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記事2004年4月23日 1931号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
教委と首長との関係
県教委から市教委等へ権限移譲で賛否両論

【地方教育行政部会】

 中央教育審議会教育制度分科会の地方教育行政部会(鳥居泰彦部会長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)は、四月十三日、都内の会館で第二回会合を開き、地方分権が進む中での教育委員会の在り方や首長と教育委員会の関係等について前回に引き続き自由討議を行った。
 これに先立ち委員四人が意見発表を行ったが、都道府県教育委員会から市町村教育委員会への権限移譲について、「地方分権の観点からもっと市町村教委への権限委譲を進めるべきで、市町村教委は都道府県教委にひたすらお願いするしかない」と権限移譲を求める意見が出された一方で、「平成十年の地方分権法で権限の移譲は進んでいる。義務教育の教育課程や教職員の資質、服務等の問題で都道府県教委に対する市町村教委への指導の期待が高まっている。義務教育には地方分権になじまない部分がある」と地方分権には限界があるとの意見が出された。
 また教育委員会が知事から独立した執行機関となっていることに関しては、一層独立性を高める人事制度導入を求める意見の一方で、「政治的中立性の必要は分かるが、知事が新しい教育をしようとするとマイナス面が大きい」と独立した執行機関であることの再考を求める意見も聞かれた。
 この問題については片山善博委員(鳥取県知事)も知事の考える教育行政を実現するのに前知事の任命した教育委員の任期が切れるまで三年間かかり、その間もどかしさを感じていたことを明らかにした。このほか教育委員会が指摘される問題の大半は、制度の問題ではなく運用上の問題だとする意見や地方分権、権限移譲の中で格差が拡大し小規模な町村の教育委員会が置き去りにされることを懸念する意見も聞かれた。
 この日、意見発表した委員は横山洋吉・東京都教育長、石原多賀子・金沢市教育長、宮崎緑・千葉商科大学助教授、八代尚宏・社団法人日本経済センター理事長の四人。
 このうち横山委員は、教育委員会の「レイマン(素人)コントロール」の原則が意思決定の遅れを招いているとの批判はあたらないとし、制度の問題ではなく、教育委員会における運用上の問題だとした。
 石原委員は金沢市で特区制度を活用して小・中学校一貫の英語教育を全校で行ったこと、その際副読本作りなどで頑張った教員が県の異動で市外にでてしまい、ノウハウ等の蓄積ができなかったことなどの問題を指摘、また文部行政に関しては、通知行政を改め、市や県の役割を考えた支援への転換を求めた。
 宮崎委員は教育庁職員の知事部局からの独立、教育委員による人事権の把握(室長クラス位まで人事考課する)、政策評価する必要性を指摘した。
 八代委員は中核市以上の規模の市であれば、県教委から市教委にもっと権限を委譲すること、自治体間で切磋琢磨〓ルビせっさたくま〓をさせること、県の教委については指導力不足教員の認定等評価機関としての機能を重視し、教育のインフラづくり等に専念するべきだなどとした。
 同部会は今後、ヒアリングなども行う予定。

