業で「風の学校」という教材を扱ったことだった。八十一歳の老人が開発途上国で井戸掘りの技術をボランティアで教えているという話だった。
  「生徒たちにこの話について感想を書いてもらったところ、予想以上にボランティアに関心を持っていることが分かった」(吹田教諭)。
 ボランティア部はボランティア体験学習を中心に活動を始めていたが、一年ほどしてボランティアクラブに大きな転機が訪れた。国際的な民間の奉仕団体であるパイロットインターナショナルの青少年版クラブ、アンカークラブとして認証されたことだった。
 パイロットインターナショナルとは一九二一年アメリカで、友情と奉仕によって世界平和のパイロット(水先案内人)になろうという趣旨で働く女性たちによって設立されたもの。日本で東京パイロットクラブができたのが一九五一年。その青少年版であるアンカークラブは世界で三百クラブ、約一万人が活動しているが、同校では平成九年三月十九日に桜東京パイロットクラブをスポンサーとし、「東京目白アンカークラブ」として認証されたのだ。日本では四番目、高校生のクラブとしては日本で初めての誕生となった。
 「全クラブの奉仕の焦点は脳関連障害者に対する支援になっていますが、生徒の活動はさまざまな範囲に及んでいます」(吹田教諭=ファカルティアドバイザー)。
 車いす体験講座・ガイドヘルプ体験講座・福祉機器センター見学・盲導犬訓練センター見学などの体験学習をはじめ、老人施設や養護施設への訪問も行っている。この二年間の主な活動をみると――。
 老人施設である社会福祉法人「恵林」では、入居者と一緒に食事をし、体操やボールを使った遊びをしたり、歌を歌ったりした。「一人ひとりにぬいぐるみをプレゼントしました。皆さん泣いて喜んでくださり、私たちも感激しました」と、生徒は感想を述べている。
 上野の献血ルームでは、献血者の呼び込みや献血ルーム内でデータの管理や案内などの手伝いをした。生徒は「献血にこられる方が、思っていたより多い」のに気づいた。
 昨年七月八日から十五日間、カナダ・オンタリオ州のトロントで開催された「第八十一回PIコンベンショントロント大会」に同クラブの代表メンバーが出席した。この大会では、主にリーダーシップについて学ぶワークショップが「一番勉強になった」と言う。リーダーシップはアンカーの役員として覚えておく必要があるからだ。
 毎年十二月には恒例となっている、桜東京パイロットクラブ主催の中央愛児園での歌のキャラバンに参加している。クリスマスにちなんで子供たちに歌と踊りをプレゼントする。ここでは「脳に障害を持った子供の教育・訓練だけではなく、そのような子供を抱えた母親たちの心のケアもしていること」を知った。
 「生徒は『ボランティアとは人に何かを与えることではなく、自分が多くのものを与えられるのだ』と実感しているようです」と吹田教諭は指摘した上で、「生徒たちは生かされ、そして強いものが弱いものではなく、どのような立場にあっても、共に生きていくということを、身をもって知ると思います」と。同クラブの歴代会長五人のうち、三人は大学の福祉関係の学部に進学している。六月二十一日、東京・四谷の四谷区民ホールで、脳外傷とその後遺症に悩む方々の支援のために「2003 Pilotシンポジウム」が開催される。「東京目白アンカークラブ」の生徒たちは、プロローグで脳を守ることを呼びかける寸劇を披露する。

施設訪問で交流を深める

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