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記事2003年7月13日 1898号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
生涯発達の視点重視
グランドデザインに社会的観点を
  中央教育審議会の大学分科会(分科会長=佐々木毅・東京大学学長)は六月十九日に経済産業省別館で、また二十五日には文部科学省別館でそれぞれ分科会を開き、今後の高等教育のグランドデザイン(将来構想)について、主に高等教育制度のなかの大学学部の在り方を中心に審議した。

【大学分科会】

 審議は自由討議の形で進められ、学部の在り方については、「分野にもよるが大学と大学院の一貫教育について議論すべきだ」「実務教育を重点としている今の大学学部教育は専門学校とどう違うのか、大卒者の基礎教養とは一体何なのか」、などの意見が出され、これに対し、「学部教育での教養教育をより密度の濃いものにすべきだ」「ものの考え方といった基本的なことをしっかりと教えるべきだ」「真の教養教育のためには、きちんとした共通卒業試験のようなものが必要だ」などの意見が出された。また、「グランドデザインを考える際、大学院問題に着手した大学が、学部の在り方をきちんと考えていないことは問題である」との指摘もあった。
 短期大学の在り方については、「二十一世紀は知の時代であることは確かで、生涯教育は重要な課題である」との指摘があり、そのうえで、「短大の位置づけや教育内容について議論すべきだ」「女性教育という視点を大切にすべきだ」「大学の本質から言えば普遍化、脱地域となるが、短大における地域との関係、貢献の在り方を検討すべきだ」などの意見があった。これに付随し、生涯学習については、「一度社会に出た人が、いずれまた学びたくなる時期が来るはずで、いつでも大学に行きたいときに行けるシステムが必要。そのためにも、短大、大学、専門学校などが協力すべきだ」との意見もあった。
 また将来構想全体としては、「グランドデザインの検討には人間の『生涯発達』の視点を重視すべきだ。何を教えるかが問題なのではない。個々人ひとりひとりがもつ能力や可能性を見つけながら、どうやってその人の内在的なものを引き出していくかが問題で、それを基本に、大局的な構想を考えるべきだ」との意見や、「大学が一生懸命でも、企業の考え方や社会の意識が変わらなければ、何も変わらない。社会的な観点が出てくれば、グランドデザインの考え方も変わってくるのではないか」との指摘もあった。
 このほか、社会的問題となっている昨今の学生の在り方をめぐっては、「学生に甘えの構造がある。例えば全寮制の学部を制度的に作るなどしてその構造を断ち切るべきだ」「合宿などを通じて学生の意識を変えることは可能で、実際効果もあるが、親や社会の意識を変えなければ、現実に実行するのは難しい。無駄な時間かもしれないが、今やらなければたいへんな時代になる」などの意見があった。
 これらの討議を受け工藤智規・文部科学審議官は、「グランドデザインというのは、ひとによって印象がずいぶん違う。実現が早期には難しいものでも、広い視野で発言、議論してほしい」と述べた。佐々木分科会長は、次回の審議ではグランドデザインの論点を整理、近く方針をまとめたいとの考えを示した。

食に関する教育で意見聴取
学校栄養職員の実態で報告も


【食に関する指導部会】

 中央教育審議会スポーツ・青少年分科会の「食に関する指導体制部会」は七月七日、東京都内の会館で第二回会合を開き、上原正子・愛知県教育委員会健康学習課主任主査から「学校栄養職員の職務の実態」を、また香川靖雄・女子栄養大学副学長から「食に関する教育」に対する考えを聴取した。食に関する指導体制を整備していくに当たって現状等に対する理解を深めるため関係者から実情や意見を聞いたもの。両氏とも学校内での食に関する指導充実のための課題となっている「栄養教諭」(仮称)の創設に関しては積極的推進を要請した。七月十八日の次回会合では、審議のタタキ台となる骨子案が提案される。このうち上原主任主査は、献立作りの重要性はもちろんのこと、地域や子供の実態を把握することが重要で、食物アレルギーへの対応も重要な課題となっており、献立がしっかりしたものでないと、食に関する指導は難しいとした。また担任とのTT(ティーム・ティーチング)授業等も行っているが、栄養教諭として学校(教員)の中で声を上げた方が受け入られやすいとした。一方、香川副学長は、病気にかかる前に予防に力を注ぐことが重要で、そうしたことが我が国の医療費の抑制にもつながること、学校給食が子供の健康を守る砦となっていることなどを強調、そのためにも栄養教諭の本格導入を求めた。ただし学校給食だけで子供の健康を守ることが難しいのも事実で、東北や北関東地域では減塩すると給食の残食が増えてしまう例などを挙げた。また栄養教諭になるためには教育面のトレーニングが必要とした。意見発表や実情報告に委員からは、生活習慣病に関係する事項等については養護教諭が指導している事例や調理師が食の指導を行っている事例等が報告された。「養護教諭と同じような形で専門家(栄養士)を活用してほしい」との意見も聞かれた。
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