こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2004年3月13日号二ュース >> VIEW

記事2004年3月13日 1927号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 幼・小教育を連携
協同的な学び活動
5歳児に幼小連携推進クラス

【幼児教育部会】

 中央教育審議会の幼児教育部会(部会長=田村哲夫・渋谷教育学園理事長)は、三月二日、都内で会合を開き、前回に引き続き総合施設の在り方などを審議した。この日は、事務局(文部科学省)から、@総合施設(幼児教育)と小学校との連携・接続A総合施設における教育・保育に従事する職員の資格等の取り扱いB総合施設における子育て支援事業の取り扱い――に関して基本的な考えや検討課題等が提案された。このうち幼児教育と小学校教育との連携・接続に関しては、▽主に五歳児を対象に挑戦的な課題等の共通の目的を設定して、子供たちが考えを出し合い、協力工夫して取り組むプロジェクト型の活動を、「協同的な学び(活動)」として奨励する。また▽主に五歳児を対象に「協同的な学び活動」や生活科、道徳教育、特別活動等における小学校との合同活動や交流を推進する学級を「幼小連携推進クラス(仮称)」と位置づけ、対外的に幼小連携・接続の必要性を示すことを提案した。これらは公私立の幼稚園・保育所、総合施設を対象にしたもの。
 「協同的な学び」に関しては、同部会副部会長の無藤隆・お茶の水女子大学教授が、三、四歳児から小学校一年生につながる連携・交流について補足説明を行った。この中で無藤教授は、幼小の交流・相互理解にはカリキュラムが必要なこと、もう一方で教員間の人事交流も重要で、小学校教員の幼児教育に関する資質向上のための研修の必要性を指摘した。こうした取り組みは画一化を目指すものではないことも指摘した。幼小連携・接続で文科省はこのほか地域の小学校と総合施設、公私立幼稚園・保育所等との円滑な連携・接続を図るのは市町村教育委員会であることの明確化を提案した。幼小の連携はこれまで実験校等でさまざまな取り組みが行われてきているが、その成果はあまり広がっておらず、両者の連携も単発的な取り組みが多い。
 Aの総合施設の職員の資格等に関しては、文部科学省は原則、幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を持つことが望ましいが、当分の間はいずれかを有する者を認めること、ただし保育士資格を持たない者の三歳未満児担当、幼稚園教諭免許状を持たない者の三歳以上児の学級担任については検討が必要なこと、将来的には新たな資格の必要性を検討することなどを提案した。

職業能力、家庭教育重要
生涯学習振興で経過報告案

【生涯学習分科会】

 中央教育審議会の生涯学習分科会(分科会長=山本恒夫・大学評価・学位授与機構研究部教授)は、二月二十七日、都内で第三十回分科会を開き、今後の生涯学習の振興方策に関する「審議経過の報告案」について討議した。報告にまとめた後、総会に提出の予定。
 審議経過の報告案は、@これまでの生涯学習振興施策の経緯と課題A近年の社会の変化と今日の社会的要請B今後の生涯学習の振興方策の基本的方向性C重点的に取り組むべき課題とそれへの対応D関係機関等の今後の在り方E国・地方公共団体の今後の在り方で構成されている。
 生涯学習をめぐっては、生涯学習と社会教育との混同が見られるほか、生涯学習を担当する行政や関係機関等の取り組みが現在の社会情勢に必ずしも適合していない、技術革新の進展や産業構造の変化に伴い、大学等における社会人の学習ニーズに十分対応した講座等の充実が必要――などの課題が指摘されており、今回はそうした課題への対応策を示したもので、生涯学習を担う関係機関ごとにさまざまな改革案を提案している。報告案は行政や関係機関等が国民の人間力向上と地域再生を図るため、@若者、中高年層の職業能力の向上A家庭の教育力の向上B地域の教育力の向上C健康対策等高齢者への対応D地域課題の解決に重点的に取り組む必要性を強調している。
 このうち職業能力の向上では、学校に関して初等中等教育段階から勤労観・職業観を育成する教育充実のため、インターンシップの充実やキャリアアドバイザーの活用などを進め、職業に関する知識・技能の習得を図ること、大学等に関しては社会人受け入れ拡大のため入学、履修形態の改善、より多くの社会人をひきつける魅力ある教育内容・方法への改善の必要性を指摘している。
 家庭の教育力の向上に関しては、学校等における生徒等の保育体験の一層の充実を、企業に対しては男性が家庭教育に参加しやすいよう企業の在り方・企業の社会貢献の在り方の見直し、企業内での家庭教育講座の開催等を求めている。このほか、学校に関係しては生涯学習の振興を進めていくうえで、高校段階を終了した後の入学保留制度の導入や、海外留学、ボランティア休学、労働体験、社会体験などの試行錯誤が許容される社会づくり等を指摘している。
 また専門学校に関しては、地域の生涯学習拠点の一つとして、社会人のキャリアアップ等に寄与することで社会に貢献していくという姿勢の明確化が必要としている。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