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記事2003年9月23日 1904号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
小中学生望む習熟度別指導
栄養教諭の創設みとめる 整備計画検討が必要との声も
中教審総会
  中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、九月十日、東京・千代田区のグランドアーク半蔵門で第三十二回総会を開き、スポーツ・青少年分科会が先にまとめた中間報告案「食に関する指導体制の整備について」を検討し、了承した。「中間報告」はその場で遠山敦子・文部科学大臣(当時)に手渡された。「中間報告」は学校等での食指導体制の充実に向け新たに「栄養教諭」を創設するもの。総会では「(栄養教諭の創設は)教育課程部会や教員養成部会とも関連する。もう少し大きな枠組みが必要だ。最終答申する前には一歩前進するような取りまとめをお願いしたい」「栄養教諭の整備計画を中間報告後に議論してほしい」「栄養教諭に関して総合プランができていないと隘(あい)路(ろ)に陥る」といった意見の一方で、教科の教員の配置の必要性を訴える現場校長の意見も聞かれた。
 また教育課程部会が八月七日にまとめた審議の中間まとめ「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」が報告され、これも大筋で了承された。この審議の中間まとめは、学習指導要領が最低基準であることを明確化することや、個に応じた指導の一層の充実、必要な指導時間の確保などを提言したもので、平成十六年度から学習指導要領に反映される予定。
 委員からは「二学期制をどう考えるのか。大学の九月入学とリンクしていけるのか」「個に応じた指導の充実で評価はどうするのか」「文部科学省の施策がどっちの方向に向かっているのか、分かりやすく説明すべきだ」などの意見が出された。


学習指導要領の見直しイメージ案もとに
指導の充実、改善策討議


【教育課程部会】
 中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会(木村孟部会長=大学評価・学位授与機構長)は九月十七日、東京・霞が関の霞ヶ関東京會舘で第八回部会を開いた。文部科学省は「審議の中間まとめ」の意見募集や、学校教育についての意識調査の結果などを報告。同省の提示した「学習指導要領の見直しイメージ(案)」をもとに、指導の充実、改善の方策などについて討議した。
 「学習指導要領の見直しイメージ(案)」では▽「はどめ規定」等にかかわらず指導可能であることの明示▽学習内容の習熟程度に応じた指導、児童の興味に応じた課題学習、補充的な学習、発展的な学習などの学習指導を取り入れた指導を例示に加える――などの案を現行の規定と比較してまとめた。
 委員からは「“改訂”というと学力低下による揺り戻しという印象があるが、方向転換ではない。現行の学習指導要領をさらに充実させる内容と考えている」「校長のリーダーシップが求められるだろう。校長に自分の裁量で工夫してもらいたい」などの意見があった。
 授業時数の確保については、同省の担当職員は「『確保』というのは、必ずしも『増やす』ことではない。各学校で創意工夫してもらいたい」などと説明。委員からは「学校の業務のスリム化が必要。教育について何でも学校に持ち込み、負担が大きい。授業に専念できる環境をつくるべきだ」と、部活動や事務手続きの見直し、家庭教育の充実などを求める意見があった。
 このほか、同省は「審議の中間まとめ」に対する一般からの意見を報告。「中間まとめ」はホームページで一般に公開し、八月八日から二十一日まで、意見を募集した。寄せられた意見は延べ百七十三件で、内訳は「『個に応じた指導』の一層の充実」三十件、「学習指導要領の『基準性』の一層の明確化」二十六件、「教育課程を適切に実施するために必要な指導時間の確保」二十六件、などが多かった。
 具体的には「必須の基礎事項を明示して教育現場に任すべきではないか」「入学試験における出題範囲については、学習指導要領から逸脱することのないように制限を加えるべきである」などの意見があった。
 同省が実施した「学校教育に関する意識調査」の中間報告では、習熟度別指導について小中学生の約七割が「自分のペースで勉強ができそう」と肯定的に受け止め、「グループ分けをするときに生徒の意見を尊重した方がよい」と答えている。
 一方、グループ分けをする際の配慮として保護者は「グループを固定せず、学習内容に応じて分けてほしい」(七二・一%)、「はじめからグループ分けをするのではなく、ある程度学習が進んでから分けるなど、状況に応じてグループ分けをしてほしい」(五七・一%)、「子どもが優越感や劣等感を持たないようにグループ名を工夫してほしい」(四〇・〇%)――などを求めた。
 調査は国公私立の小中学校を対象に実施。今年六、七の両月に、百七十校(小学校百校、中学校七十校)に通知し、百六十六校(小学校九十七校、中学校六十九校)から回答を得た。


新たな留学生政策の展開
交流の拡大と質向上討議


【留学生部会】
 中央教育審議会大学分科会の留学生部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は九月十八日、東京・霞が関の文部科学省分館で開いた。これまでに続いて中間報告案「新たな留学生政策の展開について  留学生交流の拡大と質の向上を目指して」について自由討議した。同案は今後、委員の意見を踏まえ一部修正したのち、九月二十四日に開く大学分科会に諮る。ほかに、同省から平成十六年度留学生交流関係の概算要求額の説明がされた。
 提示した中間報告案は前回の部会で討議した「新たな留学生政策の基本的方向について」を修正したもの。「情報収集を行い、各大学等に提供するなど、各大学等が的確に入学者を選抜できるよう支援を行う必要がある」などを加えた。
 同案について、委員から「『世界的に優れた人材を集め、国際競争力を高める』と加えてほしい」という提案があったが、同省は出身国から「日本で就職せずに戻ってきてほしい」という要望があり、「就労についての積極的な記載は得策ではない面もある」とした。また「日本語教育機関の学生については、現在、専修学校専門課程等を除き、在留資格は『就学』とされているが、その取り扱いについて検討を行うべきである」という記述について、同省は「現行では在留資格を細分化し、形態に応じて規制する方向にある。『就学』と『留学』のビザを一本化することは難しく、今回は見送って、検討事項とした」と説明した。
 就学生の扱いについては、委員からも「九州の殺害事件で容疑者の留学生は『就学生』と報道されている。以前、線路に転落した男性を助けて事故に遭った韓国人就学生は『留学生』と報道された。事件を起こすと『就学生』、良いことは『留学生』という偏見がある。一般的に誤解も多いので、呼称だけでも『留学生』に一本化しても良いのではないか」などの意見があった。このほか「成績不良等の場合には、以後の奨学金の給付を打ち切る」という記載については「“罰”だけでなく、成績優秀者への励みとなる文も加えてほしい」とする意見があった。
 来年度の留学生交流関係の概算要求額は五百八十五億円。留学生数の六千人増加を見込み、前年度より五・一%増となった。内訳は▽留学生相互交流(受け入れ・派遣)=三十四億円(前年度比六億円増)▽私費留学生等への援助=百二十一億円(同十一億円増)▽国費留学生受け入れの計画的整備=二百七十六億円(同九億円増)▽留学生に対する教育・研究指導の充実等=百五十四億円(同四億円増)。このうち、私立大学等経常費補助金(特別補助)には、前年度より約二億円増の五十五億円を盛った。
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