総合施設の行政体制
費用負担のあり方でも討議

【幼児教育部会】

 中央教育審議会初等中等教育分科会の幼児教育部会(田村哲夫部会長=渋谷教育学園理事長)は、四月十六日、東京・千代田区内のホテルで来年度から試行、二年後から本格実施する、就学前の教育と保育を一体的に捉えた新しい「総合施設」の行政体制や費用負担について討議した。
 総合施設について五回目の検討となったこの日の部会では、初めに事務局(文部科学省)が、行政体制について、特に地方で利用者のニーズに適切、速やかに対応できること、総合施設の制度設計では各地域が主体性を発揮して、それぞれ特色ある取り組みを実現しやすい仕組みにすること、地方の行政では教育委員会が果たしうる役割を検討することなどを提案。幼稚園と保育所の費用負担の現状等を説明した。
 その後、それらをもとに検討を行ったが、総合施設についても教育機能を充実していくとの観点から、市町村で教育委員会が担当するとの意見が多く聞かれたが、市町村のどこが担当するかは各自治体に任せるべきだとの意見も聞かれた。
 またこの日はこれまで四回の議論の概要をまとめた文書が提示されたが、「子供のためにという理念がだんだんと何でもありになっている」「親をどうサポートするかで、抱え込むのではない」など就労支援の考え方とは一線を画するよう求める意見が聞かれた。
 また保育所で民間参入が進んでいることから民間が参入しうる部分、民営を視野に置いた検討を求める意見や、子育てに悩む親がアクセスできる拠点であってほしい、といった意見も聞かれた。議論の概要は四月二十六日の次回会合で改めて修正、加筆したものが提示される。
 総合施設については、文部科学省(幼稚園)と厚生労働省(保育所)に関係することから、文部科学省では中央教育審議会の幼児教育部会で、厚生労働省では社会保障審議会の児童部会でそれぞれ検討を進めている。
 五月からは両審議会が合同で検討を進める。そのため幼児教育部会での議論も幼児教育部会だけで方向性を絞りこみづらい面があり、委員からいら立ちとも取れる意見が聞かれた。
 ※総合施設=就学前の教育と保育を一体として捉えた、幼稚園、保育所に次ぐ第三の施設。昨年六月、政府が閣議決定した「骨太の方針」に創設が盛り込まれた。なかなか進展しない幼保一元化推進に向けた〓起爆剤〓として提案された。

小学校の英語教育是非
教員の資質、指導体制検討

【外国語専門部会】

 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の第一回外国語専門部会が四月十三日、東京・千代田区の霞が関東京會舘で開かれ、主査に中嶋嶺雄・国際教養大学長、副主査に田村哲夫・渋谷教育学園理事長を選出し、初等中等教育全体を通じた外国語教育の在り方等について自由討議を行った。今後、教員の資質向上、指導方法・指導体制の工夫等、小学校での英語教育の是非等を検討する。文部科学省から小学校での英語活動や中学高校での外国語教育の現状等も説明された。
 この日の会合では公立学校における英語教育改善状況調査の結果概要等が資料として提示された。それによると英語教員の英語力については中学校の場合(三十八都道府県・七指定都市)、二万一千七百七十一人の調査対象教員のうち、英語の外部試験の受験経験がある教員は九千八百八十九人、またそのうち実用英語技能検定試験の準一級以上を取得していたのは二千三百八十六人、TOEFLの五百五十点以上を取っていた教員は千二十一人、TOEICで七百三十点以上を取っていた教員は千五百八十一人。またこれら検定以外の試験で同等レベルの教員が二百七十八人いた。一方、高校の場合(三十九都道府県・七指定都市)、二万千三百九十七人の教員のうち、外部試験の受験経験教員は九千二百三十九人。そのうち英検の準一級以上の取得者は四千百九十四人、TOEFL五百五十点以上が二千百八十六人、TOEIC七百三十点以上が二千九百六十五人を数えた。これら検定以外の試験で同程度の教員が六百三十人いた。
 外国語専門部会の委員は次の各氏。▽岡秀夫・東京大学大学院総合文化研究科教授▽影浦攻・宮崎大学教育文化学部教授▽金谷憲・東京学芸大学教育学部教授▽金森強・愛媛大学英語教育センター教授▽島幸子・山口東京理科大学基礎工学部教授▽杉本義美・京都市総合教育センター指導主事▽田辺洋二・東京国際大学言語コミュニケーション学部教授▽田村哲夫・渋谷教育学園理事長▽太郎良博・東京都江戸川区立葛西中学校長▽中嶋嶺雄・国際教養大学長▽仲野友子・国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部エグゼクティブ・アドバイザー▽西原鈴子・東京女子大学現代文化学部教授▽萩原裕子・東京都立大学人文学部助教授▽松川禮子・岐阜大学教育学部教授▽松本茂・東海大学教育研究所教授▽無藤隆・白梅学園短期大学長▽本名信行・青山学院大学国際政治経済学部教授▽門馬紘一・千葉県成田市立成田小学校長▽山岡憲史・滋賀県立米原高校教諭▽吉田研作・上智大学外国語学部教授▽吉田博彦・NPO教育支援協会代表理事

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