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記事2004年5月3日 1932号 (5面) 
新世紀拓く教育 (23) ―― 東京女学館中学・高等学校
異文化相互理解に国際学級開設
世界で活躍できる女性育成
 東京女学館中学校・高等学校(福原孝明校長、東京・渋谷区)は、今春、語学教育・異文化相互理解教育・リーダーシップ教育を掲げ、「国際学級」を立ち上げた。平成十六年度は中学一年一クラスを国際学級として募集。学年進行で導入し、平成二十一年度には全学年に完成する。
 授業スタイルも、従来の一斉授業ではなく、生徒参加型となる。また、英語を使用言語とする授業を、中学段階では「英語」教科のほか音楽・美術・体育・家庭科・総合学習で行い、高校段階ではすべての教科・授業を英語で行う予定だ。さらに、高校では第二外国語を必修とし、コリア語、中国語、タイ語のいずれかを選択する。
 今年度の入試は、帰国児童、外国籍の児童、一般の児童を対象に、AO入試(AO型)を行った。倍率は約三倍だった。今回、帰国生については英語検定五級程度という条件を付けたが、一般生は英語ができるのが望ましいという程度。共通の必須〓ルビひっ す 〓条件は、逆に日本語ができることだった。
 四月に入学してきた生徒は、帰国生十七人、東京女学館小学校から十二人、一般から九人の合計三十八人。帰国生はアメリカからが最も多いが、ロシア、フランス、ポーランドなどもいる。外国籍、二重国籍の生徒もいるという。
 国際学級について、橋本洋光教頭は「帰国生を日本の教育に適応させるためのクラスではない。多文化コミュニティーとしての国際学級であり、帰国生徒、一般生徒、外国籍生徒が共に学びあうクラスです。個人、日本、アジア、世界、そういう多元的なアイデンティティーを異文化空間の中で形成させていく。育成していくのは、インクルーシブ(包含的)リーダーシップです」と話す。
 国際学級は教育方法や内容が同校の普通クラスとは違うため、教員組織もある程度の独立性を持たせ、ここでカリキュラムの作成、教材の選定など教科内容を検討している。現在、国際学級の専任教師は五人。その中心となるのがバーナデッテ・ラウクス教頭だ。東京女学館中学・高校全体を見る橋本教頭との二人教頭となる。
 ラウクス教頭は「英語」教科について「文部科学省検定教科書はすぐに終わるでしょう。授業のやり方もいままでとは全然違うし、教材も新しいものを選んでいる。毎日、とても忙しい。でも、とてもやりがいがあります」と語る。
 国際学級で最も特色のあるのがその英語の授業だ。
 生徒間で英語力に大きな差があるため、ネイティブ教師三人、日本人教師一人の四人が一チームとなって指導にあたる。教材も、アメリカの小学校で使われている『ジャングルブック』や『チャーリー・チョコレート・ファクトリー』など、いずれも、同じ装丁で英語力のレベル別に数種類発刊されているものを使う。例えば『ジャングルブック』はレベル一からレベル四まで四種類あり、レベル二の場合、七百ワード程度が使用されている。こうした教材を生徒個々の英語力に合わせて使う。
 授業方法は習熟度別で三つに分けて行うが、そのグループは固定されず、課題別、テーマ別などでさまざまに組み替えをする。一つの教室内で三つに分かれる。グループごとに、生徒たちは自分で調べて、まとめ、発表する。こうしたグループワークによって、英語運用能力を高めるだけでなく、各人が協力して自分にできることを果たしていくという、社会的責任を持ったリーダーを育てることを目指している。
 評価方法も、それぞれの生徒の獲得目標を設定し、それに対して本人がどう努力して、どう獲得していったのかを見ていく。その結果を保護者にフィードバックする。
 英語の授業だけでなく、すべての教科でこのような生徒参加型の授業を行い、評価方法も同様の方法を全教科で採り入れる。このため、従来のような中間・期末試験は行わない。
 授業は始まったばかり。
 オリエンテーションではラウクス教頭が、早速、英語のシャワーを生徒たちに浴びせた。そのとき、説明がよく分からない生徒には英語のできる子が教え、反対に日本人教師の説明のときには、日本語に不安のある生徒に英語で説明している生徒の姿が見られたという。
 生徒たちの初めてのグループワークは、このオリエンテーションでのクラステーマづくりだった。全員で決めたテーマは「誰に対しても思いやりを持ち、平等に接しよう」。英語バージョンもある。ロゴも作成中だ。生徒たちは緊張も少しほぐれ、「毎日楽しい」「友達ができた」と感想を書いた。
 初めての国際学級を担任するのは日本人教師の鈴木久子教諭とネイティブ教師のクリスタル・ブルネリさんの二人、ホームルームもバイリンガルだ。
 ラウクス教頭やブルネリさんが口をそろえて強調するのが女子校の良さ。カナダやアメリカでも共学化が進んだが、今、女子校が見直されているという。担任のブルネリさんは前米大統領夫人のヒラリー上院議員と同じウエルズリー大学(セブンシスターズと呼ばれる七つの名門女子大学の一つ)の出身。「アメリカの名門私立高校エクセターの生徒会長はこの十年間、男子生徒だけ、共学なのにです。男子がいるとどうしても女子は引いてしまう。リーダーシップを持つ女性を育てるにはやはり女子校です」と言う。
 進路として、当然、ハイレベルの海外大学を視野に入れている。もちろん、日本の大学を受験したい生徒にも対応したシステムづくりを行う。


グループワーク等で生徒参加型授業を行う国際学級

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